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弱気な私の弱気な恋  作者: 黒田 容子
10/11

弱気な私の弱気な恋は

あの後を簡潔に言うなれば。


あ、足が緊張で かくかくし… もう、気持ちもふわふわしちゃって、なんか どうしていいか 分かんなくて。


先生は、黙って微笑んで、ただただ私を見ててくれたけど、恋愛初心者マークの私には、恥ずかしいやら 忘れて欲しいやら。


そんなわけで、保険証落とすわ、診察券無くすわ、医院長先生の電話番号入りの名刺は まさかの先生自身が拾ってくれて「忘れてるよ?」電話が掛かってきた始末。

どうやって家に帰ったか、勿論、覚えてる訳がなく。



そんな初々しい告白劇から、数ヶ月。

人前では「医院長先生」二人の時は「仁先生」…だったのが、ようやく「仁さん」と呼べるようになった。


最近思う…

自信ってよく言った言葉だよね、って。


「自分を信じる」ってそのまんまだけど、信じないと出来ることまで出来なくなる。

仁さんが何で私なんかを好きになって付き合ってるのか…皆目謎だけど。

でも、あの頃と今が違うとしたら「仁さんが信じてくれる自分を信じてみよう」その一点で。そして、その一点に何度救われ「もう少し頑張ろう」と思い続けたか。


いまだに仕事は辞めたいと思うときはあるし、年度末まで、やり遂げられるか 不安でしょうがない。

だからこそ、今は「仁さんに愛して貰ってる自分」を信用して…頑張っている。



ある日の事だった。

今日は仁さんの接骨がある商店街の店主達が主催の夏祭りと打ち上げに、私も手伝いで来ていた。


仁先生は、医院長さん、という立場だけあって「商店街との付き合い」も必要らしい。盆踊りで太鼓叩いてた…ピアノ弾いてるセンスが役に立ってるのか、凄く上手だった。着流し姿もカッコ良かったし。


自転車屋のおじちゃん夫婦、和菓子屋のご店主、八百屋のおっちゃんとその娘姉妹のそれぞれの夫婦…いろんな人たちが、和気あいあいと楽しんでいる。

そんな中、自治会館の入り口が騒がしいと思った時だった。


「ジン!アイタカッタ!」


ないすばでぃな ブロンド美女が、仁先生目掛けて、いきなり抱き付いてきた。

先生に遠慮なくキスをして

「マタ、イッショニ フォト、トリマショ?? マイファミリーに メイル、シタイノ。」

畳み掛けている。

すぐに後から、ドドドドと別な日本人女性が「ケイトリン、ノー!ストップ!」 追い掛けてきた。

追い付くなり、ブロンド美女を叱りつける。


「あのさー、仁さん、明らかに嫌がってるよ?!カッコ悪いから、男を困らせない!」

あからさまに、不機嫌そうな顔をしながら、美女を引き剥がして

「はいはい、離れる! 離れる!」

仲裁とばかりに、二人の間に入ってきた。


私は…ホッとしたけど、このパワフルな女の人たち、誰だろう?


日本人女性は、私より少し年上そうだった。

「はい!まず 手を出した方からね!」

良く通る声にハッキリした話し方、穏やかじゃない目付きが…怖い。

「『LOVE me』がハードな女、very ヘイトなの、ジャパニーズボーイは。

ケイトリン、ノー!

ジャパニーズボーイのハートをリスペクトして!」

中学校で習いそうな英単語を織り混ぜながら、短い文章でテキパキ 叱っていく。

「アーユーオーケー?」

迫力のある念押し…うん、私、この人 苦手、きっと。


その苦手判定を出させて頂いた女の人は、今度は仁さんに「はい!喧嘩両成敗!」向き直る。


「仁さん、パシッと断りなよ。パシッと!

…よく出来た彼女、いるんでしょ?聞いたよ、匠さんと俊さんから。」

匠さん?俊さん?…確か…仁さんのご兄弟の名前…だよね?


