87.松茸様の威力
俺はセイと並んでソファに座っている。満足だ…いや、ほんと美味かった。
「カスミ、凄いな…あれ。ラウラリアダンジョンに行くのも仕方ない。ボス戦だけ堪えたらあんな食材が手に入るんだから」
「だろ?ボス戦は…な。そういやセイのボスはなんだったんだ?」
苦笑したセイは
「女…」
はっ?なんだそれ。
「だからな、女だよ…リアルな女」
「ボスが?」
頷くセイ。そんなに苦手なのか。
「カスミに言う事じゃ無いかもしれないが、私もな…人並みに性欲はあるんだ。でもな、いい雰囲気になって、優しくてしおらしくて清楚で。そんな女性の肩を抱いて…事に及ぼうかと言う時にな…」
「あ、あーなるほど。感じたんだな?」
「あぁ、孕んで一生安泰、とか」
うわぁ、引くな。
「金づる籠絡とか」
…マジで?人を嫌いになるレベルじゃねーかよ。
「親友だと思ってた爽やかで人気があった男友達も…妄想の中で私を抱いていた」
なんかもうセイが可哀想過ぎる。苦労してんだな。なのに、俺に触診スキル使ってくれたのか…ほんといい人だ。
その背中をさすりながら
「苦労してんだな」
と言えば俺を見て笑う。
「カスミは裏がないから」
あれ?俺の秘密とかは裏じゃね?隠し事だ。セイを見ると
「誰だって隠し事くらいある。それはいいんだ。カスミは私の裸を想像していやらしいことしないだろ?」
当たり前の前田さんだ!俺はパインを求む。
「だからな、女が苦手で。それがボスだ」
「で、どうしたんだ?」
「叫んだ…無理って」
あーわかる。毛虫見た時の俺だわ。
「ノナが斬り捨てた…いや、助かった」
なんか、申し訳なくなる。そんな事になってるなんて思わず、セイが一睡も出来ないほど心配したとも知らず、好きなだけ食って酔って寝てしまった。
「ごめんな…心配かけたのに、俺…」
くつくつと笑うと頭をくしゃりと撫でられた。
「楽しっかったならいいんだ!」
こんな時、全部言わなくてもセイには伝わるから助かる。
「でもな、私も酒盛りに参加したかったぞ」
と言った。よし、今日は飲もう!
「松茸様はどうだった?」
「私が今まで食べた中で1番だったぞ!」
「ほんとか?」
「勿論だ!」
「よし、酒盛りのつまみに7輪で焼くぞ!焼いて塩振って食うのがまた美味いんだ」
「そうか?なら先に風呂だな」
って事でいつも通りお世話をして風呂から上がる。
いつもならフルーツ牛乳かコーヒー牛乳だが、今日はいっちゃうか!
ウイスキーのソーダ割り。まん丸な氷を入れればいい音がする。カチンとコップを合わせてくびっと飲む。
ぷはぁ、美味い。
さて、7輪で松茸様を焼こう。豆炭に火を灯して松茸様を縦に千切る。
ゆっくりと中から水分が沸いてくる。海塩をひとつまみ。セイと手に取って食べる。はくっ…んまぁい!
いや、最高じゃね?噛むと中からじゅわっと。
ウイスキーをぐびっと、松茸様をはくっと。止まらんな…2人でぐびぐび飲んだ。
目が覚める。うっ…頭が痛い。
「リグ…回帰…」
凄え冷たい目で見られたけど、ぐるりと俺の周りを飛んで…戻った。ふう…お酒はほどほどに。
で、何でこんな感じ?全く記憶はないけど。
俺とセイが裸で寝てる。うん、ハッキリ言おう。何も身に付けていない。着てた服は部屋の片隅にあった。なんであんな遠くに?
セイの部屋のベッドの上で寄り添って寝ていたんだが、ナニがあったんだ分からん。分からんがコハクがしっぽで俺の顔面を殴った。なんかやっちまった感じか?
