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「契約の絆」――奴隷商人から解放された少女たちが、俺の『約束』で世界を変える  作者: 悠々


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第63話 古い魔力の遺跡調査

瓦礫の中で目覚めたアルトは、首に冷たい鉄の感触を覚えた。エミリアの魔力で作られた拘束具が、首から胸部にかけて巻きついている。動こうとすれば、その瞬間に破壊される仕掛けだ。


「目が覚めたようだね」


エミリアの声が聞こえた。地下室の奥から歩み寄る姿が見える。彼女の黒い鎧は古い文明の遺物で、その表面には無数の契約紋が刻まれていた。


「セリアは?」


アルトは声を絞り出した。約束の鎖ネットワークを通じて、セリアの意識を探ろうとするが、何かが邪魔をしている。エミリアが意図的に遮断しているのだろう。


「安全な場所にいる。彼女には債務がある」


エミリアがそう言った時、地下室の壁が一部崩れた。外からの光が差し込み、同時に複数の魔力反応がアルトに伝わってくる。リリア、ニナ、シャーロット、そしてセリアの意識が、約束の鎖を通じてはっきりと繋がった。


「応援か」


エミリアが薄く笑う。彼女は拘束具を強化し、アルトを完全に動けなくした。


「君は選択肢を与えられている。シンプルな二つだ。契約者としての力を放棄するか。それとも、破壊されるか」


「それは選択肢じゃない」


アルトは言った。複数の約束の鎖が彼の身体を通じて激しく共鳴している。リリアの決意、ニナの怒り、シャーロットの悔しさ、そしてセリアの執念が、波状で押し寄せてくる。


その時だ。地下室の天井に穴が開き、緑色の光が降り注いだ。ニナの獣人戦士たちが、上層から侵入してきたのだ。同時に、別の方向から銀色の魔力が注ぎ込まれた。シャーロットだ。


エミリアが溜息をついた。


「まだ自覚していないのか。君たちはシステムの管理下にある。逆らえば逆らうほど、君たちは強くなる。その矛盾こそが、過去の六人の契約者を破壊した」


「それなら」


アルトは言った。約束の鎖ネットワークを通じて、四人に同時に声を届ける。


「逆らい続けよう」


その言葉と同時に、アルトの身体から金色の光が放射された。エミリアの拘束具が軋む。彼女は驚いた表情を見せた。


「契約反転か。自分の力を相手の利益のために使う。だが代償として——」


「構わない。約束の鎖ネットワーク。統合形態」


アルトが宣言した瞬間、地下室全体が光に包まれた。リリア、ニナ、シャーロット、セリアの四人の力が一つに統合される。複数の約束が矛盾するはずなのに、その矛盾自体が力になった。自由意志の尊重と支援の約束。独立と連帯の約束。改革と安定の約束。知識追求と倫理の約束。


四つの矛盾した約束が相互に支え合い、強化される。


拘束具が砕け散った。


エミリアが一歩後退する。その瞬間、セリアが目覚めた。地下室の別の区画から、彼女は自力で現れた。眼鏡がずれ、顔に土がついているが、その目は確かに輝いている。


「システムは古い。でも完全ではない」


セリアが言った。アルトのもとに駆け寄り、手にした古い巻物を見せた。


「ここに記録がある。システムは千年以上前に造られたが、その後三度、修復と更新がされている。最後の更新は五百年前。エミリアの時代に」


エミリアの表情が硬くなった。


「それ以来、システムは完全な同期を失っている。つまり、古い魔力の痕跡が世界中に散在している。これらの痕跡には、システムの秘密、そして修復の方法が記録されているはずだ」


