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第3話 秘密

 昨夜は随分と激しくされてしまった。

 おかげで油断すると歩けなくなってしまいそう。

 だけど、私には国王様への報告がある。そう思いユキト様が眠っていることを確認してから乱れた服装を整え、国王様の私室へ向かった。


「失礼します。リスレイです」


「入れ」


 ノックをして名前を告げると入室の許可が出る。

 私は扉を開いて中に入ると、その中に他の4人もいた。4人には軽く目礼しておく。そして国王様の隣には騎士団長であるツヴェル様が立っている。


「昨日の報告をしに来ました」


「良い。話せ」


「はい。私の担当する勇者様はユキト様と名乗られました。年は20で、どこに行くにも案内が必要ありませんでした」


 私がそう話すと、国王様は心底驚いたような顔をされた。


 ユキト⋯⋯だと?

 私の記憶が正しければユキトという名はサフィニアを封印した張本人だったはずだ。

 間違っているかと思いツヴェルを見るが、険しい表情をしてコクリと頷いた。

 目があっただけで全てが伝わるのは私たちがそれだけ長い付き合いだからだろう。


「国王様⋯⋯?」


 私とツヴェルが厳しい表情になったからか、リスレイが泣きそうになっている。


「いや、其方はよくやってくれた。朝⋯⋯そうだな。朝食が終えたらユキトをここに連れて来るんだ」


「わ、わかりました!」


 ユキト⋯⋯本物か、偽物か。

 本来ならば3000年も前の人物が現れるはずはない。

 だが、アレは異世界から召喚された。

 異世界に帰ったという伝承は本当だったのだ。いや、まだわからないか。偶然同じ名前という可能性も残しておかなければならない。


「⋯⋯ん?リスレイ、其方まさか⋯⋯」


 リスレイの服装が他の侍女と比べ、僅かではあるが乱れている気がする。

 それを意味するところは、早速求められたということか。

 あの謁見の間でも思ったが、傲慢不遜な態度はどこでも変わらないということだろう。

 この子たちは城に勤める大切な侍女だ。もし、痛めつけるようなことがあれば勇者であろうと、きっちり躾なければ。


「え、えと⋯⋯その、求められまして⋯⋯」


「⋯⋯そうか。私が言ったのは、双方合意の上で、という意味だったんだが⋯⋯」


「ふぇっ!?」


 なんだ。リスレイは聞き間違えていたというか、意味をはき違えていたということか。


 許せん。

 勇者の侍女に選ばれたのは全員処女だったはずだ。16歳という年齢で、純粋な者を勇者の侍女に仕立て上げるとして国王様が直々に手配した者たち。

 そのいたいけな少女をあいつが犯しただと?

 今度会ったら俺がぶっ飛ばしてやろうか。


「⋯⋯あまり物騒なことを考えるな。それからお前は顔に出過ぎだ」


 おぉっと。どうやら顔に出ていたらしい。


「申し訳ございません」


「気持ちはわかるが⋯⋯ユキトが強要したのであれば別だが、まだわからないだろう。リスレイ、どうだったんだ?」


 確かにその通りだ。まだ僅かに強要していない可能性もある。

 俺はリスレイの返事を待った。


「⋯⋯その、初めてなので優しくとお願いしたら優しくしてくださいました。ほとんど痛みはありませんでしたし⋯⋯ユキト様は強要するような人では、ないのです」


 言い切ると、リスレイは顔を赤らめて俯いた。

 ふむ⋯⋯?

 これはどうやら恋慕しているのか?

