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4-9 装備

早速、武具の担当者から説明を受けて欲しいものを申請する事となった。

ルシルヴァと相談して、武器は剣×1、刀×1、ボウガン×2、鎧は軽装鎧の前面を強化した突撃用鎧とした。


バルカの鎧は3種類。通常鎧、軽装鎧、重装鎧。

鎧は革と金属プレート、木材、樹脂などで作られ、樹脂で固めた部分は強い打撃を受けると砕けてしまう。

だから、良い鎧ほど樹脂は使わないし、軽装鎧は樹脂が多い。

この世界の鎧は中世ヨーロッパのプレートメイルのように全身を覆うものではない。

機動力を低下させないように可動部の内側は装甲を施さない。

つまり、脇、股、肘や膝の裏、の装甲は無い。

重装甲であろうと、ここが弱点となる。兜と鎧の隙間もそうだ。

それを防御する為に日本兜でいう“しろこ”を付けたり、鎧の下に鎖帷子くさりかたびらを付けたりする。


鎧は基本的に胸部、腹部、腰部、腕、足のパーツに分かれている。

胸部は肩からみぞおち、腹部は臍の下までで、胸部と腹部は連結して使用する。

腰部は6~8枚の装甲板からなるスカートタイプでベルトで固定。

腕は前腕に篭手、上腕は外側のみの装甲。

脚部は大腿部が外側のみ、膝下は脛当てと野球のフットガードのような足の甲までカバーしている。

高機動のエナルダやマスエナルを装着する場合、全体の装甲を厚くする事が可能だ。

俺が始めてジュノと出会った時に装着した鎧は軽装鎧だ。胸部と腹部が一体化し、手には篭手のみ、足も脛当てのみ。


通常鎧と重装鎧はほぼ同じで違いは装甲の厚さだ。

特に重装鎧の基準はボウガンで撃ち抜かれない装甲を最低でも胸部と腹部に施したものだ。


鎧の下にはゆったりとしたカーゴパンツのようなものと、同じくゆったりとしたシャツだ。

赤騎隊は鎧の下に真っ白な鎧下を着用しており、赤と白のコントラストにこだわっている。


そして兜だが、俺は思いもよらないものを見た。


バルカ軍の兜は何種類かあるが、全てバイクのヘルメットに似ているのだ。

一般兵士用の兜はAraiのMZ。首の後ろが少し広くなっているが、よく似ている。

ギルモア国の兵士がつけていた、ハーフヘルメットのような兜に比べて優れている事は一目で分る。

後頭部や頬まで防護されているし、戦闘時もずれたりしないだろう。

形的には戦国時代の頭形兜ずなりかぶとに近いだろうか。

手に取ってみると、金属のプレートと革で出来ているようだ。


騎士用の兜は一般兵士用の兜に可動バイザーが追加され、首を守る3枚のプレートが日本の兜の“しろこ”のように取り付けてある。特徴は大きなバイザーだ。

格子状のバイザーは中世ヨーロッパの騎士を思わせるような形状で、バイザーを引き上げると、ホンダのJT1Aのような形状になる。

ホーカーはバイザーが日除けになると言って、長弓隊はこれを使用する事になった。


更に突撃部隊用として特殊な兜がある。

こちらはGPAのブラック・マットにそっくりだ。

バルカの兜を作った奴は地球から迷い込んだヤツじゃないのか?そう思いたくなった。


正面からの打撃を防御するために額の部分に肉厚の革を貼り、更にその上を金属のプレートで覆っている。

赤騎馬隊はこれを使っているらしい。

元々は口許もガードする形状だったらしいが、ティエラ姫が口許を“見える”ように外させたらしい。

赤騎馬隊は戦場に出る際、全員が化粧をするというのだ。

肌を白く、唇には真っ赤な紅を差す。

それを敵に見せるというのだ。

一つの心理的効果があるのかもしれないが、俺には理解できない。


突撃の戦法が多くなる俺の部隊にも突撃用のものを要求したが、一般兵士用ではないとして却下された。

さすがに姫の部隊は特別なのだろう。

グダグダ言っても始まらないので、一般兵士用兜の後頭部に3枚の金属プレートを取り付けるように依頼した。

士官用の兜には色々と飾りが付いている。

特に軍団長や師団長になると直接戦闘に加わる機会は少ないので、機能よりも見た目が重視される。

俺も好きなものを作って良いと言われた。

大隊規模とは言え、ティエラ姫の直属となる突撃隊の隊長ともなると何かと待遇も良いようだ。


将軍達の兜を見せてもらったが、動物の角やら竜獣ベナプトルのとう頭骨などで装飾され、なかなか雰囲気を出している。

ジュノは羽根を両サイドに立ててシンプルながら、なかなか格好が良い。

でも、俺は面倒なので兵士用と同じものを使う事にした。


その日の夜、軍事府の武具担当者が青い顔をして俺の所へ飛んできた。

最初の要望どおり、全員に突撃用兜を支給するという。

3日以内と命令されたが、とても200以上を揃えるのは無理だと言って泣きそうな顔をしている。

聞くところによると、姫から直接軍事大臣へ苦情がいったらしい。しかもかなりの勢いで。


いつ出来るか聞くと10日は掛かるという。

それで構わないと答えると、急に驚いた顔をして、何とか7日で準備すると言った。

コイツ・・・7日で出来るものを10日と答えたのか。

期間短縮を求められても対応できるように余裕を持って返答したのだろう。

自分から7日に変えた理由は聞く人間が聞けば7日は妥当だと分るからだろう。

俺は武具の担当者見据えて低い声で言った。

「いいか。これからは俺に交渉をうつのはやめろ」

「お前が作って俺が戦う。どちらも懸命にやらなければ戦は負ける」

「無理が必要な時には無理をしてもらう。今回は7日でやってくれ」


担当者は複雑な顔をしていたが、低頭して感謝の言葉を口にした。

しかしそのまま佇んでいる。

全く、面倒なヤツだ。

「突撃訓練を行うのは8日後だ。兜はそれまでに揃えてくれればいい。その代わりに、他の仕事も手抜かりするなと言われたと伝えてくれ。姫には俺から言っておく」

それだけ言うと平伏して去っていった。


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