見知らぬ場所
【世界背景と対象者】
日本という国で子供を守った男性が天界警察の候補。
男性は保育士で子供を小学校に上げるために必要な学習をさせている。また、七人家族であり、子供は男性含め五人。学費は男性も奨学金を返しながら働いている。
人の考えを読むことが得意であり、幼少期に両親の考えを的確に言い当て、驚かせたことがある。そのため、人の悪い部分、隠している部分に近づきやすい。
数人分の報告書を読みながら、神は案内人と天界警察の警視総監に相談する。
「気になる子が数人いるんだけど、時間は取れなさそうでさ、少し仕事減らせないかな?」
「それは無理でしょう。仕事の確認も貴方が関わってきますし、ただでさえ遅い仕事がもっと遅くなります」
警視総監はきっぱりと言う。
「だよねぇ…、書類読むの苦手でさぁ…」
「なるほど。でしたら私がお相手しましょう」
「え、いいの!?」
「はい。ですから、メリアを確実に私たちの方へ入れてください」
「わかったよ」
「では、その方の書類をお借りします」
「はいはーい」
神は書類を積んである紙の束からー枚引っ張って取り出すが、その様子を見て二人は引く。
「どうした?」
「い、いえ…」
「少しぐらい片付けをしたらどうですか?」
警視総監は目を逸らし、案内人は遠慮なく文句を言う。
「えー」
「そういえば、先日提出した指名手配犯の書類、まだ返却されていないのですが、終わりましたか?」
警視総監がそう言うと神は目を逸らしながら言い訳をする。
「えっと…それはぁ…」
「まさかまだ終わっていないんですか?」
案内人は呆れながら神に言う。神は小声で言い訳をしながら文句を言う。
「だって…あの書類ちょっと面倒で…新人入ってきちゃうし…」
「新人より指名手配犯でしょう?」
警視総監は威圧のある声で神を上から見下す。
「ヒェ…」
神からあまり聞かない声がするが、気にせずに警視総監は言う。
「指名手配犯は第一。次に新人の育成。第三に在籍している警察の育成、ですよね?俺たちは生者を守り、冥界での秩序を守るために存在します。その一番の長が貴方でしょう」
「ごもっともです…」
神は警視総監に叱られ、しょぼんとしながら書類を読み始める。その行動に警視総監は満足そうに頷いて案内人に声を掛ける。
「では、案内人、今後とも宜しくお願いします」
「えぇ、こちらこそ」
そう言い、警視総監と案内人は神の部屋を静かに出ていく。
大きな木がある。それこそ、何千年のバカでかい木だった。不思議なことに木の根元には窓や扉がついている。大きいツリーハウスのように見えるが、『大きい木』だった。
「俺…子どもを庇って死んだんじゃ…」
体を見ると傷一つない。服も汚れているが、不思議なことに破れている場所は一つもない。
「そうだよ、君は死んだ」
「……じゃあ、ここはあの世ってことか。んなとこ御伽話しかねぇと思ってたんだけどな」
返事をしながら周りを見渡すと、真っ白な帽子と服を着ている男が立っていた。しかもなんか神々しい感じがする。
「私たちは信仰の上で成り立ってるからあってはいるよ」
「…で、お前誰だよ」
俺は不思議に思ってそいつに聞いた。俺は子どもを庇って死んだんだ。俺の意思や命はもうないはずだ。
男の心の中はただ世界の平和を願っているように感じる。
「私は案内人。君を天界警察にスカウトに来たよ」
「…警察?」
「うん。どうかな?」
「……やだね」
希望を抱かせるような間を開けてから断った。いきなり警察になれとか、無理に決まってる。警察に必要な予備知識も能力もない。運動は好きだったからある程度は出来るが、平均以上、天才未満ぐらいのものだ。
案内人は不思議そうに首を傾げてなぜ入らないのかと純粋に考えていた。
「どうして?」
「俺は信仰してねぇし、まず俺は保育教諭だ」
「うん。知ってるよ」
「副業はダメなんでね」
「なるほど。それなら、こっちを本業にしてもらおう」
「は…?」
「君の力が必要なんだ。お願い」
