1話 追放宣言
初めて追放モノを書きました。どうか読んでもらえたら嬉しいです。
ボクは今日も、勇者パーティーのサポートに徹する。それが、盗賊という職業だ。敵の足止めがボクの勇者パーティで求められている役割。
「食らえ、黒魔法『衰弱の霧』!」
黒い霧が纏わりついていき、呪いによってハイゴブリンどもの動きが鈍っていく。不定形の禍々しい霧から抜け出すのは至難の業だ。
奴等は普通の弱っちいゴブリンと違い、徒党を組んで襲ってくる知性と武器の類を使いこなす戦闘能力がある。まるで小さな軍隊のような凶暴な群れだ。街がコイツらの手によっていくつか壊滅したらしい。
だからこそ、その辺の冒険者ではなくて勇者パーティ直々に討伐依頼をされる事態となっているのだ。
「そこだっ!」
勇者エルドは軽々しく剣を振り、弱った敵の首を跳ね飛ばす。流れる血すら流麗なほど、彼の剣技は無駄がなくて美しいが、これも黒魔法によるサポートあってこそだ。
ただし、黒魔法は味方も巻き込む。勇者は俊足で避けてくれたが、足元には既に黒魔法の霧が広がり、敵味方構わず呪いが這い寄っていく。白魔道士のミレーヌがまたかといった感じで露骨に不機嫌そうな顔をしているがまぁ仕方ない。
……ボクの黒魔法の呪いがなければ、ハイゴブリン相手だろうがもっと苦戦したはずだ。だからこれで良い。
勇者エルドは万能タイプでなんでもこなす。
白魔道士ミレーヌが強力な魔法で攻撃。
僧侶ヒエラが回復役を担う。
聖騎士トマがパーティの盾になる。
そしてこのボク、盗賊のクロノスが呪いを撒き散らす。完璧なパーティと言ってもいい。
そう、完璧だ。ボクに盗賊としてのスキルが全然ないこと以外は。
率いていた群れのリーダー格は無事討伐することができた。依頼は問題なくこなせた。
やっぱり勇者パーティは強い。強いのは当然だが、何より依頼によって貰える報酬がその辺の冒険者と全然違う。依頼の難易度に見合うだけはある。良い装備を買うのに困らないであろう文字通り桁違いの額だ。名誉も富も、このパーティでなら手に入る。
ボクだって、早く冒険者として一人前の男になって成り上がってやる。故郷のためにも、絶対に成り上がらなくちゃいけないんだ。
しかし、今日の宿屋にて勇者から告げられた言葉により、ボクの夢は粉々に打ち砕かれてしまった。
「クロノス、お前をパーティから追放する。理由は分かるか?」
皆が集まる中、勇者パーティリーダーであるエルドから直々に言われてしまった。追放宣言だ。
冒険者の中でメンバーを外すかどうかの揉め事が最近多いって酒場の噂で耳にしたことあるけど、勇者パーティでもやっぱりあるんだ、そういうの。……なんて他人事のように考えてしまった。
「……職業を詐称してたこと?」
ボクは盗賊ではない。本当は黒魔道士だ。しかし、黒魔道士は誰からも求められていない不遇の職業。勇者パーティが求めるのは敵の妨害を役割とする盗賊だったから、無理して盗賊の職業になったんだ。
「それは理由の一つだな。お前、黒魔法も使える盗賊じゃなくて最早黒魔道士が盗賊やってるだけだろ」
エルドの指摘はその通りだった。ボクは盗賊としてのスキルは殆ど使えない。実際戦闘では黒魔法をメインで使っている。本来盗賊ならナイフなどの投擲術やトラップの作成ができるのだが、そこまでの技量がボクにはまだ足りていない。
「理由の一つ……詐称以外にも問題が?」
「正直職業詐称はまだいい。問題は他のところだ。お前今15歳だろ? その歳でそんだけ黒魔法が使えるのはスゲェよ実際」
急に褒められた。勇者パーティに入って初めて褒められた気がするな。
この国では13歳から冒険者になることができるのだが、ボクは幼い頃から故郷で元黒魔道士のおばさんから黒魔法を習っていたため、最年少で冒険者になることができた。13歳から正式な冒険者として認められる人は滅多にいないらしい。