「修復?」


アルトが聞いた。


「修復ではなく、改革だ」


セリアが言った。その時、約束の鎖ネットワークを通じて、リリアの声が聞こえた。


「アルト。南部で帝国軍の大規模な侵攻が始まった。そしてニナが情報をくれた。帝国軍は複数の方向から同時に動いている」


「座標が三つある」


ニナの声が被さった。


「東大陸の廃墟都市。北の雪山峰。南の地下鉱脈。帝国軍がすべてに向かっている。誰かが座標を知らせたんだ」


シャーロットの声が続く。


「父は何かを言わなかった。でも帝国の書庫に、古い魔力について書かれた記録がある。それは秘密裏に調査されていた。複数の魔術師が派遣されている」


セリアが巻物を広げた。そこには、世界地図が描かれていた。三つの印が付けられている。東大陸、北大陸、そして西大陸。


「古い魔力の遺跡は三つ。それぞれが別の情報を持っている。東には『契約者の歴史』が。北には『システムの構造』が。そして西には——」


セリアは言葉を止めた。西の印の上に、彼女の指が止まっている。


「西には『修復の方法』がある。でも、それは同時に『システムの破壊』も意味する。それを知ったら、帝国は西の遺跡を支配下に置こうとするはずだ」


エミリアが静かに言った。


「だから僕は君たちを止めようとしたんだ。古い魔力に到達することは、人類全体の秩序を揺るがすことになる。過去の六人は、その重圧で消滅した」


「でも」


アルトが言った。ネットワークを通じて、四人の決意が彼に流れ込んでくる。


「僕たちは一人ではない。矛盾を受け入れ、それでも進む。それが新しい契約者の道だ」


セリアが走った。地下室の別の扉へ。その先には、古い通路が続いている。


「まず東の遺跡を目指す。廃墟都市。そこには『過去の契約者たちの記録』がある。彼らがなぜ消滅したのか、その真実を知る必要がある」


リリアの声が聞こえた。


「南の商人領では、独立派が動き始めた。帝国軍の進行を遅延させる。時間をくれ」


ニナが続く。


「北の獣人領では防衛線を張る。帝国とヴァルデスの両方に対抗する準備をしている」


シャーロットが言った。


「帝国内の改革派を動かす。父に時間を費やさせる。でも——」


彼女の声が震える。


「父は何かを知っている。古い文明について。もしかして皇帝もシステムと繋がっているのか?」


エミリアが静かに言った。


「全ての支配者は、知ってか知らずか、システムと繋がっている。それは古い文明からの遺産だ。だから君たちが古い遺跡に到達すれば、同時にすべての支配者が反応する」


アルトは約束の鎖ネットワークを通じて、四人に伝えた。


「分かれよう。東と北と南で、別々に古い魔力の痕跡を探す。そして、西の遺跡へ。その場所が、すべての秘密の中心だ」


セリアが通路の奥から叫ぶ。


「東の遺跡の座標を確定した。廃墟都市シェルターディス。かつては帝国の第二首都だった。今は、何百年も誰も足を踏み入れていない」


ニナの声が強い。


「北の雪山峰。獣人の古い伝説では『星の山』と呼ばれていた。そこに昔の何かが眠っているらしい」


リリアが言った。


「南の地下鉱脈。帝国の地図には記録されていないが、商人ギルドの古い契約書に場所が書かれていた。かつて奴隷たちが掘っていた場所だ」


シャーロットが付け加えた。


「西の遺跡。帝国の禁書に一度だけ言及されている。『世界の心臓』と。場所は記されていないが、おそらく三つの遺跡の調査を通じて、浮かび上がるはずだ」


エミリアは動かない。アルトを見つめている。


「君たちは本当に進むのか。システムの秘密に到達することの重さを知ってか」


「知っている」


アルトが答える。複数の約束の鎖が、彼の身体を通じて共鳴し続けている。矛盾と葛藤。支配と解放。知識と無知。すべてが同時に存在する。


「でも、これ以外に道はない。システムが矛盾しているなら、その矛盾を直視する以外に、本当の自由はない」


エミリアが初めて、本当の笑みを見せた。


「そうか。では、君たちに一つ忠告を与えよう。三つの遺跡には、それぞれ守護者がいる。古い文明が遺した自動防御システムだ。進入しようとするものには、絶対に対抗する。そして——」


彼女は言葉を止めた。


「西の遺跡に到達したら、選択肢が現れる。システムを破壊するか。それとも、改革するか。その選択が、人類全体の運命を左右する」


約束の鎖ネットワークが、激しく鳴動する。


東の廃墟都市では、セリアが古い通路を走っていた。西の遺跡では、帝国軍が包囲線を敷き始めている。北の雪山峰では、ニナの部隊が防衛陣地を構築している。南の地下鉱脈では、リリアが商人領の兵力を整えている。


そしてアルトは、地下室の中で、複数の約束の鎖に包まれながら立っていた。その向かいには、三百年以上を生きたエミリアが、静かに微笑んでいる。


アルトは一つの確信を得た。


エミリアは敵ではない。彼女もまた、同じ矛盾を抱えて生きてきた存在なのだ。そして今、彼女はアルトと四人のヒロインたちに、道を譲ろうとしている。


「行け」


エミリアが言った。


「君たちの時代の契約者たちよ。古い魔力の遺跡を探し、システムの秘密を知れ。そして、新しい世界を造れ。それが、五百年前の僕が成し遂げられなかった夢だ」

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