案内人は深々と頭を下げていた。意味が分からない。死んでからも仕事をしろというのか。仕事は比較的好きな方に入るのだろうが、それは仕事に行きたくないと嘆いている人と比べての話であって、正直言って好きでも嫌いでもない。
「君の優しいとこ、結構好きなんだけどなぁ…」
案内人はポツリと呟いた。俺は小さな声で繰り返す。
「優しい、ね」
最後は子ども守ってみんなを置いていった俺が優しい?無鉄砲なだけだ。俺が死んで、迷惑をかけたり、悲しませたり、泣いている顔しか想像できない。
「…やはり君はこっちに欲しい」
案内人は手招きして大きな木の中に入っていった。俺は案内人の後を文句を言い、断るためについていく。
大きな木の中に入り、案内人に声を掛ける。
「あのなぁ、」
警察にはならない、そんな言葉を飲み込んだのは案内人が見せてきた映像のせいだった。
「これは、君とか関わってきた人たちだよ。みんな、君といて、幸せだったって」
案内人は木で出来たテレビのようなものの横に寄りかかりながら俺に見せた。中には家族や親戚、仕事仲間が映っていた。
俺はその中を食い入るように見た。
俺が死んでからの様子を見せるなんて頭がどうかしてる。そう思った。
家族も、仕事仲間も児童も泣いて、泣いて泣いて体の水分がなくなるんじゃないかって心配するぐらい大泣きしている人もいた。
次の場面は、そういう人たちがそれでも懸命に生きて、笑顔で生活を送っている映像だった。そんなの俺がつられて泣くだろ。泣きながら笑っている奴だっていたし、無理に笑顔を作っている奴もいて余計痛々しい。
それが俺のためだと思うと余計胸が締め付けられるように痛い。
「泣くなよ、俺は幸せだったんだ」
そんな言葉が掠れた声で発せられた。
案内人は悲しそうな目をして、すぐに笑った。
「みんな生きてるよ。だから、天界警察に入ってくれない?」
だからってなんだよ。文脈が合ってないだろ。そう悪態をつきながら質問する。
「…なんで俺をそんなに入れたがるんだよ」
「君が天界警察になるための条件を突破し、そしてとても優しい子だから」
「んなことねぇよ」
俺は袖で涙を拭きながら、案内人に言った。
「俺が欲しい理由はわかった。その条件ってのも今は聞かねぇ。警察ってのは俺の知ってる警察か?」
案内人は流石だと言うように嬉しそうに笑いながら返事をした。
「大体は同じだよ。でも、天界警察が相手するのは死者だ。そして、相手をする死者は天界には殆どいない」
「…じゃあ、地獄か?」
俺は嫌な想像には目を背けて言った。
「君もわかっているんだろう?その場所は現世だ」
頭を殴られたような衝撃があった。
俺等が住んでいた、俺の大切な人がいる現世。そんな場所に警察が捕まえるほどの悪い死者がいるだって?そんなの信じられるわけがない。
「その死者は生者を殺したり、自殺に仕向けたり、寿命を縮めるようなことしかやらない。それを止めたり、こっちの秩序を守るために天界警察はいる」
「…なるほど」
筋は一応通っている。だが、本当に死者が生者を殺しに行っているのだろうか。生きてるやつが生きている人を殺すのはわかる。だが、死んでいるやつが生きてるやつを殺すなんてどうも想像がつかなかった。
「君が知っているような人物だと…、リューズ・サンが有名かな」
リューズ・サン。無差別殺人と詐欺をして、警察に捕まったと報道が出た以来なにも報道されていない。12人も殺したんだから死刑としても、報道はされるはずだ。しかし、何もなかった。
「あいつのその後は出なかった。あってるよね?」
「あぁ」
「それは私たちがそいつの身柄を拘束し、地獄に送ったからだ。どう?少しは信じてくれた?」
案内人は信じてくれると確信し、笑っていたが、どこをどうやれば信じられるんだよ。悪人を捕まえたからなんだ。地獄だろうが、なんだろうが、悪人は心から反省しなければ二度と普通の生活には戻れない。ただそれだけだ。
