帰宅
ソニアと契約を交わした後、ソニアを城に置いたまま、俺は自分の家に向かっていた。
太陽の日が沈み、夜になりかけている。
田舎だとはいえ、これ以上遅くなると心配をかけるので、いつもこの時間ぐらいには家に帰るようにしている。
ちなみに、ソニアとは1km以上離れられないが、古城はぎりぎり範囲内なので、離れていても大丈夫だ。
「ただいま~」
「おかえり~」
玄関を開けると、姉であるルージュが迎えてくれた。
今年で11歳になり、俺が生まれた時よりも大きくなり、だんだん大人っぽくなってきている。
コルト兄さんに剣術を習っているおかげか、体は引き締まっており、なかなかかっこいい。
「ヘレン、今日はどこにいってきたの?」
「村の外れで走ってきただけだよ」
古城に行ってきたなんて言ったら、心配をかけてしまう。
一応、あの古城は危険なので俺のような子供は絶対に行かないよう、小さいころから言われている。
「・・・そう、お疲れ様!」
「ありがとう、お姉ちゃんは今日何をしてたの?」
一瞬姉の顔が曇った気がした。
「私はなんと、古城へ行ってきました! あ、お母さんたちには内緒だよ?」
なんだって!?
今日はいつもよりは派手なことをしていないから、ばれてないといいんだが・・・
「そ、そう。危なくなかった?」
「うん!思ったより魔物が少なかったんだ」
それは、俺が大量に狩ったからなぁ・・・
み、見られてないよね?
「でね、レオナ。今日、古城で魔物狩ってたよね?」
見られてました・・・
やばい、やばいな。
下手したら、これからどこへ行くにしても監視の目が付く。
そんな事態だけは回避したい。
「ううん、古城なんて怖くて近づけないよ」
「大丈夫よ、レオナが古城に行ってることはみんな知ってるから」
はい?
「村の人たちがわざわざ何人も言いに来てるのよ。レオナが古城に入ってったのを見たって」
「ばれてたんだ・・」
「うん、そりゃ頻繁に入ってれば誰だって気づくよ」
「父さんと母さんはなんか言ってた?」
「最初は心配してたけど、帰ってきても怪我一つしてないから、最近は放っておいても大丈夫だろうって」
まじかぁ・・・
ばれてたのに止めなかったことには驚いたな。
てっきり、止められると思っていた。
「そ、そうなんだ」
「でね、お願いがあるんだ。明日、私も一緒に連れて行ってくれない?」
「え?」
「今日見た限り、レオンの方が私よりも強いと思う。たぶん剣だけでもコルト兄さんと同じくらい強いんじゃないかな。魔法も見たことの無いものばっかり使ってた。だから、私と一緒に古城に行って修行を手伝ってほしいの。 お願い!」
魔法使ってるところまで見られてたのか・・・
力を使うのはもう少し慎重にやった方がいいな。
「別にいいけど・・・」
「本当!?」
「でも、お姉ちゃんはなんで強くなりたいの?」
「私ね、貴族の堅苦しいの嫌なんだ。このまま貴族のまま、一生を過ごしたくないの。 だから、もう少し強くなったら家を出て、冒険者になろうと思うんだ。でも、中途半端な強さだったらお父さんも家を出ること許してくれないと思う。だから、もっと強くなってお父さんに家を出ることを許してもらいたいんだ」
お姉ちゃんも家出たいのか・・・
なら、家を出るときは一緒に出た方が簡単だな。
今のうちにお願いしておこう。
「そうだったんだ・・・ でも、もしお姉ちゃんが家を出るときは、俺も一緒に連れていって」
「え?」
「おれも、貴族のまま死ぬつもりはないし、一緒に冒険者になりたい!」
「・・・わかったわ、一応お父さんに話してみるね」
「ありがとう!」
勿論、このままうまく家をはずがない。
その夜、俺は父の部屋に呼ばれた。
「リリーから聞いたよ。冒険者になりたいんだってね」
どうやら、すぐ父親に伝えてくれたようだ。
まあ、父もなんとなく察してはいたのかもしれないが。
「うん、貴族のまま生きるよりも、俺はその道を進みたいんです」
「そうか。でも、冒険者とは常に死と隣り合わせだ。自衛する手段を持っていなければ、たとえリリーと一緒に行ったところで足を引っ張ることになるぞ?」
「もちろんわかっています。そのために古城に行って修行をしていました」
「あそこには近づいては・・・ まあいい、その修行でいったい何ができるようになったんだ?」
ここは、とりあえずファイアーボールを見せておけばいいだろう。
「魔法のボール系が使えるようになりました」
「ほぉ、王都の魔術師でも使えるやつは希少なのに、使いこなしているな・・・」
どうやら、ボール系魔法も希少らしい。
「わかった、冒険者になることを許そう。 でも、絶対に死ぬな。たまには顔を見せに帰ってこい。リリーとはなるべく離れるな。いいか?」
どうやら、父親なりにいろいろ心配だったようだ。
だが、これで冒険者になることを許された。姉付きだが。
明日からは、お姉ちゃんを特訓して、迷宮でも十分通用するよう鍛えてあげなくては・・・