愛の力
俺は今、リリー姉さんと古城に来ている。
城の魔物を狩って、姉さんの鍛錬の手伝いをしに来たはずなのに・・・
「弟に近づかないでください!」
「あなたこそ、私の主に近づかないでよ!」
・・・どうしてこうなった。
俺は朝食を食べ、身支度を済ませてから、姉とともに古城へやってきた。
姉が古城のモンスターを倒し、俺がサポートに回るように古城を探索していた。
なるべく、俺の力は見せないように隠してはいる。
だが、姉さんとは離れてはいけない、というのが父さんから出された条件の一つだ。
なので、いつまでも隠し通すのは難しい。
魔法を使えることはばれているので、姉さんには俺の使える力を少し知られてしまっているのだ。
だから、べつにソニアのことを知られても問題ない。
むしろ、一緒に行動する仲間になるので、受け入れてもらわなければいけないとも思っていた。
しかし、ある程度狩りを終えたところで、俺たちのところにソニアがやってきたのだ。
「レオナ、おはよ・・・ 隣にいるその女、誰ですか?」
ソニアのまとっている雰囲気が、一気に変わった。
昔からソニアは、俺の近くにいる女性に対して殺意を向けたり、殺そうとすることはしばしばあった。
ぶっちゃけおかしい奴だとは思っている。
だが、俺の肉親だと説明すればきっと大丈夫・・・
「ああ、俺の姉ちゃんのリリーだ」
「姉?そう、殺してもいい?」
だめだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
こいつの中で、殺すこと決定している・・・
お姉ちゃんを早い所逃がさないと本当に殺される!
「お、お姉ちゃん、早く逃げ・・・」
「あなたこそ、誰?私の弟に近づかないでほしいんだけど?」
こっちはこっちでスイッチ入っちゃってるよ!
ここで冒頭につながるわけだ。
「姉だか何だか知らないけどさ、私の主に近づくものは・・・死んで?」
「ソニア、落ち着けって!」
「どこの誰だか知らないけどさ、私の弟に近づくなら、死んでくれない?」
「お姉ちゃんも落ち着いて!」
そんな俺の制止もむなしく、二人は臨時体制に入る。
しかし、ソニアはその気になれば、今この瞬間にでも姉ちゃんを殺すことができる。
ゆえに、余裕の表情だ。
対する姉ちゃんは、実践などほとんど経験がなく、剣術のレベルもそう高くなかったはずだ。
ソニアに勝てる要素が一つも見当たらない。
とりあえず、俺は二人を鑑定してみることにした。
ソニア レオナの召喚獣 237 1/29 1141歳
Lv139
HP 74728/74728
MP 960/960
攻撃力 4024
防御力 7324
精神力 132
スタミナ 8293
[習得魔法]
闇魔法 Lv8
[加護]
無し
[スキル]
狂戦士
吸血
自動回復
うん、相変わらずの強さだ。
千年前と比べて多少は強くなっている。
さあ、お姉ちゃんは・・・
リリー・ファウスト 無職 1337 2/17 11歳
Lv15
HP 976/976
MP 0/0
攻撃力 134
防御力 127
精神力 0
スタミナ 175
[習得魔法]
無し
[加護]
身体強化
[スキル]
無し
[称号]
愛を守るもの
禁じられた恋
称号?そんなものあったっけ?
鑑定がLv2になったことで、もっと深く調べられそうだな・・・
[愛を守るもの]
自分の愛する者のために敵に立ち向かった証
愛する者が近くにいれば、身体的ステータス10倍
[禁じられた恋]
自分の兄弟に恋をしてしまった罪深き証
愛する者が近くにいれば、愛の深さに比例し、身体的ステータスアップ
※現在は7倍アップ
・・・ナニコレ?
俺、姉ちゃんに溺愛されてることはわかってたけど、異性として見られてたのか・・・
それより補正が恐ろしい。今、この状態だとソニアのステータスを上回る。
ソニアは部下の中でも強い方ではなかったが、それでも今の世の中じゃ最強クラスだと思う。
それと互角なんて・・・ 愛の力こえぇ。
そんな風に分析している間に、二人は戦闘を始めていた。
二人の力の差はほぼ互角だった。
リリーは身体能力を武器にソニアに攻撃を仕掛けていく。
対するソニアは、長い間培ってきた経験と魔法を取り入れた戦法を使い、
的確にリリーに攻撃を入れていった。
俺は、そんな二人の姿を見ながら寝ていた。
姉がソニアと互角に戦えるほどになった以上、そう簡単に死ぬことはない。
俺が心配せずとも、大丈夫だろう。
早く二人とも落ち着いてくれないかな・・・