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その後、あまり覚えていなかったのだが状況を説明し、別世界から召喚されたという馬鹿げた話をなんとか納得してもらい、今はあの男の後ろをついて歩いている。私がいた場所は王都の外れに位置する石造りの旧神殿跡だったらしく、まわりは鬱蒼とした草に囲まれている。その神殿跡に無謀を働こうとする者たちが集まり、何か企んでいるという情報が入ってきたという。


しばらく歩くと馬車が近づいてきた。

「王宮まで戻る。乗れ。」

馬車は四人がけだが狭く、どうしても距離が近づいてしまう。先ほどの恐怖がなかなか抜けきらず、足がすくむ。あの男を見ると、はやくしろとばかりに睨まれ慌てて乗り込む。

「揺れるが急ぐ。我慢しろ。」

そういうと、あの男はさっさと馬の方へ行ってしまった。どうやら乗らないようだ。

「ごめんね~!あいつ、怖かっただろう~?悪いやつではないんだけど。」

急に声がし、びくっと身体を震わせる。一人の男性が馬車に乗り込んできた。

「あっ、ごめ~ん!!驚かせちゃった??僕はニック~!宜しくね!!」

そう言って、手を差し出してきた人は、ふわふわとした金色の髪に、たれ目で青色の瞳を持つ甘い顔立ちの男の人だった。

「あっ、茜です。こちらこそ宜しくお願いします・・・・・・。」

正直、力任せに暴力を振るわれたばかりで、男性と触れあうのは避けたいが、弱みをみせるのも嫌である。お腹に力を入れ、震えを押さえて握手する。


馬車がガタゴトと音をたて、走りだした。

「ごめんね、アカネ。さっきの続きだけど、僕たちは王家に忠誠を誓っているんだ。だから、仕事をしているときは非情にもなる。特にあいつは隊長だし。だけど女性に対する態度じゃなかったよね。」

「いえ、不可抗力ではありますが、そちら側からすると十分怪しいと思われますし・・・」

だけど、いきなり殴る蹴るは考えられないよ。争い事なんてみたこともない平和な日本で暮らしていた私には刺激が強すぎた。


話は変わるが、この世界には魔法があるらしい。あの男、隊長殿は高位な魔法が使えるらしく、私の怪我をちゃんと癒してくれた。ただ、癒しの魔法(白の魔法)は、かなり力を消耗するらしく隊長殿はめったに使わないらしい。周りが驚いていた。おかげで身体の痛みはもうない。

・・・お礼を言った方がいいのかな・・・でも、怪我させたのはあの男だし・・・でもフラつくまで治してくれたし・・・悶々と考えているうちに馬車が止まった。

「降りろ。今夜はもう遅い。明日王と謁見する。」

「隊長~、アカネの部屋はどうする~?」

「・・・へたに逃げられても困る。仮眠室にでも入れておく。」

そうして連れていかれたのは、執務室の様なところの奥にある部屋。そこにはベッド、テーブル、そしてお湯のはったタライとタオルがあった。

「私は隣で仕事をしている。身体を拭いた後のタオルやタライは明日の朝回収する。着替えはベッドの上だ。この部屋には結界が張ってある。へたに脱走しようとすると傷だらけになる。諦めて静かに寝ろ。」

そう言うと、踵をかえして扉の向こうへ消えてしまった。

「はぁーーーー・・・・・・」

ため息をついてベッドに腰掛ける。なんだか悪い夢をみているようだ。

・・・落ち着け、落ち着け、取り敢えず今すべきことは身体を清め、しっかり眠る事だ。今脱走したところで、知らない土地、知らない世界の人達。私の常識が通じるとは思わない。明日謁見すると言っていた。頭をすっきりさせ、万全の状態で挑まねば。

「よしっ!」

息をしっかり吸い込み、勢いよくはいて立ち上がる。社会人七年目。まだまだ一人の人間としては甘いだろうが、それなりに苦労して人生経験をつんできた。自分を信じて精一杯やるしかない。血まみれになった服を脱ぎ、身体を拭いて清潔な服に着替える。残ったお湯で服を洗い、窓のさんに干す。今のところ私が異世界からきたと示す唯一のもの。できれば手元に置いておきたい。

「大丈夫。大丈夫。」

そう言い聞かせながらベッドに入る。興奮して目が冴えていたが、身体は思っていた以上に疲れていたようで、目を閉じるとズルリと眠りに引き落とされた。

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