ごめんなさい、ヒロインさん。どうしてこうなったのか私にも分かりません!番外編〜ヒロインからの手紙〜
本編を読まなくても分かるように書いたつもりです。
1,900文字程度の短編です。
さらっとお読み下さい。
よろしくお願いします。
私が乙女ゲーム『鳥籠の乙女〜貴方に囚われて〜』の悪役令嬢ベルローズ・バルガラルドに転生している事に気付いたのは、王太子と婚約者候補の顔合わせの茶会だった。
攻略対象は油断するとすぐヤンデレ化する、とんでもないゲームだった。
前世の記憶を思い出した私は、断罪を回避する為に王太子以外の人と結婚する事に。
手近な所で探したら、私の護衛騎士のジークが優良物件で。記憶が戻る前のベルローズもジークに仄かな恋心を持っていたから、これはもう行くしかないよね!って事で行動を起こしたら、まさかのジークからの溺愛。
そのジークは隠しキャラで隣国の公爵家の息子だった。ヒロインさん曰く、攻略対象の中で一番束縛の少ないキャラだったらしい。
転生者だったヒロインさんは、攻略もしていないのに、ヤンデレ化した王太子に付きまとわれて困っていたので国外へ逃亡するのを手助けした。
それが三年近く前の事。
私は無事断罪を回避しジークと結婚して、ベルローズ・シュタイン公爵夫人になっている。
ある天気の良い昼下がりの事。
「ベル、君に手紙が届いているぞ」
「あら、誰からかしら?差出人はクルミ・フォルカー、知らない名前ね」
そっと封を切って手紙を読んでみる。
「あら、日本語だわ」
手紙の文面は懐かしい日本語で書かれていた。
〜〜〜 ◇ 〜 ◇ 〜 ◇ 〜〜〜
こんにちは、ベルローズ様。
お元気ですか?
私、乙女ゲーム『鳥籠の乙女』のヒロインです。
あの時は助けてくれてありがとうございました。私は今、故国から三つ国を跨いだランカルカ中立国にいます。
あれから色々あったんですよ。私ってゲームのヒロインだけあって可愛いじゃないですか?だから、何度も人買いに連れて行かれそうになったんですよ。
そんな時、ベルローズ様がくれた家紋入りのブローチ、あれが役に立ちました。あれを見せると大抵の人は引き下がってくれたんです。
時代劇のアレみたいだなって思ったわ。
他所の国の人達にも、そんなに恐れられているベルローズさんちって、どうなのって思うけど本当に助かりました、ありがとう。
私は今ランカルカ中立国で八百屋の女将さんやってます。そうです、結婚したんですよ。
夫は優しくて、全然ヤンデレから遠い人です。私がこの国に着いて市場を散策していた時に、お客さんとの釣り銭のやりとりで揉めていたのが夫です。
彼は計算が苦手で。私は前世で親に習わされてたソロバンで暗算が得意だったから、割り込んで計算してあげたの。そしたら彼が感激して是非店で働いて欲しいって。
それで店で働くようになって、店の二階に部屋も貸してくれて。
彼は攻略対象達みたいにイケメンでも無ければ、お金持ちでも無いけど。
でも、いつも一緒の時間を過ごす内に、彼の優しさに惹かれていきました。
告白は彼からしてくれたんだよ。『僕甲斐性ないから安い指輪でごめん、ずっと側にいて欲しい、結婚してくれ』って。私、凄く嬉しかったんだ。嬉し過ぎて泣いちゃった。
それで、二年お付き合いして半年前に籍を入れました。結婚式とかするお金無いから入籍だけだったけど。そしたら、この国で友達になった人達がお祝いパーティーしてくれたんだよ。
もう少ししたら、私もお母さんです。ベルローズ様はきっとジーク様の激重愛で沢山子供がいるんでしょうね…。
もし、ランカルカ中立国に来ることがあったら、ナンナ街のフォルカー八百屋店に来てよ。お安くするからいっぱい買ってね。
ベルローズ様、私の事ヒロイン、ヒロインって呼んでましたけど、私にも名前あるんですよ。
今はクルミ・フォルカーって名乗ってます。クルミは前世の名前なんです。鳥乙のデフォルト名だとアイリスですよ。
私の性格的に、アイリスって名前じゃないでしょ?
私、今幸せだよ。
ベルローズ様は幸せ?
ベルローズ様に会いたいです。
また手紙書きますね。
クルミ・フォルカー
〜〜〜 ◇ 〜 ◇ 〜 ◇ 〜〜〜
「誰からだった?」
「ほら、ジーク覚えてない?国外に逃げるのを手助けした、あのヒロインさん。彼女からの手紙よ」
「…覚えてない」
「貴方は私以外に興味無いんだったわね。彼女、今ランカルカ中立国にいるそうよ。結婚もして幸せそうだわ」
ソファに座っている私をジークが後から抱き込む。
「そう言うベルは幸せ?」
「あら、私が幸せじゃないなんてあり得なくてよ。貴方が側にいてくれるんですもの。それで貴方はどうなの?」
ジークが、私の髪や頬にキスを落とし始める。
「俺はベルさえいてくれれば幸せだ」
「私もよ。ジーク好きよ」
「俺もだ」
クルミさんにお返事を書きましょうか。私も久しぶりに日本語で文字を綴るわ。
私達は乙女ゲームに転生したけれど、ストーリーに沿った生き方でなくとも幸せは掴み取れる。私はそう確信していると。
Fin
最後まで読んで頂きありがとうございます。




