90.カスミのそばがいい
僕はカスミの細い太ももに頭を乗せて目を瞑った。髪の毛を撫でる手が心地良い。人に髪の毛を触られるのは嫌いなのに…カスミだとどうして嬉しいんだろ。
まだ細くて頼りないのに、なんか包まれるような感覚で安心する。
僕たちのことは嫌いじゃ無いけど、追いかけ回すほどでも無い。そんな距離感がたまらなく心地良い。
もっと近くてもいいかなって思うけど、まだ女性に興味が沸く年頃だから仕方ない。
カスミがお風呂で僕たちの体を触ってもいやらしさを感じない。むしろ面倒そう。執着されることはあってもする事はなくて、なのにカスミにはもっと見て欲しい。
最初は利害が一致したし、食事も美味しいしお得って思ってた。人避けに最適な人選。バックにはパルシェン公爵家。カミール商会もある。
セイルさんはカスミを守る為に僕たちを選んだ。でも結果としてお得だったのは僕たちの方。
嫌じゃ無いからカスミでいい。初めはそんな感じだったのに、気が付けばカスミじゃなきゃ嫌だと思うようになった。少しずつ惹かれていて、最後のキッカケはやっぱりルーガスの魔力暴走かな。
カスミは怖がる事なく、カッコ良かった、ありがとうと言ってくれた。
あの時、本当の意味でカスミを特別だと思った。
好きだと自覚してしまえば、抑えるのが大変だ。僕たちは年頃だからね。でも魔石に出来ると分かってからは、我慢できない時に魔石を作っていた。
やっと正式に婚約して…結ばれたのにカスミは攫われてしまった。
そして、霰もない姿で薬を飲まされていて。最悪は避けられたけど、カスミに触れた奴が許せなかった。薬のせいでカスミは凄く色っぽくって、もう吐息だけで襲い掛かれるくらいに。
でも、我慢した。震えてたから。それから僕たちは実家に帰って…早くカスミのそばに戻りたいけど、僕たちが安全に暮らす為には必要だからと我慢して。
ようやく再会できてもやっぱり近寄れなかった。婚約者なのに…やっと結ばれたのに。カスミが欲しい。
そんな時間が1ヶ月近くあって、魔石が沢山溜まった。凄く濃い色の。2人でため息を吐いた。
カスミが街を出てしまったから。一緒に寝たいのに。
で、やっと街を離れた森で一緒に暮らせるようになって…またカスミと眠れる。
どんどん好きになる。僕が欲しい言葉をくれる。僕たちの顔じゃなくて中味を見てくれる。
だから、少しでも会えないのはとても辛い。それが変な人に付き纏われたりすると余計に。カスミがそばにいれば、婚約者だからって言えるのに。
「私は聖女なの!」
濃い金髪に青い目の女性。僕たちより年上だ。化粧も濃いし、特別美人とかでも無い。なんならカスミの方がきれいだ。しかもなんだか言動がおかしい。
無視したら回り込まれて抱きつこうとして来た。うわ、気持ち悪い!
風に乗って離れた。あれ、どこ?とか驚いてた。聖女なのに全く濃い魔力を感じない。抑えてる訳じゃ無くてダダ漏れなのに、弱い。多分、魔力が少ないんだと思う。
勇者は剣を抜き放って素振りしてたけど、カスミの方がまだマシなくらい。全然ブレブレだ。刃が風を切る音もブオンと大きい。シュンとかヒュンとか、そういう軽やかな音じゃないんだ。あれで勇者?卵も卵、下手したら卵ですら無いかも。
彼も濃い金髪に青い目の、平凡な顔だった。
賢者は全くだった。そもそもまともに魔法すら使えていない。凄さをアピールする為に手に風を纏わせたけど、カスミの風みたいに優雅じゃない。
彼は緑の髪に青い目に、メガネの整った顔立ちの男性だ。でも、なんか凄さを感じない。
たまたま通りかかった神官は聖女を見て鼻で笑い、勇者を見て肩をすくめ、賢者を見てため息を吐いた。
すごく分かる。思わず頷き合ったよ。
彼らは淡い色合いじゃないし、まだ力が出せていない。だからどの貴族も見向きもしていないだろう。もしカスミが人前で魔法を使ったら、即拉致されるレベルだ。治癒魔法だって賢者の僕より使える。神官に見つかったら大変だ。
神官がこちらに歩いて来る。
「あなたたちは、アルパカを連れた少年と一瞬にいた人たちだったな?」
話しかけられた。リーダーが
「あ、あの時の…」
やっぱり。
カスミは自力で回帰したから、神官は治療していなかったと後で聞いた。
「彼、カスミは元気か?」
「あぁ、良く一緒に依頼を受けてるぞ!」
「あれからケガは?」
う、してるな。
リーダーは困ったように
「引き寄せるんだよな…まぁでもなんとかな。元気だぞ!」
「調味料をベルシティの神官に送ってくれと頼んでるんだが、買えないとか買えてもやらん、とか。酷く無いか?」
どうやらカスミの調味料を知ってるらしい。
リーダーは少し考えて
「少しだけなら売れるが?」
本当はカスミが沢山持たせてくれてるからいっぱいある。でもそれは秘密。リーダーはきっと味方にした方がいいと判断したんだろう。こう言う時のリーダーの勘は間違いない。
「是非!」
って事で塩胡椒、山椒パウダー、柚子塩に藻塩を売っていた。柚子胡椒は売らないんだ。あ、黒糖は売るんだね。でもこの人からは嫌な感情を感じない。むしろ同類?
