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弱気な私の弱気な恋  作者: 黒田 容子
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片想いはメンソールの香り

 恋がキレイにしてくれるとか、楽しいなんて、嘘だと思う。

 苦しくて、一喜一憂が続いて ワクワク出来る瞬間なんて一握り。


 高見澤たかみざわ 優子ゆうこ 23才

 社会人2年目、職業 保育士


 子どもと関われるって素敵だけど、現実は楽じゃない。


 体力勝負だし、

 父兄からのプレッシャーが凄いし、

 先輩怖いし、

 園の方針 ハードル高いし。


 もう、メンタルぼろぼろ。身体だって、最悪コンディション。

 今も「疲れた…」うっかり呟いて、慌てて父兄が周りに居ないかびくびくしてる。

 こんな毎日が待っているんだったら 保育士にならなきゃ良かったあ…後悔真っ只中。朝晩、動きの鈍い身体を引きずって 家と職場の往復をただただ繰り返す生活。


 こんな私に、心の支えが出来た。

 勤務先の近くにある接骨院の医院長先生。

 ふらふらと注意力散漫に歩いていた私が自転車に轢き逃げされて、転倒したとき、助けてくれたの。


 転んだ弾みで腰痛になり、動けなくなった私を、お姫様抱っこで 軽軽と抱き上げたと思うと、テキパキと先生の院で手当てしてくれた。


 男の人からお姫様抱っこ、しかも いきなりなんて恥ずかしかったけど… レスキュー隊員みたいに颯爽としていた。

 それでいて、処置になると丁寧で。穏やかな雰囲気と優しい押し加減が絶妙に巧い。

 そのギャップが鮮やかに私のハートをかっさらった。


 今でも、こっそり思い出してる。


「大丈夫ですか?」よく響く低い声。

「立てますか?」差しのべられた手。

「ウチ…そこの接骨院なので 手当しましょう。恥ずかしいかもしれないけど、我慢して?」温かい体温。


 私、きっとお風呂場へ連行された猫みたいに掴まってた。でも、全く動じない厚い胸板だったんだよね…分かりやすいほど 男らし過ぎて。

 女子大育ちの免疫がほぼ無い私には、刺激が強すぎた。


 あの時ね、

 しっかりした腕の…服の奥からスーッとした香りがあったの。

 の多分 今から思えば 湿布とかの匂いだったと思うけど。

 恋を自覚した私にとって、メンソールは想い出の象徴。


 …かといって 好きとも言い出せない。

 うじうじ悩むだけ。

 我ながら気持ち悪い女子


 …恋なんて 苦しいだけ…

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