リグに回帰させたから分からんな。
ま、いっか。どうせセイも忘れてんだろうし。
身じろいだらセイが目を覚ました。そして俺を見て自分を見て俺を見て赤面した。なんだ?今更。裸なんて風呂でいつも見てんだろうが。
「大丈夫か?」
「あぁ…大丈夫だ」
なんか大丈夫じゃ無さそうだ。おでこを合わせる。
「カスミ、その…体は?」
「ん、頭痛かったからリグに回帰させた」
「そ、そうか…なら良かった」
「セイは大丈夫か?」
「俺は2日酔いにならないから大丈夫だ」
なんかセイが変な感じだが、ま起きるか。伸びをして服を着る。ふう、水を飲んで落ち着いた。
「水飲むか?」
「えっ?口移しで?」
なんでヤローと朝から口移しだよ!コップに入れて渡すとあ、と言う顔。どうしたんだよ。
「仕事大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ」
朝飯はお粥だ。何故か俺とセイが飲んだことをヒルガは知っていてちゃんとお粥が準備されていた。飲み物はハーブティーだ。
セイは若干挙動不審なまま、出勤して行った。
部屋に戻るとコハクが甘えて来た。もさもさのしっぽを撫でる。
「昨日は何があったんだ?」
(つーんだ)
ありゃ、これはなんかやらかしたか。
「クリス?」
「コハクに同情します…人たらし」
なんて?
「たらし込むのが上手いんだよ!」
トーカよ、誰が誰を?
「カスミがセイルールを、だろ」
松茸様で胃袋を掴んだからかな。
「ちげーよ、セイルールならきれいだから男でも有りだな、とか思っただろ?」
あー確かに。妄想で抱いたりはしないけど、分かるかもって思ったな。
「体もきれいだしって」
思ったな、確かに。均整の取れた体は普通にカッコいいからな。それは単なる事実だろ。
「で、何が?」
「お前が見たいって」
セイの裸を?ここ最近は毎日見てるけどな。なんならナニだって毎日触ってる、ってか洗ってる。尻だって割れ目だって見て洗ってるぞ!よく見て洗えって言われるからな。俺としては何が悲しくてヤローのケツの穴見てんだよって思ってるけど。
「裸にして股を覗き込んで、ほらこんなにきれいだって言ってたぞ!尻の穴も触りながらここも良く締まってるって」
マジで?それは…ヤバいだろ俺。毎日きれいに洗ってるぞって言いたかったのか?
「もしかして、セイは覚えてる?」
「完璧にな…」
わぁぁ…それでか。
「セイルールも酔ってたからカスミも裸にして触りまくってたぞ!まだ小さいな、とか双子とはここでっとか言いながら」
なんだと?!それは、全く覚えてない。
その先の話も聞いたが、さすがに俺が自分に引いた。まぁセイも大概だけどな。
間違いが起こらなくて良かった。いや、良かったのか?ほぼ間違いだけど、決定的な事は回避したようだ。
そりゃ、体は大丈夫かって聞くよな。
よし、忘れよう!
コハクを抱き寄せて
「コハク…亜空間に呼んでくれ」
チラッと俺を見てツンと顎を上げた。でもチラチラ俺を見る。耳にキスをして腹を撫でる。どうだ?蹴り蹴りされた。可愛いぞ。
そしてコハクを抱えてソファに横たわると目を瞑った。
あ、ここは。ふふっ呼んでくれたんだな。
その後はゆったりまったりとな。ふふふっ可愛い奴だ。
その日も外出禁止令が出ていたので、タウロスに餃子と肉まんに小籠包の作り方を伝授した。試食を食べてヒルガも感動していた。だろだろ?
昼飯は餃子とラーメンだ。2人ともお替わりしてた。美味いからなぁ。
で、夜も是非!ってタウロスとヒルガに言われたからせっせと2人で餃子を作った。俺は小籠包だけ食べるぞ!
セイが帰宅する。迎えに行くとぎこちなく
「ただいま」
と言う。あ、すっかり忘れてたが痴態をな…。
「あの、セイ。なんかごめん」
謝るとそっと肩に触れる。セイがきれいだからって調子に乗ってしまった。
驚いてからふふっと笑う。
「やっぱりカスミだ」
ん?
「ありがとう…私は役得だからな」
爽やかに笑って腹が減ったと言う。だからセイの手をちょんと待ってエスコートだ。
食堂にはいい匂いが漂っている。
食った、俺は小籠包だけだがセイは餃子肉まん小籠包にラーメン、チャーハンまで食った。
2人で腹をさすって笑い合った。
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