契約
「落ち着いたか?」
「・・・はい」
ソニアを落ち着かせるため、俺は長い間ソニアに抱かれていた。
「いきなり殴りかかったり、疑ったり、様々な無礼申し訳ありませんでした」
「気にしないでいい。暴君だったあの時のように振る舞うつもりはもうないから」
「ごじゅ人様がそのようなことを言うなんて、この数年にいったいなにがあったというのですか・・・」
昔のわがままは、今思うとひどいものだったな。
暇だから殴らせろとか、今思うとよく長い間反乱起こさなかったよな。
「今まですまなかったな。あんなにわがままだったのによくついてきてくれて」
「もう1000年も前のことですから、気になさらないでください」
「言葉遣いも、もうそこまで気にしないでいいから・・・」
「そう。わかったわ。でもご主人様って呼ばないと契約が面倒くさくなるけど・・・」
そう、召喚獣にとって主の名前を呼ぶということは、特別な契約となってしまう。
そもそも、召喚獣を呼び出したときに、契約する必要がある場合がある。
何度も同じ召喚獣を利用したいときや、高位の召喚獣を呼び出すときなどだ。
他にもいろいろあるが、大体はこの二つだろう。
そして、契約の方法も数種類ある。
一つ目が仮契約、召喚獣に力を認めさせれば、契約となる。
召喚獣と契約者の簡易契約で、大体の契約がこれだ。
二つ目が本契約、召喚獣に名前を与え、それを受け取ってもらえれば契約となる。
召喚獣と契約者の能力、魔力などが一部共有できるようになる。
また、召喚獣は主の言うことに絶対服従でなければいけない。
なので、この契約をする召喚獣はほとんどいない。
三つめが真契約、召喚獣が持つ、契約者の名を召喚獣が呼び、それにこたえることで契約となる。
召喚獣の持つすべてが、契約者と名前で呼び合うことで契約となり、契約者は召喚獣に大量の魔力を渡さなければいけない。
また、これをおこなうと召喚獣は主が死ぬまで添い遂げなえればいけない。
他にも、契約者の言うことに逆らうことも可能だが、契約者から1km以上離れられないなど、様々な制約が付く。
また、自分たちで制約を付けることも可能だ。
その中にはデメリットも多いので、昔の俺は一体もその契約を結ぶことはなかった。
だが、今は
「ソニアがよければ、俺は真契約がしたいと思っている」
「はい!?」
「昔みたいに戦争を起こしたり、大量の召喚獣と契約するつもりももうないから」
「ご主人様は変わったね。昔はそんなこと絶対に言わなかったわ」
その通りだ。
昔は真契約なんてしたら、召喚獣に足を引っ張られると思っていた。
だが今は違う。何が俺をそう変えたのかはわからない。
自分でも驚くほど、この体になってからは罪悪感が沸く。
「そうだな、なんでこんな風に変わったのかは俺にもわからない」
「そう、でもいい。昔の怖いご主人様より今の方がずっといい」
「そうか、ありがとう。もう、昔のような振る舞いは絶対しないって誓う」
「本当?」
「ああ、約束する。何なら契約の時に制約をつけてもいい」
「そう、本当にかわったようで・・・ いいでしょう、真契約を結びましょう」
「本当か?」
「ええ、もちろんです」
ぶっちゃけ、自分勝手なことを言っていると思う。
心を入れ替えた。だから許してくれなんて、たとえ向こうがもともと信用してくれていたって
普通は許されないようなこともたくさんしてきた。
だが、そんな俺でもソニアはいつも優しい。
もう、彼女を絶対に裏切らない、裏切ってはいけない。
「ソニア、ありがとう。本当に今まですまなかった」
「もういいの。その分、これからは優しくしてね」
「ああ、約束するよ」
その日、俺とソニアは初めての真契約をした。
「契約者は召喚獣を傷つけた場合、死、または召喚獣の決めたペナルティをうける」
と言う、追加の制約を付けて。
ソニアはいらないと言っていたが、傷つけないと言ったからにはこれくらいはしないと。
「これからよろしくお願いします、レオナ様」
「ああ、こちらこそよろしく」
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