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第1話「社畜ゲーマー、異世界に出勤する」

 終電を逃すのは、もはや日常だった。

 神谷蓮かみやれん、二十九歳。某ブラック商社の営業課所属。

 残業時間は月二百時間を超え、机の上のモニターには仕事の表計算と、裏でひっそり立ち上げた戦略ゲームが並んでいる。

 「……ふっ、あと一ターンで敵国を包囲だな」

 脳内は常に効率と戦略。ゲームでも仕事でも“最短ルート”を選び続けた。

 その夜、蓮は椅子にもたれたまま意識を失う。


 ──そして、目が覚めたとき。

 そこは、見知らぬ荒野だった。

 「……え、なにここ? 撮影現場? いや、空が二つあるんだけど」

 混乱する彼の前で、銀鎧の兵士たちが剣を交えている。

 「敵襲だ! 布陣を整えろ!」

 兵士の叫び。地面に突き刺さった旗には、見覚えのあるギルドの紋章。


 ――まさか。

 昨夜プレイしていた戦略シミュレーションゲーム『アルカ・ディア戦記』。

 その世界そっくりだった。


 「嘘だろ……ゲームの中に転生って、ラノベかよ」


 戦場の混乱の中、兵士の一人が叫ぶ。

 「おいそこの男! 指揮官が負傷した! 代わりに指示を出せる者はいないか!」

 「……いや、俺はただの社畜だし」

 「敵が来るぞッ!」


 蓮は一瞬、迷った。

 だが、地形、敵の布陣、味方の数――全てがゲーム画面のように“見える”。

 脳裏に自動で展開されるシミュレーション。

 「右翼を下げて、中央突破。囮で敵の突撃を誘導。合図で一気に包囲だ」

 「な、なんだその戦略は!? 命令、実行!」


 ――数分後。敵軍は壊滅していた。


 「……もしかして、俺の“戦略脳”って、チートなんじゃ?」


 かくして、“過労死寸前の社畜ゲーマー”は、異世界で初陣を飾る。

 そしてこの戦いをきっかけに、彼は“ギルド参謀”として歴史に名を刻むことになる。

 だがその先で、彼を待っていたのは――

 国家の運命を揺るがす、大いなる戦乱だった。

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