ループ
主人公の名前は`あや´か`さい´のどちらでも良いです
タイトルは仮なので、いいタイトル見つかったら、よろしくお願いします!
「今回は扉の開きが小さいんじゃないか?」
彼のその発言に抑えていた涙が溢れ出してきた
「また来年は会えるんだし、そんなに泣くなよ」
彼は優しくそう言い、私の頭を撫でた
「でも、また千里さんは私のことを忘れてしまうんだよ…」
撫でている手が優しすぎで、私の涙腺は崩壊しそうだった
「ごめんな…そろそろ時間だ」
そう言って扉の前に行く彼を見送るしかなかった。そして、けたたましい音と共に彼は命を落とした
「はじめまして、私は彩といいます。千里さん」
「はじめまして」
年が明けたと同時に死んだはずの千里さんは生き返る。これで5回目だ。6年前、突然の事故…食器棚から大量の割れた食器の下敷きになってしまい出血死してしまった。葬式などの一連の通夜が終わって、年が明け、一安心していた所に急に千里さんはやって来た。まるで、どこか旅行に行って帰ってきたように。千里さんには生きていた時の記憶が存在していて、仕事などは問題なくすることができる。日常生活は普通に送れるのだ。ただ、覚えていないことがあるのだ…
「君は雅じゃないよね?一体誰なんだい?」
それは、私のことである。なぜか、私の記憶だけは覚えていない。千里さんには離婚歴があり、前の奥さんやお子さんのことは覚えている。5回目の事なのに、ズキンと痛む胸
「そうですよね、私とは初対面なんですもんね。千里さん、まずはこれを読んでみてください。少しは私のこと、わかると思います」
5回もこのやり取りをしていれば次第にどうすればいいか分かっている。手渡したのは千里さんが生きている間に書きためていた日記帳だ。私と過ごした日々を綴ってくれている。だから、これを読めばあらかた私と言う人物を知ることができると言うわけだ
「これからたまに訪問して、家事とかお手伝いしますね」
「あぁ、わかりました」
いまいち状況を掴めていない千里さんを残して街に出る
「覚悟していたけどやっぱり辛い…何で私だけ…」
頬を涙が流れていく
「彩さん!」
カフェで温まっていると急に名前を呼ばれた。振り返ると息を切らした千里さんが立っていた
「どうしました?」
いつもと同じパターンなら、出会って1ヶ月は千里さんの家と自分のアパートを行き来して、千里さんの家以外では会えないはずだ
「去年までの俺の日記帳に書いてあったんです。彩さんを側から離さないようにしろと。詳しい事情は分からなかったんですが」
そうして急に手を握られ、半強制的に千里さんの家まで連れていかれ、日記帳を手渡された。そこには
゛4年間の自分からの忠告だ!彩を側から離すな!゛
と、千里さんの大きな文字書かれていた
「千里さん・・・。」
涙がボロボロ溢れてきた。この4年間やって来たことは間違っていなかったんだと
「彩さん…」
「あっ!ごめんなさいね。まさか千里さんがそんなことを言ってくれると思ってなかったので…」
去年までの千里さんは1ヶ月間ほとんどまともに会話すらしてくれなかったのだ。何年間も自分の手で書かれている日記であっても、すぐに信用しろだなんて無理な話だから、1ヶ月はかかっていた。でも、それを後悔していたのだろうか・・・
「千里さん・・・。ありがとう」
去年の千里さんに感謝をしながら、日記を抱き締めた
「俺と彩さんはどんな関係なんですか?」
その様子を不思議そうに見ていた千里さんは聞いてきた。私たちの関係を。・・・話しづらい!私が元奥さんから千里さんを奪ったなんて
「敬語をやめてください!10才以上も離れてるんですから!・・・千里さんは、どこまで覚えていますか?元奥さんとのこと・・・」
苦肉の策だ!覚えているところまで思い出してもらって、補足説明的にしよう!毎回、このやり取りはドキドキするよぉ
「えっ、息子ができて幸せに過ごしてて…突然誰かに会ってから関係が悪くなったところですかね?」
いつも通り、私自身と会ったことはわからないけど、誰かと会ったということは覚えているな
「その誰かが、私なんです・・・。今は辞めたんですが、千里さんとは同じ職場だったんです。私が千里さんに一目惚れしてしまって、連絡を取り合うようになったんです。そこから、奥さんとの関係が悪くなってしまったんです」
「えっ」
驚くのもしょうがないよね。私が幸せな家庭を壊した犯人だなんて。私は千里さんに一目惚れしてしまった。最初は憧れの人だった千里さんに恋愛感情を持つようになったのは、自然の流れのようだった。千里さんに家庭があると知ったのは、連絡を取りはじめて半年後だった。最初から家庭があると知っていると思っていた千里さんはすごく驚いていたが、そのとき既に戻ることができないほどに千里さんを好きになっていた。そして、それは千里さんも一緒だった。家庭があると知ったときには既に奥さんは勘づいており、千里さんと奥さんの関係は悪化していった。私は別れようとしたが、時既に遅しだった
「私が千里さんを好きにならなければ、離婚することもなかったんです。本当にごめんなさい!」
私は謝ることしかできない。あんなに楽しそうに語っていた生活を壊した張本人なのだから
「・・・。なんだかスッキリしました。日記を読んでいて、゛彩にちゃんと気持ちを伝えられなかった゛とすべての年に書いてあるんで、何があったのかと思っていました。今は後悔したくないと思いました」
「千里さんがそんな風に思っていてくれたなんて知りませんでした。ありがとうございました」
「彩、今日からよろしく」
「はい!千里さんもよろしくお願いします!」
ふたりで笑いあい、運命の日まで千里さんと過ごすことを誓った
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続きある予定