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3-13 護送

「報酬は行き渡ったか?」

「あの、包みが一つ多いのですが」

ジュノがたずねると、バイカルノは面倒臭そうに「クラトの分だ」と言った。

報酬はかなりの額だった。

ホーカーは目を丸くして口も利けない。何を運んだというのだろう。


ここはクエーシトとギルモアの国境の街。

仕事を終えて、バイカルノは得た報酬の分配を行った。


「この後、席を設けてある。今後の話があるから、今回の商隊に参加しなかったメンバーも全員呼んである。お前らも全員参加してくれ」

皆、一風呂浴びて宴席に向かうらしく、ガヤガヤと楽しそうに出て行った。


ジュノとホーカー、ランクスとバイカルノが残った。

バイカルノは「お前らも必ず来いよ」と言って腰を上げた。

「分りました」とジュノが答えると、バイカルノは出て行き、ランクスも続いた。


ジュノとホーカーが通りに出ると、バイカルノが腕を組んで立っていた。遠くを見ている。

明らかにジュノ達を待っていたようだ。

ジュノは並んで話しかけた「何かお話でも?」

「ジュノ、とある郷から軍団長をやって欲しいと依頼があったらどうする?」

「何ですか突然。武人にとって軍団長は夢ですからね。それは指揮を執ってみたいですが、やはり良い国や郷に仕えたいという気持ちが強いです」

「なに言ってんだ?良い国ってなんだ?お前もクラトの毒を喰らったんじゃないのか?」

「クラトさんの話は止めましょう。いない人間の話は実が無い」

ホーカーは自分が口を挟むような事ではないので、遠くを見つめていた。

と、その口から言葉が漏れる。

「クラトさん・・・」

「ホーカー、お前がクラトさんに思い入れがあるのは分るけど、未練を残しては先に進めないよ」

「いや、クラトさんが・・・」

「いい加減にしな、ホーカー」バイカルノの苛立った声。


「やっぱりクラトさんだ、クラトさんがいますよ!」

「はぁ?お前、目が腐ってきたんじゃないのか?」

「あそこです、あそこです」

ホーカーが指差す先を見ると、1台の大型馬車が街道を横切るところだった。

その馬車は護送用の檻車かんしゃを引いており、確かにクラトが乗っている。その隣にはあの女首領もいる。

3人は駆け出した。ホーカーが立ちはだかって馬車を停めると、馬車の後方から護衛の騎馬が飛んでくる。

「我らはギルモア国パレント郷の内務府治安庁所属の護送班だ。クエーシト政府の許可も得ている」

どうやら、クエーシト警備兵から警戒されたと勘違いしているようだ。

バイカルノは進み出ると「隊長と話がしたい」実に重厚な態度と声だ。

護衛からどう聞いたものか、隊長は慌ててやってきた。

「そなたが隊長か、話がある」

それだけ言うとバイカルノはきびすを返して街中へ向かう。

隊長は部下に休憩を命じてバイカルノの後を追った。


◇*◇*◇*◇*◇


「捕らえられた者の中にグリファの者が居る。何かの手違いで囚われたのだろう。引き渡してもらいたい」

小太りの隊長はバイカルノに威圧されながらも、笑いを浮かべて断った。

「グリファの者が正式な裁判も無く罪人とされる事を我々グリファ国は絶対に許さない。後で正式に抗議する事になるが、今件はそなたの判断で拒否されたという事で良いな?」

隊長は突然大きくなった話に驚いて声も出ないようだ。

「もし、グリファとギルモアの外交問題になった場合はそなたが原因という事で良いのだな?」

護送隊長は青ざめている。

バイカルノは口調を和らげて言った。

「我らは外交で各国を渡っている身ゆえ、事は荒立てたくない。ついては隊長に費用を支払うから解放してもらいたい」

護送隊長はまだ迷っているようだ。

「囚人の護送では途中で死亡者が出る事もあるらしいな。ギルモアで死んだ事にすればよかろう」

隊長の目の前に金を積む。驚くほどの大金だ。

隊長の怯えた目は驚きの目に、そして欲望の目に変わっていった。

何か言おうとする隊長にバイカルノはけものの目で言った。

「我々はグリファ王直府の者だ。高レベルのエナルダを5名程連れている。貴様を含めて護送隊を消滅させる事も簡単なのだぞ。これ以上考えるな、これ以上望むな」

小太りの護送隊長は金を甲冑の中にしまい込むと、丁重にバイカルノを先導して檻車に向かう。部下たちを呼び、少し話をしていたが、やがて部下たちが檻車までバイカルノ達を誘導した。


思わずホーカーが声を漏らす。

「クラトさん!」

「おぉっ!?ホーカーとジュノじゃないかよ!なんだよバイカーもいるのか」

「ふざけるなよ!いつも手間を掛けさせやがって!さっさと出ろ!」

護送隊員が鎖を外す。クラトに促されてルシルヴァの鎖も外す。

「その女の話は聞いていない!」

隊長が高い声で言うと、ホーカーは自分の報酬全てを隊長に握らせた。そして手に力を込め、隊長の手が砕ける寸前で離す。護送隊長はただ頷くだけだった。


小太りの隊長は護送隊をそそくさと出発させ、それは見送ったバイカルノはクラトをののしる。

「手間も時間も掛けて、今回は金も遣った!てめぇは疫病神だ。儲けが減ったぜ!」

「悪かったよ、今回はマジで」

いつも反発するクラトから素直に謝られると、バイカルノもきつくは言えなくなった。

「お前は俺に借りがあるんだからな!これからはバイカルノ様って呼ぶんだぞ!」

「へぇへぇ分りましたよ。バイカルノさま~」

一同は笑い、バイカルノは吠える。

「本当にお前は頭に来るぜ!」


バイカルノは心の中で更にののしった。

“クラトは誰彼構わず心に巣食う厄病神だ”

クラトを見て、ほっとしてしまった自分をののしっているのだ。


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