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 春は後から縄を持ってやってきた警備員に連れられて、外で待機していた救急車の前までやってきた。



 刺し傷は浅くとも刺されたのは事実だからと、救急車を呼ばれたのだ。

 ただ、不思議なことに、救急車は2台停まっていた。

 周りには人だかりができている。救急車が停まっているから集まった、とは言えない程の集まり様だった。



 ストレッチャーに座らされた春は不思議に思い、傍にいた救急隊員に尋ねてみた。



「あっちの救急車には誰が?」



「ここの警備員だよ」



 春は、長谷川に背負い投げされた警備員が気絶していたことを思い出すが、その警備員ではないことが、救急隊員が次に言ったことでわかった。



「おそらく君を刺したという警備員だ。通行人の話によると、ナイフを握ったまま建物の屋上から落ちてきたらしい」



「え?」



 向こうの救急車には長谷川が乗っているというのだ。



 ふと建物の方を見れば、警察官が数人ある一角に集まっていた。

 おそらくは、そこに長谷川が落ちたのだろう。

 そこから視線を上げていけば、建物の3階部分はちょうどゲームセンターの入っていた位置に当たった。



 救急隊員は、長谷川は屋上から落ちたと言ったが、ここの屋上は駐車場になっていて、2メートル程の高さの壁が屋上の周りを囲っている。

 それに長谷川は、春に襲いかかった時、目の前で消えたのだ。まるで瞬間移動でもしたかのように。 ・・・



「瞬間移動・・・まさか!?」



 春は悟った。



 再び現れた女子高生はあの時、不可思議な現象を起こして、長谷川を建物の外へ瞬間移動させたのではないか。

 もちろん、春は信じ切れなかったが、女子高生は幽霊だというのだから、信じないわけにはいかない。



 その後、春は救急車に乗せられると、病院へと搬送されたのだった。





 それから2週間が経過した。



 昏睡状態に陥っていた長谷川は、今からちょうど1週間前に意識を取り戻した。

 体中のあちこちを骨折しているために、動くことはできないらしい。ゆくゆくは警察に引き渡されるだろう。



 それから、長谷川が春に自白していた通りに、息子がひき逃げ犯だと警察に断定され、逮捕されたのである。

 4桁のナンバーはやはり事故車と同じものだった。

 事故当時、現場に落ちていた車の破片も一致したという。

 これにて、ひき逃げ事件は全て解決した。



 それから、大型スーパーの3階で女子高生の幽霊が見られるという噂もなくなったという。


 また、これも後にわかったことだが、春が刺された際にタイミングよく駆けつけた警備員2人は、立入禁止区域である3階への階段を駆けていく女子高生の姿が見えたので、引き止めようとして追いかけた先で、ナイフを持った長谷川と倒れた春に出くわしたのだという。

 つまり、夏姫が警備員を連れてきてくれたのだ。



 春は学校からの帰り道に、また大型スーパーの前の通りに自転車を止め、3階のゲームセンターが入っていた位置を見上げていた。



 刺されたみぞおちの傷は大したことはなかった。

 しかし、もし間にぬいぐるみが挟まってなかったら、刃先は確実に内臓まで達していたらしく、今頃はこの世にいなかったかもしれないと担当した医者に言われた。



 春の命を救った猫のぬいぐるみは、彼の部屋の机の上に飾られている。

 ぬいぐるみのお腹の部分には綺麗な縫い目が入っていた。



 春はぬいぐるみを、夏姫の飼っている猫に逢わせてやりたいと思っていた。しかし、夏姫の住所も電話番号も、彼女の身辺についてのことはなにも知らないのだ。



 夏姫の家に行く手段がなかったそんな時、ある女性が春の自宅に訪れた。

 二十代半ばと思われるその女性は、夏姫の姉だった。彼女はお見舞いに来てくれたのだ。



 夏姫の姉に、ぬいぐるみと猫を会わせてあげたいという話をすると、彼女は春を早速家まで案内した。

 そして、ぬいぐるみは遂に夏姫の飼っていた猫と対面できたのである。



 猫の名はアキという。

 アキはぬいぐるみと瓜二つと言っていいほどそっくりだった。

 アキはぬいぐるみが気に入ったようで、ぬいぐるみの傍から一向に離れようとはしなかった。

 だから、春はぬいぐるみを置いていこうとしたが、



「それは夏姫があなたにプレゼントしたものでしょう? だから、あなたが持っていて下さい」



 夏姫の姉にそう勧められたのである。

 その時に、夏姫の姉がぬいぐるみの傷口を縫ってくれたのだ。



「またいつでもいいので、アキのためにぬいぐるみを持ってきてあげて下さい」



 帰り際、春はそう言われた。



 そしてぬいぐるみは、今もって春の部屋に飾ってあるのである。



 春は見上げていた建物から視線を下ろすと、自転車のペダルに足をかけ、通りを駆けぬけていった。



 春は心に誓ったのである。



 彼女の分まで長く生きよう。例えどんな壁や苦しみが立ちはだかったとしても、それを突き破れるくらいに強い人間になろう、と。 ・・・

 最後がちゃんとまとまってるかどうかが不安ですが、なんとか完結させることができました。

 ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m

 「読んだよ」という報告だけでも構わないので、感想をいただけると嬉しいです。

 ただ、誹謗中傷は勘弁願います

 また、誤字脱字、矛盾点、言葉の意味を取り違えているなどなど、おかしな部分があれば報告下さい。


 今回は暗い話だったので、次は明るい目の話を投稿しようと考えています。

 いつ投稿するかは未定ですが・・・。

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