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三人組[ターゲット]中編二

 刃のメンジン、トツカノツルギの左右の掌から白刃が生えていた。

 四十センチ程の刃渡り、極限の輝きを放つ刃をだらりと下げている。


「あ、? な、なんだ?」


 もはや状況が理解出来ず、呆然とするバラシ屋、彼に対して脱走者は極めて迅速な行動を取る。


 一瞬で懐に飛び込むと、最小限の動きで刃を主婦を押さえ込む左手に一閃した。

「……へっ?」

 何が起こったか理解出来ず、左手に走る熱に気づき、そこを見る。

 床に落ちた、掌の真ん中から切断された、手。四本の指が着いている。

 男の左手には親指のみ付いた半分だけの掌が残されていた。

「あっ、ああ! 手、俺の手!」

 遅れて迸る出血、反射的に自らの一部を拾おうと主婦を押しのけしゃがむバラシ屋、その無防備な後頭部に高く掲げられたトツカノツルギのカカトが振り下ろされる。

 ミシッ!

 カカトがめり込み、バラシ屋は声も出さず昏倒。

「い、いや! もういやぁぁ!」

 おそらく現在日本で最も不幸な人間、主婦が泣きながらカグツチの方向へ逃げる。

「おい、落ち着け…」

 抱き止めようと手を広げるが、

「ひいいっ! 触らないで!」

 そのままカグツチを素通りし、リビングへ逃げ込んだ。

――……ちょっとヒドくないか? 

 気を取り直し、改めてトツカノツルギを観察。素早い挙動と両手の白刃、あれは、

――神器[ジンギ]、やはり能力の成長が起こっているのか。

 神器とは仮面の成長によって発生する道具である。多くは武器の形態を取り、仮面の特殊能力の補助や強化などの役割を担う。

 神器を持つということは、メンジンとしてのキャリアと能力の成長を示しているのだ。

 トツカノツルギの能力は両手の手刀による切断。おそらくあの白刃は射程距離の延長を担っている。


「……お前がロクショウか?」

 どう見ても、茜木から渡されたデータに乗っていた仮面その物だ。しかしカグツチはあえて会話をする。時間を稼ぐことで、応援を間に合わすためだ。

「…………」

 肯定の返事として、無言のままトツカノツルギは構えを取る。

 右足を前、左足を後ろに下げ重心を掛けた。

 左刃を中段、右刃を上段に構え、冷ややかな殺気を放つ。


――後の先の構えか……

 更に足はジリジリと後退させている。

 先手にはカウンターを斬り込ませ、時間を掛ければ逃走の距離を稼げる二段構えの策。

――なるほど、冷静だ。


 トツカノツルギとカグツチの距離は約五メートル程。カグツチはまず間合いを計るため、無防備に腕をだらりと下げ、大きく歩を進める。

 一歩、トツカノツルギはまだ動かない。

 二歩、ピクリ、と左刃が僅かに振れた。

 そして三歩目、カグツチは背をかがめ、急激に踏み込む。フェイントと様子見として右ジャブを浅く打ち込む。

 即座に反応したトツカノツルギは、拳を切り裂くべく左右の刃で連撃を仕掛けた。しかし、浅めの打ち込みと速い腕の戻りにより、間一髪の間隔で宙をなぐ。

――やはり反応が速いな、このガキ。

 ここでトツカノツルギも踏み込む。右の刃による袈裟切りの斬撃を繰り出した。

――まだ遠いなッ!

 カグツチはこれをガードせず、上半身を仰け反らせたスウェーと一歩左足を後退させ回避。そのまま後ろに飛び、再び距離を取る。


 

――おっと、

 ふと、カグツチは自らの左肩を見た。

――……チッ、

 肩が僅かに切り裂かれている。外側の戦闘服、内側の対刃繊維のシャツを抜け、地肌が覗く。

「ここまでは……警告だ……」

 静かに、しかし緊張感を持ってトツカノツルギが語りかける。

「引かなければ……次は……生身を……」

 それは、その少年はすでに刃と化している。刃を振るう人ではなく、少年の形をした切断する存在。故に、

「斬るッ」

 その言葉は、確固とした出来うる現実を差す。

「……躾がいいのか悪いのかわからんボウズだな。いいだろう。貴様の性根、叩き壊す」

 しかしカグツチもまた、引く事は無い。

 破壊することにかけては、その言葉が過つことはないからだ。

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