0:「サンタ狩り」
例えばの話だ。
サンタの正体は? と聞かれ『親』と答える人は何人いるだろう。
……きっと凄く多いだろうなぁ、ということは想像に難くない。
もちろん俺だってこの間までそうだった。
もう高校二年生だし、そこまで無邪気に夢を見れる歳じゃあなかったんだ。
でも俺は、きっとどこかで信じていた。
見るからに赤い服を着て、トナカイが引くソリに乗って空を飛ぶようなサンタが、この世には実際にいるって。
ほとんどが親なのかもしれないけど、もしかしたら一人くらいは本物がいるんじゃないかなー……ってさ。
というよりは、元々疑っていたんだと思う。
サンタという怪しいおっさんの正体を、そして――なぜ子供だけにプレゼントを与えるのかを。
絵本でそのお話を見てから、テレビでその物語を知ってから。どうしても理解が及ばず、不思議に思ってしまっていた。
……なんで大人にはくれないんだろうな?
おかしいだろ、大人だって絶対プレゼントが欲しいはずだぜ。
子供だけが貰って、大人は与える側に回るなんて不公平だ。それに、子供かどうかをどうやって判断してるんだよ。
まだ子供なのに大人っぽい奴もいるし、もちろんその逆だってたくさんいる。
そう考えると……年齢を基準にしてるってのが、まぁ妥当なんだろうな。
それじゃあ高校生は……どっちになるんだろう?
二十歳には届いてないから大人じゃないし、子供といえるほど幼くもない。
そうやって考えていると、なんだか悲しくなってくる。
俺はもう、サンタの物語には登場できないほど大きくなってしまったんだろうか……。
それを、嫌だと思ってしまったんだ。
最後に一度あがいてみようと考えてしまった。
これで見つからないのなら、もう諦めて、馬鹿なことを止めて現実を見ようと……そう決めた。
――だから俺は決行したんだ。
本物を探すために、プレゼントを貰うために、膝に怪我を負って夢を失った俺に――新しく夢中になれるなにかが見つかりますようにと、願って。
『サンタ狩り』を、決行した。