成長 そして・・・
俺はやることもないので、四つん這いで家の中を歩き回り、片っ端から鑑定と能力コピーを繰り返した。
おかげで、能力がかなり増えた上に、鑑定と能力コピーのレベルが上がり、俺の家族構成、場所など様々なことが分かった。
家族構成は、父親に母親。
それと、兄が一人に姉が二人だった。
父親はオルザック・ファウスト。22歳。 中級貴族で、そこそこ偉い人だ。
あまり大きくはないが、自分の領地の開発に日々精を出している。
性格はとにかく優しかった。読書家らしく、自宅に書斎をつくっているほどだ。
本は基本高価なものだから、買わずに図書館で読むのが一般的なので、自宅に本を置く人はそれほど多くないのだ。
母親はルージュ・ファウスト。 19歳。出身は他の家の貴族だったそうだ。
優しいけれど、怒らせたらいけない。 怖い、本当に怖い。
長男はコルト・ファウスト。 今年で8歳。
兄弟の中で最年長なので、恐らく家を継ぐのだろう。
毎日のように剣の鍛錬をしていて、とてもまじめな性格のようだ。
長女はヘレン・ファウスト。 今年で6歳。
物静かで、よく父親の書斎で本を読んでいる。俺が近くに行くと、膝に乗っけてくれる。
次女はリリー・ファウスト。 今年で5歳。
ヘレンとは真逆の活発な子で、よく走り回っている。
よく俺のところに来て、一緒に寝てくれたりする。
そんな感じの四人と、使用人が6人だった。
ちなみに、偽装だらけの使用人はまだ怪しい所を見せていない。
なので、目的などもさっぱりわからない。
でも、こっちに危害を加えてくる様子もないし、たぶん大丈夫だろう。
こんな人たちに囲まれて、俺は育っていった。
少しずつ話したり立ったりなどもできるようになった。
本当は生まれた時からできたが、怪しまれるので少しずつ成長しているふりをした。
俺は順調に育った。
そして、6年もの年月がたった。
俺は6歳になり、会話や移動など不自由なくできるような年齢になった。
文字を母に教えてもらったので、本を怪しまれず読めるようになった。
そのおかげで、いろいろなことが分かった。
1000年と言うのは、かなり長い時間だったようで、俺が過ごしていた国や文明、技術などはほとんど失われてしまったようだ。
俺らが使っていた魔法もその一つで、今はその技術のことを古代魔法と呼ぶそうだ。
なので、今使われている魔法は昔の魔法の劣化版。だから、魔法ステータスの横に(小)とついているらしい。
まあ、魔物なんかも一緒に退化しているそうだから、戦うのに使っても大して困らないらしい。
ちなみに、昔から存在していて退化していない種族を古代種というそうだ。
昔なら大したことのないオークなんかも、今では強大な種族としてキングオークと名が変わっていた。
兄弟たちも勿論成長した。
長男のコルト兄さんは、剣術がかなり上手になっていた。
家を継がなければいけないので、騎士などにはなれないのだが、それでも鍛錬は欠かしてはいなかった。
長女のヘレン姉さんは、今でもずっと書斎にこもっては本を読み漁っている。
よく俺にいろいろ教えてくれる。魔物の種族についてなんかも、よく話してくれる。
次女のリリー姉さんは、良くも悪くも大して変わっていない。
相変わらず、いろいろなところを走り回っている。最近は、コルト兄さんに剣術などを教わっている。
俺も、日々こっそり修行をしている。
例え膨大な魔力を持っていても、精神力を鍛えなければ大きな魔法は使えない。
魔法のレベルなども、高ければ高いほど大きな魔法が使えるという訳ではなく、
その系列の魔法の発動スピードが速くなったり、魔力の消費効率が良くなるだけで、
大きな魔法が使えるという訳ではない。
そのため、大きな魔法を使うためには精神力を上げる必要があるのだ。
攻撃力や防御力、スタミナなどは日ごろの運動である程度上がるが、精神力は魔法を使うことでしか上がらない。
ただ、俺が使えろ魔法は、今は失われた技術なので、人前では使えない。
なので、家の周りにある人が寄り付かないところに行き、修行する必要があるのだ。
「人が寄り付かないところって言うと、ここしかないよな・・・」
修行をするために訪れたのは、俺の住んでいる屋敷の近くにある古城だ。
だいぶ昔に手放されたらしく、アンデット系やゴースト系の根城になっている。
村人などは、危ないので近づかないので、修行にはもってこいなのだ。
「やっぱり中は暗いな」
城の中は、真っ暗な上にボロボロだった。
これも修行の一環として、俺のいるフロア一体に、魔法で明かりをつけてみることにした。
「ライト」
これは、昔の炎系初級魔法で、周りを照らしてくれる便利な魔法だ。
これは、今も初級魔法となっているらしい。
「さて、修行修行っと」
とりあえず、炎 水 風 光 闇の五属性の初級魔法である、ボール系魔法を連射してみる。
ファイアボール、ウォーターボールなどの魔法で、昔はよく修行に使った。
威力も大してないので、周りが壊れる心配もないだろう。
「でも、わざわざ一個ずつ出していくのはめんどくさいな。魔力も有り余ってるし・・・」
なにしろ、このボール系魔法は消費MPが5のため、俺の魔力では大した変化にならない。
精神力は上がるのだが、いっぱい魔力のある今としては、もっと効率よく上げたい。
そこで、俺は並列化することにした。
並列化とは、同じ魔法をいっぺんに使う方法で、大して難しくはない。
ただ、5使う魔法を2つ並列にすると20消費。 3つ並列にすると40消費。 4つ並列にすると80消費。
と、馬鹿みたいに魔力を食うので、ほとんどだれも使わない。
一般的な魔術師のMPは、最大でも1000ぐらいなので、そんなに使えないのである。
しかし、いまは売るほど魔力があるので、そんな心配はしなくていいのだ。
「とりあえず、全属性のボール系を20並列」
違う魔法を一緒に並列起動する分には、別計算になる。
5つ並列は2000消費。それを5つの魔法でやるので一回10000消費することになる。
俺の魔力では382回やると、魔力が空っぽになる計算だ。
「魔法、起動」
その瞬間、俺の手から大量の魔法が放たれた。
馬鹿みたいな量である。
俺は、精神を集中しながら、長い時間魔法を放っていた・・・
赤ちゃんの頃は、バッサリ切ってしまいました。
今思うと、主人公の魔力多すぎましたね・・・
ちなみに並列化の消費魔力は、
魔法の消費魔力×並列回数×並列回数です。