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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律
第1章 転移した

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89.同郷の消息

 芝生に座っていたからのしかかられている俺だ。頬に頬を当ててすりすり、首元の匂いを嗅いで(やめてくれ!)全身触って(お天道様の下で何してんだよ)キスされた。


「ふはっ」「予想通りだな」

 なら助けてくれ!と声を大にして言いたい。後ろで腹を抱えて笑っているアマランとウルグを睨む。

「いや、悪い。あまりにも予想通りすぎてな」

「いて良かった。ここにいなかったら探しに行った先で同じことされてたぞ!」

 なんだそれ、公開処刑じゃねーかよ。勘弁してくれ。

 やっと離れた双子は俺を見て首を傾げる。


「何か」「あった?」

 何も無いが?首を傾げる。

「何も?」

 双子は変な顔をしつつも頷いた。


 青い稲妻の今回の依頼は荷運びだ。ベルシティからモスシティに、モスシティからベルシティに荷物を運ぶ仕事。護衛じゃ無くてそのまま荷運び。

 何故わざわざ冒険者なのか、それは街道沿いに何やら野盗が出るらしくて念の為だとか。


 モスシティで1泊で帰る予定が、あちらから運ぶ予定の荷物が着かない。それで待たされたと。モスシティに向かう馬車が脱輪して立ち往生。そこで雨に降られて野営を余儀なくされ、2日遅れでモスシティに着くと連絡があったそうだ。


 1泊の予定だったからモスシティからの荷運びは断って帰るつもりが、セイからこ口添えて仕方なく残ることにしたと。


 あーなんとなく分かってしまった。

 俺と2人だとやたらと喜んでたからな、セイが。その期間が伸びるのが嬉しかったとか。後は俺が行方不明だったのもあるかもな。


 で、今日の帰宅となった。お疲れさん。アマランとウルグが疲れ切っていた。双子が急がせて、早く帰りたいと駄々をこねたからだって。想像できてしまう。

「お疲れ!美味い飯食わせてやるぞ!」


 みんなの腹が盛大に鳴った。今は午後2時過ぎ。昼は食ってないのか?

 目を潤ませて俺を見る双子アンドアマランとウルグ。

「たくさん渡しただろ?」

 首を振る。

「食べ切った…」

 マジかよ、どんだけ食ったんだ。


 立ち上がる。仕方ない、食わせるか。

「食堂で待ってろ」

 嬉しそうに高速で頷くと屋敷に入って行った。帰って来てそのまま俺に突撃したのか。

 さて、何を作るかな。


 厨房に入ると

「腹ペコ軍団の到着ですかな?」

「みたいだ。夕食前だしな…取り敢えず腹に溜まりそうなものってーと…やっぱりステーキか?」

「野菜が足りてないかもしれませんし、肉炒めにしましょう。野菜も肉も多めで」

 って事で手分けした。


 薄いパンは俺が焼いて、肉炒めはタウロスだ。俺はパンを焼きながらスープを作る。

 シンプルに塩胡椒で。玉ねぎたっぷりだ。

 パンは野菜とベーコンにチーズを挟んで焼く。香ばしい匂いがする。トマトソース味にした。


 ワンプレートに盛り付けると、お替わりは大皿にドンッだ。

 ワゴンに載せて食堂に入れば一斉にこちらを見た。しかも目が血走ってる。怖え…!

 ヒルガとタウロスが粛々と並べて行く。ガン見してるな。俺はその様子を確認したら、厨房に戻る。

 ヨーグルトのジャム載せでも出してやろう。冷やした状態で食堂に戻ると…ガツガツ食ってた。


 とは言ってもルキとロキは貴族だから姿勢良く音もせず、ただめちゃくちゃ早く食べる。アマランとウルグは豪快だが、マナーは悪くない。ただ、手掴み上等なだけで。双子はちゃんとカトラリーを使ってパンも食う。器用だな。こうして、山盛りあった食事はきれいさっぱり無くなった。