やはり断ろう。そう思った時、誰かが扉を勢いよく開けて入ってきた。
緑髪の男が案内人に話しかけた。急がないと間に合わない、そう全身で訴えていた。
「案内人!今すぐ20番世界に送って!」
「どうしました?」
案内人はなんともないようにのんびりと答えた。
「指名手配予備軍が上がった。現在逃走中。アジサイから20番世界に逃げたと情報があった。現在被害者は0だが、すぐに行かないと危ない」
「わかりました。扉を開きます。少々お待ちください」
「助かるよ」
案内人は耳に手を当てると、何か話した。そして、急いで奥に消えていった。
「君は…?」
「は?」
「……新しい新人君かぁ…」
そいつは俺のことをジロジロ見て1人で納得したように顎に手を当て、頷いていた。さっきとは別に楽しそうにしていた。
「なるほど。君はどの課に配属されるの?」
「いや、俺は」
「準備できました」
「うん。それじゃ、またね」
そう言って手を振り、扉の前で深呼吸をしてから中に入っていった。緊張していたが、絶対に捕まえる意思が伝わってきた。
案内人は俺の方を向いて言った。
「今は人手不足で捕まえるのに時間がかかっているんだ。そして、被害も時間が掛かる分増えている。少しでも被害を減らすために君が必要だ。勿論、逮捕術や武道、警察に必要な知識はすべて教える。入ってくれる?」
「俺はそんなに人に欲しがられるようなことはしてねぇ。それにそんな大きな責任を負えるかも分からない」
「…なぜ?君は十分責任について知っているのに」
「んなの…被害にあった人に会うのが怖いんだよ。被害者は大きな傷を残しているかも知れない、人に合うのがトラウマになっているかも知れない、それなのに情報を聞いて逮捕する?だからなんだよ。傷は癒えねぇし、時間も戻らねぇ。警察がやってることは被害を増やさねぇようにやってるだけで被害を受けた人にどうすればいいのか明確な答えはねぇ」
「…そうだね」
「でも俺は人の考えが読める。殆ど何を考えているのか正確に分かる。だから、嫌なんだよ。嫌悪、悪意、邪念。そんなものが読めるんだよ」
生前、色んな人と話していると、笑顔で話しながら心の内で悪口を吐いていたり、下心や犯意、軽犯罪の方法を考えたりしていた。素直な人もたくさんいたが、それ以上に悪い心の内をたくさん読んだ。
「…だから?」
案内人は心の内も同じようなことを思っているらしい。他に何も読めない。
「…」
「だから、どうしたの?もう人とは関わらないの?関わるのは好きじゃないの?」
人と関わるのは面白い。だが、それと同時に怖い。
「…やってくれるね?」
案内人は確信したように俺に言った。俺は何も動かさずに黙った。
「沈黙は肯定を意味するよ。いいね?」
俺は何も言わずに突っ立っていた。案内人の心の内は言葉と同じで素直なのか、もしくは読めないのか。
そして俺は警察として生きている人、死んでいる人を守りたいのか、案内人と話をしてわからなくなった。
案内人は一分ほど経ったあと、俺の後ろの扉に声をかけた。
「それじゃ、よろしくね。優、待たせてごめん、入っておいで」
そう言うと黒髪の男が俺の後ろの扉から出てきた。
「はいはーい」
「この子のこと、よろしくー」
そう言い、案内人は一瞬で扉の奥に消えた。
「さてと…結構時間かかったね。質問とかいっぱいしたの?」
全く心が読めない。どれだけ読みづらい人でも少しの気の緩みで隙が生まれ、一部だけ読むことができた。案内人も読めた。ただ、この男は隙がない。笑顔で挨拶しているが、全くと言って読めない。例えるなら何も知らない無垢の赤ん坊と同じだった。
「僕は優。君の相棒だよ。よろしく」
優の名乗った男は左手を差し出し、握手を求めた。俺は一応名前を名乗り、握手をする。
「…俺はジャック・リ・オリバー」
「ジャック・リ・オリバー…長いな…」
人の名前にまず文句をつけられた。ふざけているのか、それとも素でこれなのか。こんなに心の内が読めない人なんて初めてだった。
