EP.1-4
「しまっ…」
シア・カートライトが叫んだ時には遅かった。
1発の銃弾は研人に放たれている。
まさかドアの向こう側に敵が待ち構えているとは…
完全に油断した。
外の兵士達は別の部隊に向かっている。
そう思っていた。
着弾。
あの辛気臭い牢屋から助け出した彼に当たり、赤い鮮血が床を彩った。
応戦しようと私は構えようとする。
「動くなよ。小娘。いや、メス猫か…」
言葉の主はこの施設のボスみたいに偉そうな感じをした白衣を着た男だ。
撃たれた研人を見る。肩に当たっているようだ。
しかし、すぐには死なないとは思うが出血が酷い。
「貴方はこの施設のお偉いさん?ホント見た目通りに悪趣味な研究してるのね。」
兵士を見る。
数は7人。
持っている拳銃は中の研究員に比べて最新式らしい。
なんでそんなものを持っている疑問はあるが、この状況をどのような方法で打破するか考えないと。
「ふん。この状況でそのような言動も皮肉にしか聞こえんな。まぁいい、女。名を名乗れ。」
白衣の男は不機嫌そうに質問する。
「グランドナイツ所属、第5部隊隊長、シア・カートライト。貴方は確かグラハム・ツァイベルさんだったかしら?」
グラハム・ツァイベル。
こいつがしてる研究は魔獣と人間を合成して、優秀な生物を作ることらしい。
正直、こいつがやっているのは正気じゃない。
同じ研究者として軽蔑する。
「ほう、よく知ってるなぁ。カートライトはあのカートライト家か…魔術師としては優秀だったが惨殺されたもんなぁ?確か1人娘だけは生き残っているとは聞いていたが、お前がか?」
「ええ。少なくても貴方に比べたらまともな神経はしてると思うけど?」
父と母の話をされた時、怒りが湧いた。
だけどその感情を抑えた。
今、感情的に動いたら殺される。
「そうかそうか、さておしゃべりはここまでだ。選べ。ここで蜂の巣になるか私の実験体になるかをな。
おまえなら優秀な魔術師の家系だから魔力も膨大だ。
配合実験にはいいだろ?」
「その前に最後に聞きたいことあるの。実験体の村人達はどこ?冥土の土産くらいちょうだいよ。」
数日前、近くの村が襲撃された。
犯人達は不明。
年寄りや中年の大人の男女は遺体になって発見はされたが、若い大人や子供達の遺体は見つからない。
調べた結果、この研究施設が発見され、調査の為に私は潜り込んだ。
「あー。やはりあの村の事はバレていたか…みんな、実験体として使ったよ。ホントに使えなかった。ガキも死ぬし。他のヤツも死んだ。これが答えだ。さぁ選べ。」
侵入した時、研究資料を覗いたからまさかとは思ったが…人間と魔獣を合成させ、兵器として使うなんてそもそも無理な話だ。
万が一、合成が成功しても互いが反発して身体は崩壊する。研究施設にはケント以外には捕まっている人はいなかった。つまり、他の実験体は…
そう考えるとあのムカつくあの男を殺してやりたい。
しかし、せっかく助けてあげた彼を庇いながら反撃しても多分負ける。
やつらの拳銃は最新型。魔術で障壁だしても防げるかわからないし、近くにやつらの弾丸を防ぐ事が出来るような物もないようだ。
打開策が出てこなし、キール達もいつ此方に来るかわからない。
時間も稼げそうにもなさそうだ。
だったらこの答えだ。
私は返答した。
「地獄落ちなさい。この下衆。どちらも御免よ。」
私は命乞いするのもらしくないし、こんな奴にはそんな真似はごめんだ。
だったら…
足掻いてやる!
死ぬまで戦ってやる!
あのムカつく白衣が溜息を吐いた。
機嫌悪そうな顔になり、呟く。
「そうか…なら望みどおりにはちの…」
グラハムの台詞が終わる前に、私の横から何かが通り過ぎる。
そして、グラハムの胸に黒い手のような物が貫いていた。