EP.1-3
「さあ、早くこんな辛気くさい所から出ましょ。」
シアが破壊してくれた鉄格子の扉から外にでる。
正直、狭苦しい部屋から出ると気が楽だ。
ふと見渡してみる。他にも鉄格子の部屋があるみたいだ。
まさか、俺以外にも捕まってる人がいる?
そんな不安が頭をよぎった。そう思い隣の部屋を覗く。
部屋の中は誰もいなかった。
しかし、部屋の壁には赤黒い絵の具をぶち撒けたように赤かった。まるで遊園地のお化け屋敷の中で使っている部屋のように。その赤い絵の具は人の血だと思う。俺はその光景を見て自分はただ立ちつくしていた。
「何をしてるの?早くいくよ!!」
その一言で我に返り、この異質な部屋から出て行く。
まるで早くこの状況から逃げ出したいみたいに。
そこからはただ走った。目の前にはシアが走ってる。
違う部屋からは金属音や銃声みたいな音が聞こえていた。映画やTVみたいな状況が今、自分の目の前で起こっている。下手したら自分が死ぬかもしれない。そんな不安を抱えながら。
「キール達が突入したかな。暴れてくれって言ってたけど、ほとんどあっちに行ってくれたみたい。君、大丈夫?」
彼女は走りながら、質問してきた。
「きついけど…大丈夫です…」
自分は運動神経は普通だと思ってた。だけど目の前で走ってる彼女は早い。
早い上に息をあまり切らしていない。
(自分と同じくらいの年なのに体力が凄い…)
と思ってしまった。
「ちょっと待った。」
その一言で足を止める。
「誰かいる…」
彼女はそう言い、拳銃を取り出す。
「おい!この支部は破棄だ!資料を全部持って逃げるぞ!」
どうやら部屋の向こう側にはあの白衣の男の仲間がいるらしい。
「後ろを見てて…私が先に入るから。」
「わかりました。」
返事を聞くと彼女は部屋に入る。
「!?」
男達は驚いたような声を出す。
そういって銃を構える瞬間、シアはすでに引き金を引いていた。ポップコーンが弾けた音のような銃声が2回聞こえた時、男達は赤い血を流しながら倒れた。
「入ってきていいよ。」
そう言われたので部屋に入る。
俺は質問した。
「この人達は…死んでるんですか?」
彼女は答える。
「急所を当てたから多分…投降したら撃つつもりなかったけどね…」
目の前に血を流している人が倒れている。正直、目を背けようとした。だって数秒前まで普通に話している人間だったのだから。見たくない。それが普通の感情だと俺は思った。
だが見てしまった。人だったものが消えてなくなっていくところを。
「え…?」
俺は驚いた。いや、驚かない方がおかしい!人間は死んだら死体が残るじゃないか!まるでRPGのゲームの敵が死んで体が消えるように死体が消滅した。
「死んだ…みたいね。」
彼女はそう呟いた。
「死体が…消えた…」
知らない間に俺は呟いてた。
「人間が死んだら、死体は残らないでしょ?もしかしたらそっちの世界じゃ違うの?」
シアはそう答えた。
「え?あ、はい…」
「そっか。なら驚くよね。よし、出口に進むよ。」
そう言いつつ、彼女は出口に向かおうとする。
俺は死体があった場所を見ていた。死体はない。残っていたのは血痕だけだった。
そのあとはただ進んだ。ただ真っ直ぐに。途中で何人かあのムカつく白衣の仲間に出会った。
しかし、全員が銃を所持していたが、引き金を引く前に倒れていった。いや消えた方が正しい。
相手が構えて撃つよりも、シアが引き金を引く方が早かった。ただそれだけのことだった。
俺はその光景をただ見ていることしか出来ない。
でも、一般人で素人の俺でも見ればわかる。
シアは銃を使い慣れているのだ。西部劇のガンマンみたいな早撃ちでは無く、ただ構えて撃っている。
判断力の違い。まさに経験の違いって奴だと思う。
「ホント素人ばっかり。素直に投降すればいいのに…」
と彼女は呟いた。
「よし、ここが出口。もうすぐだから頑張って!」
彼女はそう言ってドアを開ける。
ここまで走ってきたし、この現実味のない状況で俺は疲れきっていた。
俺はやっとこの状況から終わったと思い、ドアの向こう側の風景を見た。
そこには銃を持った男達が立っていた。
気づいた時は相手が此方に向かい銃を構えている。
「しまっ…」
シアがそう叫んだ瞬間、一発の弾丸が飛んできた。
それが俺に命中し、俺の体から赤い液体が吹き出る。
そして俺は倒れ、暗い闇に飲まれていく。