「ジャック…バー…リ…」
俺の名前をばらして言いながら何か考えていた。
「よし!赤ずきんにしよう!」
何がどうなってそうなった。赤ずきんの「あ」の文字すら入ってすらない。俺は間抜けの顔と声を出した。
「は?」
「君、赤いフード付いてるし、赤い髪と瞳が綺麗だからね」
「…安直すぎる」
本当にこいつが相棒か?それに俺より年下な気すらする。
「僕は君より200年は年上だよ。一応僕は警部だから。君は巡視ね」
「…階級なんか知らねぇよ」
「あ、そっか。んじゃ、後で教えるね。それと、天警って、基礎をしっかり固めないと駄目だから厳しく行くよ」
「は?」
「おいで」
優は俺の腕を取り、扉の外へ出るとそのまま真っ直ぐ進んだ。少し進んで優が立ち止まると、巨人が通るような、通常の人の3倍以上の扉がゆっくりと開いた。両端には巨人が座って周りを見渡していた。
優は気にせずに扉の中に入っていく。俺も優の後を巨人を見ながら歩いてついていく。
中に入ると、人や耳が尖っている人、二足歩行の動物、人と動物が混ざっているような生き物が慌ただしく行き来していた。
優は驚いて声が出ない俺を鼻で笑ってから端にあるエレベーターに乗り込んだ。
「置いてくよ」
俺は急いで優の後をついていく。
「さっきの人たちは情報係の人たちと天使だね」
「天使?情報係?」
「天使は死者を閻魔様たちのところへ導くもの。情報係はその材料となる情報や指名手配の情報を見つけ、僕らに伝えてくれる」
「へぇー」
俺は大して興味がないので適当に相槌を打った。
「君が働くのはここ、刑事課。主に指名手配犯や犯罪、天国や中神国、地獄の秩序を体や頭を使って守る。ここまでは大丈夫だよね?」
「…中神国ってなんだよ」
「中神国は天国でも地獄でもない場所。天国に行くには良い行いが足らないけど、地獄に行くほど酷いことはしてない人がいる場所。指名手配予備軍者もここだね」
なるほど。犯罪をしたが、反省していればここに行けるのか。
「罪を犯していても天国に行ける人は居るよ」
「は…?」
「あ、聖書を読むとかじゃなくて、犯罪者でも心から反省し、人々のために人生を使ったのなら、天国行きのものも出てくる。ただ、そこまで行くのはどれぐらいの人がいるかわからないけど」
「それって、殺された人と対面したらどうするんだよ」
「それはそれ。喧嘩するのならすればいいし、大事になるなら僕たちが介入する。それでも収まらなければ中神国に移動し、そこで暮らすか転生するかのどちらかだよ」
天国も地獄も行いで全てが決まるのか。行いが良ければ犯罪を行ったとしても天国に行けるし、行いが悪く、反省をしなければ地獄に行き、程々に行動すれば中神国に行くということか。どうも厄介な仕組みだ。
「それで君には明日から働いてもらうんだけど、家はここね。住所と名前、それからこれと似た制服がクローゼットとか引き出しに入ってるから」
そう言って優は自分の服を指差しながら説明し、携帯を俺に渡した。俺は携帯を受け取り、住所を確認する。マップでみるとそんなに遠くないし、いい立地だ。
「報連箱の使い方はわかるよね?」
「ホウレンバコ?」
「これこれ」
そう言って携帯を指差す。
「携帯じゃないのかよ!?」
「けいたい?」
ここじゃあ携帯とは言わないらしい。
「…ま、いいや」
俺は報連箱をとりあえず服のポケットにしまった。
「あとは…」
優は数秒考え、両手をパチンと合わせた。
「そうだ!僕の教育は厳しいけど、今後に役立つからちゃんとやってね。じゃないと切るから」
そう言いながら優は自分の首に左手の親指を当て、横に一直線に右から左へ滑らせる。その行為が予想以上に怖く、圧を感じた。俺はその圧に負けないように返事をした。
優はその返事を嬉しそうに聞き、笑った。
「ちゃんと着いてきてね」
「おう、上等だ」
そう言いながら、俺はニヤリと笑った。心が読めないなら読めるように訓練をすればいいだけだ。それに、必要な知識や技能が学べ、住む場所もある。
