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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

vegetable wars~終わりの始まり~

作者: 筈佳 椎名

夜月瑠璃さんのカオス企画の作品です。

好評だったら連載にしようかと思いますので、

最初はカオス成分は少な目の掴みの部分ですね。


それでは駄文をお楽しみ下さいどうぞー!

 新しい年が始まろうとしている1月元旦。

 そろそろ土に栄養が渡る冬の季節、徐々に緑が増え出すのがその証だ。

 東京都心からは外れた田舎臭がいまだに抜けない山奥で、今日も畑には土を耕す鍬の(くわ)音が鳴り響いていた。


「あら修真(しゅうま)、耕すの上手いじゃないの!」

「ふん、家でゲームやってた方が楽しいっつの!」


 母のお世辞に毒を吐きながら、俺は畑を耕していった。

 我が家では年の始めに、祖母の家に畑の手伝いをしに行くのが決まりとなっている。

 主に畑を耕したり、何かと力仕事が多いからだそうだ。

 なら機械買えよ、と内心思うが、機械音痴の祖母にそれが使いこなせるとは思わない。

 元旦に顔を見に行くことも含めて、毎年祖母の家を訪れては、何かとこじつけて畑仕事を手伝わされていた。


 正直、めんどくさいと思う。

 お年玉もらったらさっさと帰ろうぜ、とも思う。

 しかし家族のはみ出しものである俺が家の決まりに対抗することなどできず、毎年の正月は嫌な思いをするしかなかった。


        △▼△▼△▼△


 2日目も、ガンゲーやってた所を畑にかりだされた。

 3日目も同じく畑仕事。

 度重なる筋肉痛の中、ひたすら広大な畑を耕していく。

 喜ばしい新年に重労働とは、もはや拷問に等しかった。

 そんな身体と精神ともに疲労感を感じ始めた時、


「ん、何かしらこの穴?昨日はなかったのだけれど……」


 不意に近くの母が疑問系にして俺に問いかけてきた。

 仕事をサボりたい気持ちと少しばかりの好奇心から、母親の方へと急ぐ。

 その目の前には、直径1mほどの大きな穴が、底が見えなくなるまで真っ直ぐにのびていた。

 畑の真ん中にポッカリと空く穴。地獄の入り口を思わせる不気味さに、思わず身を引く。


「私お父さん呼んでくるわ。ちょっとそこで待っててね、落ちるんじゃないわよ!」


 それは落ちろと言ってるんでしょうか?

 鍬を置いた母は、小走りで家の方へと走っていった。

 その場に俺一人だけが残された。来たくもなかった土地に置き去りにされ、孤独感を感じる。


 改めて穴の奥を覗いてみた。

 正月に心身共にやられていたからか、俺には穴に「落ちろ」と誘われているように感じた。

 嫌な正月から新年を始めては、その先1年まともに暮らせるわけがない。

 現に、俺には以前からこれといった親友と呼べる奴はいないし、いまさら作ろうとも思っていない。


 もはや俺にプラスのことを考える余地はなかった。

 さらに身をのりだし、顔をわざわざ近づける。

 すると無理に体重をかけていた両手の地面が、負荷に耐えきれなくなって崩れた。

 今更戻ろうとは思わない。俺はその流れに身を任せ、穴の中へと吸い込まれていく。


 ただひとつ、次の世代の俺へと言葉を送るならば……


『次に生まれ変わった時は、野菜が

もっと好きになってればいいかなぁ……』


        △▼△▼△▼△


『………ぉぃ』


 何かの………………声?


「…おいお前!見慣れない顔だが、ってか生きてるか!」

「んあ……」


 近くで聞こえた声と、鳴り響く銃声で目を覚ました。

 起き上がると、そこは荒野のように荒れた土地で、明らかに先程までいた畑とは似ても似つかない場所であった。

 周りでは軍服を着た兵士のようなおっさんたちが、一斉に同じ方向に向かって銃声を放っていた。

 どうやら遠くにうっすらと見える馬上の軍隊に向かって放っているようだ。

 その軍隊のスピードには恐怖を覚え、豆粒の集まりだった軍がみるみる規模を広げて行く。


「え、え……?」

「よかった生きていたか。だがここには奴等の増援が迫って来ている。一旦引き下がるぞ。早く立て!」


 とある軍人らしき1人から手を差し出され、早く立つように促される。

 その差し出された手をたどり、顔を見てみた。

 すると、その手は女性のものだった。

 絹のような肌触りのよさそうな金髪を動きやすいように後ろでくくり、宝石のような碧眼でこちらをキツく見つめている。

 先程の強い口調からして、鬼の女教官と言った感じ。

 そして体をよく見てみると、差し出した手と反対の手にはバナナを持っていて、軍服の上からはリンゴと玉ねぎを1つずつ腰にぶら下げていた。

 ますます訳が分からない、といった顔をしていると、


「ba-77やネイギー玉を知らないのか!?まあいい、後で話してやる。とにかく今はついてこい!」

「うおっ!?」


 女とは思えない位の力で無理矢理たたされ、半分肘を極めた状態で俺と女教官は荒野をあとにした。

 ……その時、肘が女教官の胸に少し当たっていたのは秘密だ。と、


「っ……!!さっさと歩け!」

「ぁいでっ!?」


 意図を察した女教官が、さらに肘を極める。

 右肘はギシギシと嫌な音をたて、相応の痛みが俺を襲った。


「いでで!……くそっ、ここは一体………!?」



 どこなんだ!?

ね?少なかったでしょう?

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― 新着の感想 ―
[良い点]  発想の勝利ですね。穴に落ちるまでは少し不自然でしたが、それを帳消しにするくらい奇抜な結末でした。 [気になる点]  さっくりと自殺を選ぶほど追い込まれていないのが残念でした。 [一言] …
2014/01/25 14:10 退会済み
管理
[一言] 続きが気になります。連載にすべきですよ。
[一言] お疲れ様でした。 ba_77で思わず吹き出したのは内緒です。 とりあえず続きが気になる終わり方ですね。面白かったです。
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