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8-3 未来

訓練棟を出た後、赤騎隊の訓練を見に行った。


護紅隊も合同で訓練を行っているらしい。

相変わらず、ティエラとラヴィス、イオリアの騎乗は見事だ。

暫くすると休憩になった。

俺を見つけたラヴィスが馬を寄せる。

「どうしたんだ?何かあったのか?」

「いや、ラヴィスの顔を見に来たんだ。な~んつってな!」

「お前、また殴るぞ」

「やめて。痛いから。ティエラのはもっと痛いけどな」

「ははは、確かにあれは痛そうだった」

珍しく馬上のラヴィスが頬を緩ませる。

「何が痛いと?」

ラヴィスは馬上で背筋を ぴんっ と伸ばす。

「あ、ティエラ、ちょうど良かった。ちょっと話があるんだ」

「何だというのだ」

「アイシャとエルファなんだが、あいつらを戦場に出すのか?」

「行かせるつもりはない」

「そうか。訓練があまりに順調らしいんで、逆に心配になってな。済まないな、こんな事訊いて」

「いや、良いのだ。しかし、あの者達の将来を考えると選択肢の一つとして訓練はしておいた方が良いだろう。才能や能力があるのだからな」


イオリアが悪戯っぽく微笑んで口を開く。

「アイシャは突撃大隊の中隊長になりたいらしいのです」

「そりゃ無理な相談だなぁ」

「どうやらエルファが突撃大隊に入ったのを聞いて、自分もと考えているらしいのだ」

「丁度その件で相談があるんだ。エルファを赤騎隊か護紅隊に入れてもらえないかな」


「クラト、それは色々とあってな・・・」

ティエラはやや俯いた。

「クラト殿、エルファはバルカに帰順したとはいえ、元クエーシトのエナルダです。姫の部隊や護衛の部隊に入隊させる訳にはいきません。本来なら突撃大隊への入隊も認められないのですが、姫のお言葉添えがあって今の編成になっているのです」

「そうか」

「済まぬな」

「いや、俺が知らないところで気を遣ってもらってたんだな。こちらこそ済まなかった」

「しかし、突然エルファの所属の話とは・・・まさかカポルの件でも再燃したのか?」

ラヴィスが言うとティエラも伏せていた顔を上げた。


「いや、それは無いよ。それっぽい話すら出てこないし」

「ただ、あの格好だしなぁ。子供っぽくて何かと馴れ馴れしかったりするし、ちょっと支障が出そうなんだよな」

「それを指導するのもクラト殿の任務ではないのですか?」

イオリアはピシリと言う。

「確かにイオリアの言う通りだ」

「イオリア、ありがとう。ダメな所を言ってもらえると助かるよ」


クラトは帰っていった。


◇*◇*◇*◇*◇


「あの方はいつも自然体ですね。変な力が入っていないというか、不思議な魅力がありますね」

「そ、そうか?イオリアはあのような男が好みなのか?」

「確かに甘いところはありますけど、暖かさの裏返しともとれますし、例の暴走癖を見れば甘いだけとは思えません。変に格好をつけたり、えらぶるところもありませんし」「何にせよ、この世界では見かけないタイプですよ」

「ほ、ほう、その様なものか?」

「でも、私はもっとクールな方が好みなもので・・・」


そんなところにアイシャが駆け込んでくる。

「クラトが来てる?」

「こら、“来ていますか?”でしょ、それにあなたがクラト殿を呼ぶなら、様か隊長をつけなさい」

「はーい・・・」

「クラト殿は帰りましたよ」

「えぇ~」

「ちょっと寄られただけなのです。でも、あなたの事を気にされていましたよ。大事にして欲しいと仰ってましたよ」

「ホント?」

「えぇ、本当ですとも」

「私、突撃大隊に入りたい。クラトの役に立ちたい」

「その為に訓練をしているのでしょう?あなたはまだまだです。もっと頑張らねばなりません。礼儀作法もですよ」

「はい。わかりました」

「よろしい。では休憩の後は馬の手入れをしてから、剣術の訓練をしましょう」

「はーい」

アイシャは厩舎へ走っていった。


「うーむ、イオリアはアイシャの扱いが上手いな」

「アイシャの才能は、将来において有益です。大事に育てたいと思ってます」


イオリアはアイシャを赤騎隊の分隊長か護紅隊の隊員にさせたいと思っているようだ。

ラヴィスもティエラも同じ事を考えていた。

しかし、後にアイシャはバルカ初の夜間部隊 “銀狼隊”を率いる事になる。

ただ、それはまだまだ先の事であった。


未来とは誰も知らないにも係わらず、誰もが思いを巡らすものだ。

未来とは思い通りにはならないが、それが不幸であるとは限らない。

そして、思い通りになる事が幸福であるとも限らない。


未来とは誰にも分らない。

何が起きるのかもどうなるのかも。

そして、いつまで続くのかも。


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