今度は、男の人が追い掛けてきた。

「アイちゃん…!何処いったと思ったら!」

アイさん、っていうんだ…この『姐さん』ぽい人。

「またケイトリンが暴走したんよ。…ケイトリン、出禁だな。権田出禁に処す。」

アイちゃんと呼ばれた女の人は、怖い顔を崩さず『ケイトリン』を再度見た。

すかさず、ケイトリンは 媚びるように 男の人をみて

「タクミィ~ ワタシ、カナシイ~」

オーバーな嘘泣きを始めたけど、男の人は面白がって

「あー、ボクもカナシイよ~ キミがスイートとフレンドリーじゃないのが。

ボク、とってもサッドだよ。スイートが ベリーアングリー! 」


念のため、仁さんに聞いてみた。この人たちって…

「弟とその彼女と、友達。」

弟さん、初めて会った…先生と顔とか似てないなあ…と思いつつ、「アイちゃん」も見ると「どーも、ケイトリンがご迷惑掛けました。」と目があった。


「Hey,Caitlyn.」

仁先生が、ゆっくり話始めた。まるで 子供に言い聞かせるように、落ち着いた声での英語で。


英検3級、英語が何よりも苦手だった私は さっぱり分からないけど、目の前の「ケイトリン」は笑顔が一転…次第に顔が雲っていき…

先に、相槌と返事をしたのは弟さんだった。しかも、かなり驚いた顔をしている。

「Really?! Congratulations! I am happy for you.」

二人とも…英語、話せるんだ…そんな疎外感を感じながら

「Thank you.」

にこやかに返事を返す仁先生を見つめた。

な、なんの会話だったんだろう。すかさず弟さんの彼女さん「アイちゃん」が 切り込んだ。

「あの、この会話、通訳とかないの?」

あ、良かった…同じ立場がいた…と思ったのも束の間。

「アイちゃん、後で教えるから…まずは ケイトリンを連れ出そう。」

弟さんが「じゃ兄貴、またね」そさくさと二人を連れ出してその場を離れていった。


…聞かれたくないから、英語にしたの…??

その…教えたくないなら…その…私…


恐る恐る、仁さんを見上げたときだった。仁さんは、きちんと目を合わせて話始めた。

「変な心配をさせてゴメン。

今のは、同じ商店街の英会話教室の講師だ。弟とその彼女の『アイちゃん』と仲が良くてね。俺も、何回か 一緒にゴハンはしている。

ユウコに誤解して欲しくないから、今のやり取りを話すと…」

人の少ない壁際に私を一旦連れ出し、また再度 目を合わせて ゆっくり話始めた。


「俺はね、今 やっと 運命の人に出会ったんだ。

俺と俺自身の絵と…いまの生活を理解して、日々のイマジネーションまで与えてくれる素敵な女性だ。

俺と俺の絵を好きでいてくれるなら、僕の恋は応援して欲しい。

もし、彼女が俺と共に歩んでくれる約束してくれたときは、きちんと紹介するよ。

…彼女の友人になって欲しい。

ケイトリンに言ったのは、これで全部だ。」


「じ、仁…さん…」

他でもない、プロポーズの予告みたいなセリフに、どうしていいか 分からなくなった。

勿論、嬉しくない訳がない、でも こんな人混みで もしかしたら 誰かが聞き耳立てて茶化されるかもしれなくて、言葉が続かない。


「困らせてゴメン、その…微妙な状況だけど、ユウコに変な誤解をされたくなかった。」

仁さんが、困っている。…違うの、そうじゃなくて。

「あの、仁さん…私 嬉しいです。その…一緒に…歩みたいです。」

先生が一瞬にして笑顔になった。

大きな身体に大きな優しさで、尊敬と憧れの存在だったけど…無邪気に喜ぶ純粋な顔が幼く見えたりして。


「私…とっても、幸せです。」

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