一人ぼっちの神様
これは孤独な神様のお話。
神様とは、人々の信仰心や神様を信じる気持ちから生まれる存在。
元々、月には神様はいなかった。
だが、昔から、月は人々がさまざまな気持ちを寄せるものだった。
そして必然と神様は生まれた。
真っ白い大きな翼を持つ女神様は、人々の信仰心に感謝した。
「自分を信じてくれてありがとう。」
神様は人々に月の女神として祝福を授けた。ありったけの感謝を込めて、遠い月から地球まで、 届くように祈りながら。
神様は毎日毎日、人々に祝福を授けた。
神様が生まれてから数百年がたった。
神様はどんどん弱くなっていった。
人々の文明が進むごとに、神様に対する信仰心は消えていった。
まだ信じている人もいるが、神様は祝福を授けられるほどの力は残っていなかった。神様は悲しかった。人々の記憶から自分が消えていくのを、日に日に弱くなっていくのを、ただ見ていることしかできなかった。
そして、神様は弱っていくなかで気付いた。
否、最初から、この月に生まれた時から気付いていた。
“月には自分一人しかいない”ことを。
まだ、人々が月に気持ちを寄せていた頃は、神様は寂しさを感じなかった。
自分の声が届かなくても、自分の姿が見えなくとも、人々が自分を見てくれていた、信じていてくれたからだ。
とうとう、信じる者がいなくなった月の女神様は、毎日泣いていた。わんわん泣き喚いていた。
広い宇宙の中で、寂しい、寂しい、誰か気付いて、会いたい、話したい、と神様の声が響いていた。
満天の星空を背に、女神様は今日も泣いている。