よく分からないが、少しの期間お世話になることにした。
【報告書】
第1 平均よりは動きは速いが、身のこなしが下手。
第2 子どもの成長についての知識はある程度ある。
第3 話し方が悪いが、考えの読み取りが出来るため、何も言わずに意思疎通が出来る可能性がある。
第4 知識の吸収は普通。読むより体験させたほうが憶えは良い。
注意事項
煽られるとムキになるので、ある程度扱いやすい。ただし、他人でもその可能性があるため、注意が必要。
動きで覚えているが、攻撃、防御はほとんど同じなため、分かりやすい。また、攻撃する方向を目で見る癖がある。
その他は随時更新していく。また、個人情報については興味がないため、記入しない。
以上 優
優は鉛筆を置き、背伸びをする。そして、ボロボロになった赤ずきんを笑いながら煽る。
「こんなんでへばってるの?やるって言ったのは君なのに」
「へばってなんか…」
「君さぁ、もっと僕を殺しにこないと。じゃないと捕まえられないよ?」
「あんたが何も伝えずにいきなり襲いかかってくるからだろ…」
赤ずきんは息も絶え絶えに優へ反論する。
「でも指名手配犯は『今から襲います』なんて言って襲ってくると思ってるの?」
赤ずきんは何も言えずに黙った。
優はその様子を見て本当に何も分かっていないんだなと思った。
天界警察には作家から警察、医師やニート等幅広く雇われているが、ニートや死に関わらないような職の人はよく理不尽なことに怒る。合理的にあるもののほうが少ないと言うのに理不尽を受け入れることが苦手だ。ただ、そういう人たちがいるからこそ、均衡を保っているのだろう。そう思いながら赤ずきんを見ているとだんだん呼吸が整ってきていた。
「…よし、もう一回だ」
赤ずきんは疲れているが、どうやら根気はあるらしい。
「…もう今日は終わり。次行くよ」
「え…?」
僕は赤ずきんを連れてある場所に連れて行く。
「ここって…」
「天国だよ。君が武術を学び、自身の正しいこととして使うことでここの秩序と平和、そして現世の幸せが守られる」
「…みんな…死んでるんだよな」
赤ずきんは悲しそうに歩く人々を見ながら言った。
「そうだよ。生きているように見えて死んでる」
「…そうか…」
赤ずきんはそう言いながら、決意が固まったようだった。
それを見て僕はホッとした。
赤ずきんは案内人に無理矢理に同意させられてここに入ったのだろう。だから人々を守りたいという考えが薄い。その考えや意識がなければ悪魔や指名手配犯に対峙したときに弱点となり、裏切りや取り逃がすことにもなり得る。そうならないように人との関係性を大事にしてもらわなければならない。
「生きてる時にちゃんと幸せになれるように手助けするのが僕たち、天界警察の役目だよ。絶対にその信用を裏切ることはしてはいけない」
「…なんとなくでいいならわかった」
赤ずきんは少しだけ僕たちがどうしてこの仕事をしているのかわかったらしい。
「それじゃ、次は中神国に行こっか」
「おう」
中神国に向かおうとすると、報連箱に繋いでいるイヤリングに電話が入った。僕は急いでイヤリングの後ろのボタンを押す。
「こちら優、どうしたの?」
連絡をしてきたのは情報係のアジサイだった。捜査中だった指名手配犯の場所が判明したらしい。
その場所は僕の管轄内だった。指名手配犯のランクもちょうどいいし、赤ずきんに指名手配犯の捕まえ方、見つけ方を学んでもらおう。
優は赤ずきんの方を見て真剣な顔を作る。
「これから指名手配犯を捕まえるから着いてきて」
そう言うと赤ずきんは真剣そうに返事をした。
初日で指名手配犯と対面してしまうが、指名手配犯も時間も待ってはくれない。僕たちの役目は早急に指名手配犯を捕まえ、世界の平和、均衡を守ること。油断は許されない。
それに、様々なことを直接身体に教え込ませられるいい機会だ。赤ずきんにもちょうどいい、そう考えながら刑事課に優は赤ずきんを連れて戻っていく。