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3-4 襲撃

突然の護衛依頼。商隊の主がジュノに告げた“北の戦乱”

その後、ジュノの様子が少しおかしい。


ジュノは預けた馬を受取り、手綱を両手にして帰ってくると、やっと俺たちの顔を見た。

「すみません。今日はここで宿をとりましょう。相談があります」

少々ギクシャクした雰囲気だ。

「風呂ある?」

俺が聞くと、ジュノの硬い表情は少し緩んだ。

「ありますよ。では、さっぱりしてから相談といきますか」

「よしホーカー、風呂だ。着替えを買ってこようぜ」

「うれしいっス。暖かい風呂なんて久し振りです」

心配顔のホーカーも無邪気な笑顔に戻る。


◇*◇*◇*◇*◇


「彼等は武装です」

「ブソー?」

「武装商隊ですよ」

「あぁ、この前聞いたやつね」

「あの男が頭目でしょうね。商人なら主人しゅじんですが、武装商隊は頭目と呼んでいます。あの男は結構できそうですよ。一緒に居た2人も隙がありませんでした」

「ジュノがそういうなら結構なヤツ等なんだろう。で、どうするんだ?」

「普通なら断ります。ただ、あの男は北で戦が起きると言いました。ここから北に向かうとギルモア国に入ります。ギルモアは東にグリファ国のルーフェン郷とベルサ郷、北東にはクエーシト国と接しています」

「ここで戦乱が起きるとすると、ギルモア国が関係するのは間違いありません。国力に劣るクエーシトが自ら戦を起こすとは考えられませんし、近年国力を増しているグリファ国の侵攻戦と見るのが普通です。しかし、グリファ国は先のルーフェン殲滅戦で北西部の戦力は低下しているはずです。意外と力は拮抗しているのかもしれません。戦力の均衡が取れていればいるほど、小さい作用で戦が起きるものです」

「もしかするとクエーシトの傭兵部隊が重要な動きをするかもしれません」


「グリファが侵攻すると何か問題があるのか?」

「もしグリファ国の勢力が拡大すれば、私達の行き場が狭くなります。グリファが私達を武人として迎え入れる訳がないでしょう?」

「じゃ、何で北に向かうんだ?」

「戦場に立つ事が今後を見通す手段なのです。それにクエーシトが気になります」

「ジョシュ・ティラントか?」

「今後の戦を変えるとしたらクエーシトの技術です。詳しい情報が欲しい。できれば直に見ておきたいのです」

ジュノは俺の問いに直接は答えなかった。


「それに、戦があればこそ私達は力を発揮できるのですから」

このところジュノの柔いところばかりを見てきたので、違和感があるが、ジュノは武人なんだ。

そうだ、ジュノは戦いの中に生きる人種なのだ。

ルーフェンの近隣ではジュノの知名度は高い。あの商人の言っている事は正解だ。

後はどこの国、どこの郷に飛び込むかだな。


「護衛につくと、食は全て依頼主持ちですし、任務完了後に報酬が支払われますから、何も無い者にはもってこいの仕事なのです。まぁ命がけの仕事ですから腕に自信がないとやってられませんけど」

「ただ、何か引っかかるんですよね。あの男は」

「一言で言えば切れ者ですよ。しかも情に流されない。この世界で成功する種類の人間ですね」


「俺はどうでもイイぜ。ホーカーはどう思う?」

今まで意見を求められた事がなかったのだろう。ホーカーは困った顔をしている。

「えっと、お、俺は、決めてもらえれば何でもやります」

「じゃ、やろうか用心棒」

「はい。ではそうしましょう。ホーカー、新しい弓を仕上げておいた方がいいよ」

ホーカーはジュノの言葉遣いが変わってきている事に気付いたが、言ったジュノは気付いてない。


◇*◇*◇*◇*◇


ブォン!