そもそも黒魔法だって教えられたって誰でも実戦レベルで使えるわけではない。本来だったら長い長い鍛錬が必要だ。2年で勇者パーティの一員になることができたのは幸運だったと言ってもいい。
ボクは今では(自称だけど)999もの呪いを扱える。黒魔法に関して言えばボクは天才だ。……別に冒険者として求められてはいないが。
「だが、黒魔道士として優秀でもパーティメンバーとしてはお荷物だな」
褒められたと思ったら次はばっさりと言う。
「黒魔法自体は確かに強力だが、弱体化の呪いは味方も巻き添えになるし、アタッカーとしては自傷戦法ありきでパーティとしては扱いにくい」
エルドは勇者としてなんでもこなせるから、パーティ全体のバランスを考えた上で的確に指摘してくる。実にリーダーらしい意見だなって思う。
「盗賊としては素早いだけで貧弱だ」
トマは聖騎士らしく単純なフィジカルの話をしてきた。そりゃ黒魔道士なんだから、肉体自体を鍛えているわけじゃない。盗賊だって力自慢の職業じゃないだろう。パーティの盾役の耐久性基準で語らないで欲しい。
「鍵開けや罠の解除すら碌にできない雑魚です」
ミレーヌがそう冷たく言い放った。白魔道士としての黒魔道士を認めたくないプライドなのか、単にボクのことを好かないだけなのか。どちらにせよボクの評価はその程度ってことだ。
「近接戦闘も勇者の方が断然上だし、なんならウチのパーティの白魔道士ちゃんの杖殴りの方がマシなレベルで、本職の武闘家や戦士には遠く及ばないわ」
ヒエラは僧侶として、辛辣ながらもボクに近接戦闘ができない欠点を指摘する。僧侶は回復魔法がメインではあるが、ある程度近接戦闘もこなせる職業だ。
そして盗賊は本来なら武闘家や戦士と匹敵するぐらい近接戦闘を得意とする職業なのだが……残念ながらボク自身の黒魔法抜きの体術は大したことない。パーティの誰よりも劣っているとは思う。
「…………つまり、盗賊として求めてたパーティとしての役割がこなせてないから追放ってことですか?」
「悪いな、これが俺たちの総意だ。黒魔道士なんか求めてないんだよ。特に敵ではなく味方の足を引っ張るような奴は必要ない」
勇者パーティがダンジョン内の探索を有利に進めるために盗賊の募集をしていたのは分かっていた。敵の妨害や鍵開け、罠の仕掛けを外すなんてのはダンジョン攻略をする冒険者なら誰でも欲しがるスキルだもんな。
もしくは戦士や武闘家でも良かったんだろう。というか盗賊のスキルを持っていて近接戦闘ができる職業なら別になんでも良かったんだろう。
でも、黒魔道士だけは求められていなかったんだ。
「私たちは魔王を討伐するのです、実力がないやつがいても邪魔」
ミレーヌは話は済んだとばかりに部屋に行ってしまった。勇者とは、魔物の王である魔王に挑む資格がある人間。冒険者の中でも最強クラスの実力者であるということ。……そしてボクには手が届かない称号。
「ミレーヌはああ言ってるが、まだ若い冒険者を死なせたら勇者パーティとして体裁が悪いだろ? 足手纏いがいちゃ魔王は倒せない。今日でお役御免だ」
宿屋から追い出された。幸い、使っていた装備とかは餞別代わりに貰えたけど、どっちにしろ野に放たれたようなもんだ。
しかし金は殆どない。いくら大金が貰えるといってもボクの取り分は年齢もあってか少なかったし、盗賊職をこなすために技術書とか色々買ってしまった(その割に上達した気がしないけど)からだ。
「これからどうしよう…………下手したら野宿か?」
今はとりあえず泊まるとこを探さなきゃ。
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