 国王様と目が合った。

 国王様が頷いたことを確認し、俺も頷き返す。


「お前、わかってるな?」


「わかっております」


「よし、では出来る限り一緒に居させよ」


「はっ!必ずやリスレイに幸せを与えましょう」


「うむ」


 頷きあった内容は大体こんな感じだ。

 俺と国王様はリスレイとユキトを出来るだけ一緒に居させようと決めた。



 ふぅ。再召喚されてから二日目か。

 リスレイは俺を見て顔を赤らめて恥ずかしそうに顔を逸らしたり、世話はしてくれているのだが何やら様子がおかしい。

 これ、もしかしてアレかな。

 初めてヤった相手のことが好きになる、と錯覚するという現象ではないだろうか。

 まぁ、その気持ちはわからないでもないが⋯⋯熱が冷めるまでそっとしておこう。

 服を着替えて食堂に行くと、どうやら今日は一番最後だったようだ。

 少年は俺と同じような服を着て、少女たちはスカートを穿いている。


「うん⋯⋯やっぱりこの世界の食事はうまい」


 呟くと、この朝食を作ったという料理人がホッと安堵する。


「ありがとうございます」


「ああ、またうまい食事を頼むよ」


 少年少女はそれぞれ昨日で折り合いをつけられたようで、目をキラキラ光らせている。

 まぁ、そうだよな。

 異世界なんて子どもからすれば冒険したい場所だよな。それでも帰りたいという気持ちの方が大きいとは思うが。


「ユキト様、この後は少し行くところがございます」


 食事が終わり部屋に戻ろうとしたところ、リスレイに耳打ちされた。


「わかった。案内してくれ」


 どうせ騎士団長やらが昨日の俺の態度を改めさせようとでも思っているに違いない。

 少し面倒ではあるが、昨日は歓喜のあまりあれでもテンションが上がっていたからな。リスレイにも、悪いことをした。


 ユキト様を国王様の私室に案内する。


「リスレイです。ユキト様をお連れしました」


「入れ」


 中からツヴェル様の声が聞こえたので、中に入ると朝とは違って国王様とツヴェル様と宰相閣下であるジェラルド様がいた。

 どうしたんだろう?

 もしかして、ユキト様が私の知らないところで何かしたのだろうか。

 そう思うと背筋が凍てつくようだった。

 国王様が私とユキト様を見ると、ユキト様に視線を定めて口を開く。


「早速で悪いが、私もツヴェルもジェラルドもそれほど暇ではない。本題に入らせてもらうぞ」


「はぁ⋯⋯、どうぞ」


 ユキト様!もう少ししっかり返事をしてください!


「名をユキトと言ったか⋯⋯それはサフィニアを封印した者の名だが⋯⋯」


 国王様が目をすぅっと細めて言った途端、ユキト様の雰囲気が後ろで控えている私にもわかるように変化した。


 ヴェネトクス言葉を受けて、ユキトがすぅっと目を細め雰囲気を一変させた。

 それには後ろで控えているリスレイも気付いたようで、僅かに動いた。

 ツヴェルがそれを見て腰に携える剣の柄に手をかける。


「やめておけ。お前では俺に勝てない」


 ツヴェルが剣を引き抜こうとした瞬間、ユキトが言い放った。

 そうか、やはりというか、この者は3000年前の英雄か。


「つまり、ユキトは3000年前に召喚された勇者であると」


「なるほど、3000年も経っていたのか。どうりで王が変わっているはずだ」


 ニヤリと不適に笑い、口にする。

 そのことにリスレイは驚いているようだが、まだ序盤だ。

 私も聞きたいことがあったため、ユキトに質問する。


「何故3000年前に現れたユキトが、現代にいる?」


「それは俺だってわからんな」


 手を振って力なく答える。これが演技なら相当な曲者だが、これは本心だと思う。


「あと、一つ言っておくが、サフィニアを封印したのは俺じゃあない」


 何!?

 では、伝承は間違っているというのか?


「そ、それはどういうことだ!あの魔王を封印したのはユキトだと、文献に残っている!」


 声を荒げるな馬鹿者!

 そう叱りつけてやりたいが、仕方ない。相手はツヴェルだ。飛び火は勘弁願いたい。


「少し、昔話をしてやろう。俺にとっては3か月前のことで、お前たちにとっては3000年前の話を」


 私たちは3人揃って息を呑む。

 間違っていた文献は後で書き直せばいい。

 私は宰相として、このことを記録しなければならない。これから語られる本当の真実を。


「サフィニアはな、不死身だったんだ」


「その程度の記録は残っている⋯⋯!」


「おろ?そうなのか」


 この勇者、どうしてくれようか⋯⋯。私もツヴェルのように殴りたくなってきたぞ。


「そのことにいち早く気付き、というか気付かされたんだ。俺とサフィニアでは天と地ほどの実力の違いがあったから」


 今思えばあれはまぐれではなかったと断言できる。

 そう続けた勇者は思い出すように遠い目をした。

 しかし、仮にも3000年前に召喚された勇者だ。その功績は各地に点在している。例えば、街を襲ったスタンビートをたった一人で防いだという伝承が残っている。

 それはここにいるツヴェルでも出来ない事だ。

 私は紙に羽ペンでそのことを記していく。


「そこで、封印という手段を思いついた。クルス⋯⋯当時の宮廷筆頭魔法使いは当代最強の魔法使いとされていたから、当然のように封印魔法についても習熟していた。だが、サフィニアともなれば強固な封印でなければならない。そこで俺は時間稼ぎをすることにしたんだ」


