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7日後に異世界転移するそうです ~でも、そこは詰みかけの世界~  作者: ひつま武士
レジスト『魔族』とレジスト『魔眼』

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第37話:レジスト「魔眼」への対策(3)

 ミコトは、レジスト『魔眼』への、一つ目の対策である≪魔族に流出しても再現困難な技術≫について、さらに可能性を探っていた。


(さっき少し考えたけど、“見ても作り方が分からないもの”も、“再現困難”に繋がるな……)


 たとえレジスト『魔眼』に見られても、そして解析されても、再現できない技術。

 それを実現するには、こちらの世界にあって、ルナティアでは“オーパーツ”と呼べるようなものを使う方法もある。


(でも、消耗するものだと、持ち込んだ分でしか作れない……)


 例えば、『ニトログリセリン』の最終工程に使われる薬品を持ち込んだとする。

 それらは、レジスト『魔眼』に見られ解析されても作り方は分からないだろう。

 だが──


(現地でそれを混ぜ合わせてニトロを作っても、持ち込んだ量以上にはならない。)


 それでは、継続的な運用は難しい。

 ミコトは、眉間に軽く皺を寄せながら、別の可能性を探った。


(なら……消耗しないもの。)

(現地の素材を材料にして、何度でも使えるもの……)


 そのとき、ふと一つの閃きがあった。


(触媒……!)



 本来、触媒は反応を助けるだけで、自身は消耗しないものとされている。

 例えば、鉄はアンモニアの合成反応── いわゆるハーバー・ボッシュ法── において、窒素と水素を結びつける触媒として使われている。

 この反応では、鉄は反応の場を提供するだけで、アンモニアを生成しても自身は変質せず、繰り返し使うことができる。


 こちらの世界の触媒を持ち込めば、現地の材料を使って何度でも反応を起こし、有用なものを作り続けられる可能性がある。


(それなら、再現困難性と継続性の両方を満たせる!)


 ミコトは、静かに頷いた。

 この方向性なら、魔族に見られても盗用されず、しかも現地で使い続けられる。



 ミコトは、『触媒』という技術に可能性を感じながらも、慎重に選定を進めていく。


(液体の触媒は……ダメだ。消耗が激しすぎる。)


 液体触媒は、反応のたびに混ざり込んでしまい、回収が困難になる。

 そのため、実質的には“消耗する”扱いとなり、持ち込んだ分しか使えない。


 例えば、チーズを作る際に使われる“レンネット”── これは液体の酵素で、牛乳を凝固させる触媒のような働きをする。

 だが、レンネットは反応のたびにチーズ内に取り込まれてしまい、再利用することができない。

 このように、液体触媒は“使えば減る”性質を持つため、継続性の戦略には不向きだった。


(なら、“金属系の触媒”……そして、“ルナティアには存在しないもの”になるか…。)


 ミコトは、頭の中でいくつかの金属を思い浮かべた。

 白金プラチナ、ニッケル、酸化チタン、コバルト── いずれも、現代地球では触媒として使われることがある。


(白金は……荷物持ち込み条件で“大量に持ち込めない”ことになっている……)

(現地の通貨に影響が出るとかの理由だから……白金は存在するはず。)


 それでは“再現困難性”の条件を満たせない。

 ならば、他の金属はどうだろうかと彼は考える。


(ニッケル、チタン、コバルト……どれも、現地の鉱石に含まれている可能性はある。)


 だが──


(抽出する技術は、現地にはないはずだ。)


 それならば、たとえ“存在”していても、“触媒として活用できない”という意味で、再現困難性を満たす可能性が高い。

 そして、彼はそれぞれの触媒としての用途を考えていく。


(ニッケルは……液体の油を固体にする触媒だったはず。)


 食品加工などで使われる技術だが、軍事用途に転用できるかは微妙だった。


(酸化チタンは、光を使って水を水素と酸素に分解できる触媒……)


 これは、電気を使わずに水素と酸素を得られる可能性があるため、良さそうに思えた。

 しかし──


(同じ光を使うなら、太陽電池で発電して水の電気分解をした方が、圧倒的に効率がよかったはず……)


 酸化チタンによる光触媒反応は、反応速度も生成量も限られている。


(重量あたりの水素生成量では、太陽電池にまったく及ばない。)

(こちらの世界では、調達コストや安全性、そして廃棄時の処理負担なども含めて研究されているけれど……)

(転移で問題になるのは、重量だけ……だから、これも却下だ。)


 ミコトは、静かに息を吐いた。

 触媒という方向性は有望だが、決定打となるものを見つけるのは難しいかもしれないと、気が重くなる。



 ミコトは、触媒としてのコバルトに思考を集中させる。


(……コバルトは『液体燃料』を生成する触媒だったはず。)


 彼は記憶を辿る。


(たしか、コバルトが1キログラムあれば、一日に1〜2リットルほどの『液体燃料』が生成できたはず……)

(この『液体燃料』は、灯油や軽油に近い性質で、≪高純度のアルコール≫より燃焼力が高い。)

(しかも、原料は木炭や石炭をガス化したもので、電気を必要としない。)


 それは大きな利点だった。

 電力供給が限定的なルナティアにおいて、電気を使わずに燃料を得られる手段は貴重だ。


(ルナティアに石炭がなくても、木炭は存在するだろう。)

(もし存在してなくても、木炭なら簡単に作れるから……)

(コバルトの持ち込み……これは、候補になるな。)



 ミコトは、静かに頷いた。ひとつの結論が導き出された。

 “再現困難性”と“継続性”を両立する触媒の一つ── それが、コバルトだった。


(触媒については、後でもっと調べるとして……今は、ここまでにしておこう。)

(何とか一つ候補が見つかってよかった……)

(さて、次の対策は……)


 ミコトの思考は、二つ目の対策── ≪誰の目にも触れる形で使っても、仕組みを気付かせない技術≫へと、静かに移っていった。

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