 何処に入ったんだよ?腹膨らんでないぞ?ルキの腹を触っていたら

「まだダメ…」

 何がだ?顔を上げたら…ヤバし。

「夜に」

「いや、違うっ!」

 アマランとウルグはまた腹を抱えて笑っていた。

「甘味は食べたくないらしい」

 シャキッとした。

 笑って取り出すとため息が出た。


「カスミ大好き」「離れない」

「俺も離れんぞ!」「俺もだ」

 ヤロー4人に言われてもな?まぁ嬉しくはあるが。

 冷えたヨーグルトをパクパク食べている。当たり前みたいに皿を押し出す。だよな、はいよっと。お替わりを載せる。


 ようやく落ち着いたのか、居間に移動した。

 もちろんコーヒーだな。ヒルガが用意したカップに淹れる。うん、いい香りだ。


「はぁ落ち着くな」「それな…」

「カスミのそばは心地よい」「大好き」

 はいはい、俺の料理とか諸々がな。

「それだけじゃないんがな」

 思わせぶりなウルグだ。あれか、ガツガツしてないからか?昔からぽわんとしてるとかぽけっとしてるとか言われてたからな。然もありなん。


 それからモスシティでどんな風に過ごしたのかを聞いた。ルキもロキもゲンナリしている。どうやら追いかけ回されたらしい。

 目が見えなくてもシュッとした見た目は目立つ。サラサラの淡い金髪に背が高くて脚が長い均整のとれた体。明らかに上品だしな。ここならまだしも、ホームじゃない街だと俺の存在も分からんし。


「なんかよ、聖女とか勇者とかな…普段は王都にいるんだがモスシティの出身らしくてな。春ごろに街に来たらしいんだ。そいつらが里帰りでたまたまいてな。訳のわからん事言っててよ」

 なんか嫌な予感。それってまんま同郷じゃね?


「若いのか?」

 探りを入れると

「いや、俺と同じくらいだな」

 とウルグ。26とかか。若いだろ、充分。

「訳のわからん事って?」


「異世界きたー、とか顔面偏差値高い、とかこれって逆ハーとか、いやいや普通にどっちもハーレムだろうとか。で、ルキとロキは目が見えたら超絶イケメンで格差婚ね!とかって。で、双子が無視したら前に回って抱きつこうとして。いやいや、わたしヒロイン、とかな」


 あちゃー痛い系の奴か。ヒロインも何も、ポイントで買えるジョブな奴なんだからなんでも有りだろ。ヒロインとか無いな。


「そのもう1人の自称勇者もよ、2人に付き纏って。俺、どっちもおっけーとかさ。なんだろな、あれ?」

「知らない」「要らない」「カスミで手一杯」「カスミは婚約者…既成事実付き、揺るがない」

「「だよなー」」

 確かに、こういう状態を聞くと、双子の為にも婚約して良かったんだな。あぶねー。


「それによ、自称ってのはジョブは間違いないらしいけど、なんか発動?使いこなせてないらしいぜ」

「あー確かに自称聖女も、賢者もだな」

 賢者でロキがぴくりとする。


「賢者は魔法を使いこなすのが大変。カスミの従魔やトーカがいなければ僕も使えてない」

「他のジョブも極意ってのがあんだろうな」

「僕たちはカスミのお陰で飛躍的に伸びた」

「ルキとロキだけじゃなく俺たちもだからな」

「トルフの存在は大きいよな…」


「それもなんだが、考え方というか。カスミはまだ子供で田舎育ちだからとても柔軟なんだ。俺たちだとできないって決めつけてる。それをカスミは当たり前に出来るって考える。ここが違うだけでその後の伸び代が全く違うって分かった」

「俺もだ。魔法なんてそう易々と使えないってな。でもカスミからロキ、ルキとそして俺たちと。あんなに簡単に魔法が使える」

「だからカスミのそばは楽しい」

 食べもんだけじゃ無いのな。ま、それは嬉しいぞ!


 ひとしきり話をして、解散。

「夜ご飯は楽しみにしててくれよ!」

 アマランとウルグは嬉しそうに部屋に向かった。で、双子はなんで俺の両脇を固めてんだ?

「部屋で休まないのか?」

「一緒がいい」「お昼寝する」

 と言うので、双子の部屋に向かう。   


 ソファに座るとルキが俺を膝枕した。

「疲れてるのはお前たちだろ?」

 そう言うと起き上がって俺の膝というか太ももに両側から頭を乗せた。

 サラサラの髪の毛を梳く。陽に反射してキラキラだ。そのまま白い頬を撫でるとやがて寝息が聞こえてきた。


 知らない街だと追いかけ回される双子。ベルシティはそういう意味では平和だ。守ってやらんとな。俺は双子ほど追いかけ回されないからな。

 寝顔はまだ子供だ。18才なんて高校生だし。ゆっくり寝ろよ!気分はオトンな俺だった。




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