雑文、ひとつめ
暗い。八月の宵にしては暗かった。道も良くない。
部屋の四方には窓はなく、不幸がひとつ、真ん中に居座っているだけだった。
意味ありげな、赤い前髪を直しながら、レイモンドは語りだした。
君はまだ神を信じているのかね?まったく愚かというものだ。
お前は神を見たことがあるのか?いや、ないだろう。せいぜい綺麗な夕焼けを神として見ていただけだろう?
そんなものは捨ててしまえ!違うんだよ!神というものはもっと崇高で、万人に愛されているものでなくちゃあ駄目なんだ!
ああ!馬鹿馬鹿しい!どうしてまだそんな思想でいるのか!
前々から言っているだろう?神とは大衆の正義であると。
現に人々がそれを信仰し、それにより社会は円滑に進んでいるではないか。
何?それとはなんだと?ハッハッハ。君は愉快な冗談を言うね。
えーっと、ハナシを続けようか。どこまで話したっけな。
そうそう、神についてだったかな。お前の顔を見る限りそうらしいな。
ゆえに、神の思想に従えず、信仰を持たない人というのは大衆ではないのだよ。
正義はいつも正義であるのに、どうしてそれが理解できないのかね?
君には素質があり、地位と学がある。だというのに、今になっても君の思想は幼児のまま。
君も神を信じるべきだ!それを信仰し、救われるがいい!
そうだな、君にあるのは学ではなく、見聞のためのポマードってところかな。秩序や、マナーとしてはあまりにも油が過ぎる。
すまない、すまない。そう気を悪くしないでくれ。君が愚かなのが悪いのだよ。わかるかい?
総統、不幸にも彼はアタマを撃たれてしまい、精神が混乱しておるようです。ゆえに以上のような心神喪失のような言動をとっていると思われます。
不幸は消えた。だが、それは幸福ではない。
眠いアタマで、30分で書きました。
なかなかおもしろかったです。中身は別として。