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4話 魔王軍幹部討伐依頼

クロノスはナーコと二人で追放されてからは初めてとなる冒険の依頼を受けることに。


 ナーコのいた村で行われていた賭博に関しては、修行の旅から戻ってきた村長が直々に処罰を下したらしい。

 村長と同じぐらい偉いと言っていたジジイ含めて関係者全員生き埋めにされてしまったそうだ。

 なんでも純粋な儀式に金銭を結びつけるとは何事か、というのが処罰の理由だそうだ。別に生贄とか死人が出るのは気にしないあたり、あの村は本当にどうしようもないんだなって感じがする。

 こんな感じで村のその後について、用心棒の男が手紙で教えてくれた。なんとか村から逃げ出してきたらしい。筆跡は綺麗な字をしてるし、文章の言葉遣いも丁寧。

 人は見かけによらないものだなって思った。

 それで、用心棒の男は『賞金稼ぎの生活に戻ろうと思います』って締めの言葉に書いてあった。


「わざわざ手紙出してくるなんて、律儀なやつだよな」

「わたしの村、そんなふうになったんだ」

「あっ、興味ない感じですか」


 用心棒の男は元々賞金稼ぎだったのか。別に冒険者じゃなくても、身体能力を活かせる仕事なら色々あるからな。ただ、この西の大陸で最も大きな国、『タナミデロナ王国』では冒険者になる人が多いってだけだ。

 冒険者が魔物を討伐したり、ダンジョンを探索する。それならギルドとのやり取りを経て持ち帰った素材や宝の一部を国に納める。

 冒険者から傭兵、あるいは王国軍に入る人もいるから軍事力だって優れてるし、それを支える魔法の技術だってある。

 まぁ、とにかく他の国と比べたら冒険者、特に勇者の称号を持つものは優遇されてる。勇者パーティの一員として、この国だけじゃなくて、あちこちの国のダンジョンに行ったから分かったことだ。


 今、ボクとナーコは冒険者のためのギルドで寝泊まりしている。依頼を受けるために色々と手続きしてる中で、こうしてボクらに当てられた手紙を読んでいるというわけだ。

 ギルドの中は酒場と宿屋が合体していて、冒険者なら割引価格で使える。

 勇者パーティ追い出された後は本当はここに泊まりたかったけど、そん時は夜の間に行くには遠すぎたから(山奥の村も結構距離あったけど)仕方ない。でもナーコに出会えたから結果オーライでしょ。

 ギルドの名前は『白銀の蛇(シルバーヒュドラ)』というところ。ボクが冒険者として認められたのもこのギルドだった。

 ギルドは強い魔物にあやかって名付けられることが多いから、名前の取り合いでギルド同士喧嘩になることもある。冒険者はそれくらい血の気が多い輩がゴロゴロいるんだ。


「んでさぁ、本当にその子冒険者になるん? クロノスくんより若いじゃんね、歳いくつよ?」


 受付嬢のリィダさんが頬杖つきながら気怠げにそう聞いてきた。いつも眠そうな人だ、そんで色々とデカい。受付嬢はスタイルが良くないといけないらしいが、身長はギルドの女性の中じゃ誰よりも高いんじゃないかと思う。

 ちなみにこの接客態度は通常運転。彼女にとってのいつもの対応だ。流石に見知った人にしかやらないと思いたいけども。


「わたし、ナーコは13になったばかり」

「その歳で魔法使えるの? クロノスくん以来の逸材だねナーコちゃんは」


 しかしナーコは痛み止めの魔法、後は宿屋で判明した睡眠の質を上げてくれる魔法が使えるぐらいで戦闘能力がない。

 今の状態でいきなり冒険者になれるのだろうか。


「ナーコは冒険者になりたいって言ってます。それは本当なんです、信じてやってください」


 宿屋でナーコに冒険者になりたいか聞いたら、「クロノスが助かるなら、やる。別に嫌とかじゃない」と即答された。そういうことなら、なるべく本人の意思を尊重したい。

 勇者パーティに頑張って入ったけど、ボクはダメだったから。無理やりやっても結局失敗する。

 だから、ナーコにはそういう思いをさせたくないんだ。


「黒魔道士なのに、盗賊に職業変えたアンタが言うんだ」

「あ……あれは、勇者パーティに入りたかったから……やむを得ない事情で……」


 ボクがやった職業詐称に関しては、対して問題にされなかった。何故かというと、馬鹿正直に黒魔道士の職業を伝えると誰もパーティを組みたがらないからだ。

 黒魔道士の本質は呪いによる敵の弱体化だが、それは味方にも被害が及ぶ代物なのだ。

 弱体化によるサポートを除けば、黒魔法というのはデメリットは凶悪だがそれと引き換えに強大な力を得られる魔法ばかりが揃っている。 

 そのため魔法の性質が集団戦術に噛み合わない。一人の方が効果を発揮するタイプだから、パーティを組むにはあまりに厄介なのだ。

 例えるなら、鎧を着て防御を固めている戦闘集団に、一人だけ回避するの前提で全裸で参加するようなものだろうか。無茶苦茶浮いてんな。

 ボクに黒魔法を教えてくれた元黒魔道士のおばさんも、パーティを組めず、一人で冒険者をやっていくしかなかった。

 それがどれだけ過酷な道だったのか……今、冒険者になったことでしっかりと噛み締めてるよ。

 ボクは魔法の才能を認められて冒険者になったのに、誰かと組む場合、その才能を捨てねばならなかったというわけだ。

 だからギルド側も見逃してくれたんだ。流石にもう盗賊はやらないよ。また追放されちゃうしね。


「まぁ、いーや。とりあえずナーコちゃんは冒険者にしとくわ」

「マジですか」

「アタシも睡眠の質を上げてくれる魔法かけてもらったけど、ありゃ良いよ。すごい魔法」


 結局普段と変わらずに眠そうにしてるならこの人にかけても意味ないのではないだろうか……便利な魔法ではあるけど。


「ただし、クロノスくんとパーティ組むのは前提。ナーコちゃんだけじゃ戦えないから、アンタが守ってやんなよ。それから戦えるまではナーコちゃんの職業は未定にしといて」


 ナーコは冒険者になることを認められたが、条件付きだ。冒険者用の職業も今は未定だから、冒険者見習いといった感じだろうか。それでも13歳でなれるなら凄いだろう。普通は16、17とかだ。


「お兄さんが守ってくれるなら、わたしは大丈夫」

 

 ナーコがこちらを見て微笑む。それは信頼の証だ。

 ボクも期待に応えられるように頑張らないとな。


「そ、なら良さげだね。ちょうどクロノスくんに受けて欲しい依頼があったし」


 そう言うと、リィダさんは一つの巻物を棚から出して、こちらに渡した。冒険の依頼書だ。手紙などではなく、わざわざ巻物にするぐらいだから、なかなか報酬が良さそうな依頼だ。


「所持金もやばかったし、助かります」

「それは内容見てから言ったら?」


 ナーコと一緒に依頼内容を確認する。えーと、なんだって、魔王軍幹部であるエルダーオークの討伐。報酬は──ちょっと待てよ、魔王軍幹部。


「えっ、魔王軍幹部⁉︎」

「でさぁ、この内容でもまだ助かるだなんて言えるかなぁ? クロノスくぅん」


 初っ端から魔王軍の幹部だなんてハード過ぎる。

 初めてのおつかいで大陸横断するようなもんだろ。


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