僕たちを見て
「君たちも大変だな」
って言われたから。もって事はこの人もだな。まぁ確かに無表情だけど線が細くてくっきりとした二重に薄いグレーの目はとてもきれいだ。鼻も細くて高い。淡いグレーの髪の毛も陽に当たると銀色に見える。
そんな会話をしている間にも、聖女たちが周りでうるさかった。カスミに隠蔽の魔法を教わってて良かった。
そんな事がモスシティであって、本当に疲れた。
やっとベルシティに戻れて(3日ぶり)カスミにあったらなんか変わった?気のせいかな。
で、やっぱり美味しい食事と優しい手。夜が楽しみだよ…ふふっ。
ルキだけでなくロキもそんなことを考えてるとは知らないカスミだった。
双子と一緒に俺もうとうとした。
なんだかんだと俺も情が沸いたんだな…可愛く思えてしまう。
目を覚ますとまだスヤスヤ寝てた。少し日が傾いて来たな。起こさないと、夜眠れないだろう。
白い頬を突く。柔らかいな…むにむに。するとぱくんと咥えられた。おい、やめろ。何が悲しくてやろーに指ぱっくんだよ。俺は一応、ノーマルだ。
いやな、双子とな…しておいてなんだが、俺は完全ノーマルだ。だからなんかやっぱりな…違和感がすごい。
嫌だって拒否するほどでは無いし、ルキとロキなら仕方ないってか普通に有りだ。ほんときれいだから。妄想の中ではパイン付きなんだぞ?
指を救出すると起き上がった双子に指を舐められた。だから離せ!ちゅぱちゅぱ吸うなよ、なんでそんなエロい顔してんだ…はぁ。
その後はソファに押し倒された。せめて夜にしてくれ…という俺の願いは聞き届けられなかった。
「カスミを補充」「カラカラだったから」
俺は吸い取られてカラカラだ!
両側から抱き付かれていたら、ドアが叩かれた。
「そろそろ夕食ですので…食堂へお越し下さい」
起き上がる。ロキが浄化をして服を着た。そう、服をな…
で、両側から指ちょんのエスコートをされて食堂へ。
セイも帰ってたのか、気が付かなかった。
「セイ、お帰り」
「ただ今、カスミ」
席に着くと夕食だ。そう、タウロスと作ったミートローフだ。柔らかなパンもあるぞ!
いい匂いが充満する。ゴクリと音がした。そして食べ始める。ナイフ要らないな、柔らかい。美味い!肉汁たっぷりだ。バターロールもふわふわだ。
「ヤバ、美味い」「美味いぞ!」
「柔らかい…」「肉汁が美味しい…」
「パンも柔らかくて肉は旨味が凄くて…いやほんと最高だ」
ドンドンなくなる。沢山作ったよな?ヒルガとタウロスがせっせと給仕する。
そして溶けた…パウンド型10個分は無くなった、いや溶けた。マジか。
みんな満足そうだ。しかーし、今日は俺も頑張った!
甘味だ。出て来たのは食パンの上にアイス、そしてハチミツがけ。
みんなの目が釘付けだ。
「冷たいから気を付けて食べ…聞いてるか?」
すでにみんながかぶり付いていた。口を窄めて耐える面々。そりゃな…半分も口に入れたらそうなるわ。ほんと人の言う事聞かないんだから。
「ほら、熱いお茶を飲め!」
用意したほうじ茶をゴクゴク飲む。いや、熱いだろ?
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