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三人組[ターゲット]中編

「よし、上手く気絶しているな」

 カグツチは倒れたスキンヘッドの呼吸を確認、気絶していることを確認すると、ポケットから取り出したワイヤーで両手両足を縛り上げ、拘束する。

「な、なんなの? その人死んでるの?」

 主婦が震える声で尋ねる。

「……死んでる人間を縛る必要があるか?」

 主婦の拘束を解き、リビングで大人しくするように指示を出す。


 ウベルリの仮面を懐にしまい、次は二階にいる残り二名を片付けるために階段を上がった。

 音を立てず、慎重に上がった二階、階段正面の寝室のドアが開け放たれている。そこからはこちらに背を向け、一心不乱にタンスをあさる金髪の男がいた。背後から確認するに、仮面を着けていない普通の男のほうだ。

 どうやら仕事に没頭すると周りが見えなくなるタイプのようである。職人ならいいかもしれないが、強盗では致命的だ。

 すぐ後ろまで近寄る。

「オイッ」

「ああ? なんだよ」

 振り向いた男の顔がカグツチの凶相を見る。驚愕の表情を浮かべるより早く、

「ウブォッ!」

 左でボディ、右で側頭部にフックを打ち込み意識を飛ばす。


「あと一人か……」

 これで最後の一人、バラシ屋を仕留めれば終わりだ。面無しの男を縛り上げようと手を伸ばす。が、

「キャアアアッ!」

 下の階から女性の悲鳴が響く。

――…しまった!

 先程人質になっていた主婦の声だ。慌てて階段を下りる。


 玄関を背に、廊下に細身の男がいた。複数の金属片を組み合わせたような歪な仮面をつけ、先程の主婦の首を後ろから押さえつけている。

――突入の寸前に下の階に降りていたのか!

 恐らく、カグツチが侵入する直前に散策する部屋を二階から一階の部屋に変えたのだ。

「貴様、手を離せ!」

 距離を詰めるカグツチ、しかしバラシ屋は主婦を盾にする。身体能力の上昇は全ての仮面共通だ。主婦の首をへし折るだけの腕力があの男にはある。

「お前は一体なんなんだよ、ドクロ野郎! お前もメンジンか!?」

「死神、とでも言えば納得するか? ……貴様らのように考えなく悪をなす仮面使いが、表沙汰にならないのは何故か、お前は考えた事も無いのか?」

 緩慢に、しかし確実にバラシ屋との距離を近づける。

「そういった輩を裏側で片付ける存在がいるんだよ。この俺のようにな」

 異能の力があり、それを制御する術があるなら、確実に一部の人間はその異能を犯罪に使う。やむを得ない場合も、やむを得る場合もその内に含みながら。

 カグツチの発する圧力に押され、男は悲鳴をあげる。

「ひ、ひぃ、来るな、来るんじゃねぇ!」

 廊下に備え付けられた電話機を片手で持ち上げ、コードを引きちぎりながらカグツチへと投げつけた。

 バラシ屋の能力が発動した電話機が、空中で回転しながら分解、部品を散弾のごとくカグツチ目掛けバラまく。

「無駄だ!」

 カグツチは『破壊』の能力を発動させた右腕を振るい、部品を分解、無力化させた。粒子化した部品がきらめきながら舞い散る。

「なっ! お前の力… 壊す能力なのか?」

 完全な不利を悟り、主婦を引きずって玄関を目指す。

「来るな! こっちに来るなガイコツ!」

「チッ…」

 機関員に家を包囲させるよう、小型無線でバベルと連絡を取る。しかし、


『おい? 聞こえるか?』

『だから……もしもし? もしもし?』


 どうやら他と会話をしているらしく、こちらの呼びかけに応えない。

――チッ、よりによってこんな時に、あの小娘は!


 膠着する空気、だがそれを打ち壊すようにドアの外から声が響く。

「あのー、何かあったんですか?」

 人の良さそうな若い男の声が投げかけられる。ドア越しに大声を聞きつけた誰かが立っているようだ。ドアの鍵は強盗の際にバラシ屋が壊してしまっている。

「ウルセェッ! なんでもねぇよ! 入ってくんな!」

 必死に止めるバラシ屋。

「助けてぇ!、助けて下さい!」

 必死に叫ぶ主婦。

「あー、別に何でもないから大丈夫だ!」

 これ以上目撃者を出すと収集が付けにくくなるため、仕方なくカグツチも止めに入る。

 その時突然、バベルから送信が入った。男に注意を払いながら、応答を返す。


『おい、さっきは何故出なかった?』

『それどころじゃないぞ神木! 周囲の監視をしている機関員全員から応答が途絶えた! 生体反応があるから気絶しているだけみたいだがな。先程端末から例のロクショウに近い人物を見かけた。かなり近くにいるぞ! 応援は呼んだから、急いで合流して……』

 カグツチは最後まで言葉を聞かなかった。

 ドアがX字に切り裂かれ、蹴り割られる。飛びちる破片、差し込む昼の光、そして、それを遮るように独りの男が立っていた。

 ジーンズ、Tシャツ長袖の上着、今時の若者らしい涼やかな夏服。そして全てを断ち切るように研ぎ澄まされた雰囲気をまとっている。

 顔にはメンジンの証たる仮面、複数の刃を組み合わせて形作られた刃の仮面がそびえていた。

 カグツチは知っている。その仮面の名を。この国に置いて最古のドラゴンスレイヤーとされる刃の名を。

 

『近くじゃない、目の前にいる。ロクショウだ、トツカノツルギ使いのな』

 カグツチはバベルに通信を返した。

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