「クルス⋯⋯その者は勇者一行として記されているが、そのようなことをしたとは記載されていないな」


 ヴェネトクスの言った通りだ。

 そんなこと、どこにも記されていない。当時の宰相は何をしていたのだ。


「で、ここからが俺だけが知っていることだが」


 ユキトがヴェネトクス、ツヴェル、私の順で視線を向けた。

 どんな秘密が語られるのかと思うと、自然と喉が鳴る。


「あいつは、サフィニアは俺たち勇者と同じ世界から来た奴だ」


「そんなバカな⋯⋯!」


「もっとも、俺たちは人のままだが、あっちは竜種だったが」


 竜種⋯⋯それも文献には残っていない。一体どれだけの秘密をかかえているのだ、この勇者は。


「⋯⋯続けてくれ」


「ああ。⋯⋯それで、クルスの準備が整った頃合いを見計らって、俺は念には念を込めて奴の隙をついて犯罪奴隷用の首輪を巻いた。その後、クルスが封印魔法を放ち、続けてダンジョンを作成した」


「犯罪奴隷用の首輪、とは何だ」


 ⋯⋯奴隷か。それは確か、人と魔がお互いに歩み寄る証として全種に禁止が言い渡され、今では知る者も少ない。


「まさか、この時代に奴隷はいないのか?」


 チラリと私の方に視線を向ける。


「そうだな。少なくとも一般的に知られていることではない。宰相である私でさえ、知識は乏しいと言っていいだろう」


「なるほど。説明すると、奴隷ってのは一般奴隷と犯罪奴隷の二つに分けられる。一般奴隷は金がなく生活に困っている者がよくなっていた。そうした者たちは契約書と双方の合意の元、奴隷となる。だが、犯罪奴隷は犯罪を犯した者を人として扱わないという、惨いものだ。奴隷を示す首輪もそれぞれ違っていてな、犯罪奴隷は強制的に首に巻き付けることが出来るんだ」


 そんな時代があったとは⋯⋯。

 宰相であるというのに、知らぬことばかりだ。


「そうだったか⋯⋯。それを巻き付けると、どうなるんだ?」


「犯罪奴隷用の首輪⋯⋯通称赤は、巻き付けた者の能力を人種の一般人程度にまで落とす物だ」


 ん⋯⋯?なら、今のサフィニアは⋯⋯。


「そして、俺が使ったのはこちらへ渡る時に神から渡された特別な赤首輪。それを巻いても、サフィニアだと不安が残る。そして、封印したというわけだ」


 念には念を、か。

 策を二つも使うとは⋯⋯それにダンジョンは人の手で作られていたのか。

 年々ダンジョンが減り、全く新しい物が増えないと思っていたらそういうことだったのだな。

 これは他の書物にも残す必要がありそうだ。


 ユキト様は頭がおかしくなられたのかな?

 そう思い、国王様方を見てみるととても真剣な瞳でユキト様を見ている。

 あまりにも鋭い眼差しで、私は息を呑んだ。

 それを前にして平然と話していられるユキト様は、本当に3000年前の英雄なのかもしれない。

 ということは、今の話は全て真実?

 ⋯⋯もしかして私、物凄い話を聞いたんじゃ⋯⋯。


「さて、話は終わりだな。今のサフィニアは、首輪が機能していればただの不死身の女だ。だから、そう気にすることは無い。解除できるのは着用させた者、つまり俺だけだ」


「話してくれて、感謝する。ユキトよ、サフィニアを探し出し首輪が機能しているかどうか、確認してはくれんか」


「面倒臭い。それに、なんとなく首輪は取れていないような気がする。神から渡された物だから、抜け道何てあるわけないだろうしな」


 神⋯⋯それってやっぱり、教会が崇める神のことかなぁ⋯⋯。

 あくまでも保険で封印していただけだ、と言ってユキト様は踵を返した。

 私は慌てて追いかける。

 扉の前で国王様方に一礼し、ユキト様について行った。


あらすじちゃんと書いてみました

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