ホーカーの長弓の音がする。

遠くで馬から人間が落ちる。ホーカーは遠距離から2人を射落し、もう1つの弓を手にした。

こちらは1.5mくらいで2本の弦がある。ホーカーの連射によって絶え間なく矢を射続ける。

ホーカーは親指と人差し指、薬指と小指でそれぞれ矢をつがえている。

同時に2本の矢を射れるが、ホーカー曰く、本来の使い方とは違うらしい。


北を目指す商隊に対して森から飛び出してきた賊は、既に5人が射落された。

森までが近かったせいで、ホーカーの長弓を使う時間はあまり無かった。

まだ30人以上いるだろうか。怯む様子は全く見せず、突っ込んでくる。

ジュノは静かに足を前に進める。

横ではホーカーが震えだした。接近戦になるとからきしだ。

俺は荷馬車にベタ付きで荷を守る事になっている。


俺たちは武装商隊から甲冑と武器の配給を受けていた。

今日のジュノはフル武装だ。背には剣、両腰には刀、右手に槍、左手に3連ボウガン。

軍用の3連ボウガンを持たせるあたり、確かにこの武装商隊はただ者ではないようだ。

ジュノの足の動きは徐々に速くなりついには駆け出した。

ボウガンを3連射して投げ捨てるや、馬上の賊を槍に掛け、撥ね上げる。

剣で馬の脚を払い、落ちた賊に留めを刺す。

奪った馬に乗ると、左手は刀を逆手に持って防御し手綱を操る。右手で刀を振るう。

ジュノは刀を軽く振るう。相手の首が赤く染まり次々と落馬していく。

右肩から先を血で真っ赤にして走り回るジュノは別な生物に見えた。


商隊の護衛は俺たち3人と商隊自前の5人の8人だ。ジュノと昨日酒場に居た2人、たった3人で30人以上の賊を抑えている。

「コイツら只者じゃねぇな。凄すぎる」


賊の荷馬車を追う速度が落ちた。それまで賊を追っていたジュノ達は、今度は賊から離れるように動く。

各個が包囲されるのを避けたのだ。

この賊はかなり高度に組織化されている戦闘部隊だ。

数も中隊規模以上だし騎馬の数も多い。つまり資金と場所を持っているという事だ。


街道の左には低い崖が壁のように連なっている。うねるように続く崖に沿って荷馬車は走る。

荷馬車は賊を右後方に見ながら進むと、前方に馬車が見えた。

「5~6人、子供も乗ってます!」目の良いホーカーが報告する。

「あの馬車に近づくな!」

武装商隊の頭目、バイカルノ・ブレントは馬車を操る御者に怒鳴った。

御者は速度を落として進路をとった。右から10人程度の賊が迫っている。

後方に目を向けると賊は5~6人、3つの隊に分かれ、護衛2人とジュノを牽制している。こうなるとジュノ達は迂闊に動けない。

荷馬車に取り付く賊を追うと後方から攻撃を受ける。

いくら腕が立つといっても後方から6人に囲まれてはひとたまりも無い。

バイカルノは護衛の1人を新たにジュノ達の戦う場所に送り出した。


突然、前方の馬車が狂ったように速度を上げた。

賊が商隊を襲っている事に気付いたのだろう。

そこへ賊の数人が先行して矢を射る。

馬車は急に左にそれて崖にぶつかるようにして停まる。

前方も抑えられた。

バイカルノは荷馬車を左の崖をうねった場所に停めるように御者に指示をする。


「ホーカー、弓で迎え撃て。俺とクラトは荷を守る。アレクトロとグラッサーは突っ込んですぐに戻れ。ボウガンで援護する」

御者と従者も戦うようで刀を手にしている。

バイカルノはボウガン越しに振り向いて言った。

「俺達は武装商隊だ。この仕事を終わらせて莫大な報酬を得るんだ。それに、俺達が運んでるのは荷物だけじゃねぇぞ!わかったな!」

それが合図かのようにホーカーが2本弦の弓を乱射する。近づく賊にアレクトロとグラッサーが突っ込み、槍で馬上の賊と斬り結んでいる。

バイカルノのボウガンとホーカーの弓が敵を確実に倒していく。

馬車に戻ろうとしたアレクトロが背後から討たれる。

血飛沫が舞う。


俺は震えていた。怖い。単純に怖い。

ラヴェン02と戦った時には何も感じなかったのに。

動かない。身体が。

剣の柄に両手が貼り付いたようになっている。


展開が早い。

実際の戦闘は、始まったら状況を見る余裕など無かった。

俺は何をしたら良いか分らず、ただ全身を強張らせているだけだった。


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