暴走
義元「お前、本当に信長の弟か?」
俺は、なぜ?と聞き返す。
義元「質問を質問で返してきたね。あのね、信長はあんな奴じゃないからさ」
「え?どういうことだ?」
義元「前までは違ったよ。あんな優しくなかったさ。でも、弟という言葉が出てきたくらいから信長は変わってしまったな。徳川も、明智もだ」
そうなのか?俺が来てから、みんなは変わったのか?
義元「前までの信長のことを、ききたいか?きいたら、安土城に帰りたくなるなるけどな」
そんなに、前までの信長は酷かったのか?
「ききたい」
義元「いいだろう」
信長「ただいま帰った」
三成「光秀はどこへ……いつもなら信長様の帰りをまっているのに」
信長「真琴は……稽古中かな?」
信長は、稽古場の庭へ早足で向かった。
信長「いない……風呂か部屋だな。土産もあるというのに」
政宗「信長様!信長様!」
ドタドタと音をたてて、政宗が信長の前に来た。
政宗「光秀、光秀が……!光秀が、倒れております」
信長「どういうことだ」
政宗「部屋に行ったら、倒れとりました」
秀吉「光秀だぞ?あいつが倒れるなんて」
信長「とにかく、理由は信玄にきく。信玄のところへ連れて行け」
信長は少し怒り気味で言った。秀吉は眉を八の字にさせていた。
三成「なぜ……?!」
そこには、倒れている信玄がいた。
信長「……真琴は?」
信玄までもが倒れているのに、信長は真琴の名前を口にした。
家康「逃げたんでは?」
呆れた顔をしていう家康。
信長「逃げた?なんのために?」
その言葉に反応した信長。場が一瞬にして凍りついた。
家康「そこまでは計りしかねる。ここが、嫌になったとかね?」
信長「なぜだ?なに不自由などさせていないぞ」
家康「ですから、知りませんて」
信長は、かなりイライラしているようだった。今まで見たことのないような顔をしている。
信長「お前…なんの根拠も無しに言ったのか?ふざけるんでないぞ」
家康「すまん」
暫くの沈黙が続く。
三成「信長様!真琴さんの靴はありました。……誰かに攫われたのでしょう」
秀吉「光秀の隙をつけて、信玄より腕が上。ひとりしか居らんですね」
信長の握っている竹刀がミシミシと音を立てた。
信長「今川ぁ………!」
低く、太い声が部屋に響く。信長は、かなりご立腹のようだ。
秀吉「落ち着いて下さいませ、信長様」
信長「落ち着いてなどいられるか。明日の朝、今川を撃ちに行く。用意しておけ」
三成「ですが信長様……!」
信長「俺に逆らったら、殺す」
鋭い視線と共に放たれた言葉に、みんなが息を呑む。みなはまるで、昔に戻ってしまうと言っているようだった。
三成「さ、逆らうなど滅相もございません」
三成は頭を下げる。信長は目の前を睨んだ。
信長「部屋から出てけ」
怒りのこもったひとことに、みなが足早に出ていった。
三成「どうなさりますか?」
部屋から出た三成が声を出す。
秀吉「このままでは、昔の信長様に戻るな」
珍しく、秀吉が真剣な顔をする。
家康「でもさぁ、弟出来たくらいであんなに変わった信長もすごいよね。そして次は弟が居なくなったら暴走か……」
ため息をつく家康。
政宗「今の信長様なら、真琴のために命をも先出しかねないな」
三成「あの信長様がですよね」
みんなが困惑の表情を浮かべる。
秀吉「俺達で、助けないとだな」
家康「今の信長は俺達を斬るのも容易い」
三成「私達を斬ることも出来るだろう」
秀吉「真琴さえ帰ってくれば、信長様は元に戻るだろうからな」




