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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律
第1章 転移した

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85.ラウラリアダンジョン

説明書きで『カピバラ』になってました。

ご指摘ありがとうございます。

『アルパカ』が正解です、訂正済みです。


 そうだった、毛虫の群れに囲まれたんだった。


 良かった、生きて帰れて。セイは探しに来てくれたのかな?なんかこそばゆい。温もりが嬉しくてまた目を瞑った。


 髪を撫でる手に気が付いて目を覚ました。ん…ふわぁ、よく寝た。あったけーな。すりすり…。あれ?

 顔を上げると笑いを堪えた顔のセイ。


「セイ、おはよ」

「くすっおはようカスミ。小さな子供みたいだな」

 う、寝ぼけてるとはいえ確かに。いいんだ、毛虫の後だから人肌が恋しい。

 答える代わりにそっと寄り添う。耳元でふふっと笑い声が聞こえた。


 あれ、また寝てたか?さっき目が覚めて…顔を上げる。

「そろそろ起きないか?お腹が空いただろ?」

 あ、言われた途端に腹が鳴った。盛大に。


「あははっ…元気な腹だ」

 確かに。セイが起き上がると部屋のドアを開ける。すぐにヒルガがワゴンを押して入って来た。テーブルに朝食を並べると会釈して出て行く。


 セイが俺を抱き上げて椅子に座らせ…無いのか?なぜかセイの膝だ。

「血が足りて無いから」

 まいっか。でもな、この服は?


 裾をつまんでセイを見ると

「俺のシャツだ。血だらけだったからな」

 俺の部屋から服持って来たら良かったのに。

「早く寝かせたかったんだよ」

 まぁいいけど、これしか着てないって誰得だよ。恥ずかしい。


 器からほかほかと湯気が上がる。セイがなぜかスプーンで掬ってふうふうする。嫌な予感。口元に差し出された。見上げると微笑まれる。腹が減ってるし仕方ないか。

 ぱくん…美味いな。体調が悪い時とか酔った翌日にはお粥だってタウロスに教えたのは俺だからな。

 美味い。セイに食べさせてもらってることは忘れよう。


 食べ終わると水を飲む。ふう、腹減ってたんだな。昨日の朝はシリアルバー食べて、でボス部屋に入って。あれ、今は?


 セイを見上げると笑って手を打ち鳴らした。

 ヒルガが入って来てささっと片付けると、セイに抱えられてソファに座る。

 紅茶が用意された。ヒルガが退室するとセイが紅茶に牛乳と砂糖を入れて、手渡してくれる。

 こくん、沁みるな…。思わずほうとため息を吐いた。


「カスミ、今はもう夜だ」

 えっ?驚いて見ると困ったように笑う。

「何があった?」

 それからどうしても欲しい食材があって、でも見つからなくて。だからそれが欲しくてラウラリアダンジョンに向かったと説明した。


「やっぱりか…青い稲妻に声をかけなかったのは?」

 そりゃな…。俺に触れているセイには伝わるだろう。

「縄って…ぶはっ、そりゃ…あははっ」

 笑われた。


「だって別名亀裂のダンジョンだろ?」

「分からなくはないが、じゃあ例えば縄がドロップしたとして、カスミは彼らを嫌うか?婚約を解消するか?」

「しない」

「だろ?1人で行かせて、ケガされるよりはいい」

 頷いた。チラッとセイを見る。聞いていいのか?何がドロップしたかって。


「もちろん、主に食材と文房具だ」

「仕事用か?」

「いや、カスミの入学用」

 驚いた。欲望は無いのか?見上げると

「あるさ、だからだよ。カスミに好かれたい」

 爽やかに言い切った。何故だろう、嬉しさもあるんだがそこはかとなく残念感が漂う。でもやっぱり嬉しいかな。


「ありがとな!嬉しいぞ」

 言ってて恥ずかしくなった。そもそもな、セイのシャツだけってのが。太もも見えてるし。もじもじする中身おっさんの俺。居た堪れないぞ。

 彼シャツ風…早く着替えたい。紅茶を飲み終わると

「着替える…」

「風呂だな」

 被せやがった。


 そしてセイの部屋の風呂場に横抱きにで連れて行かれた。俺を脱がすとセイも当たり前みたいに脱いで浴室に入った。

 で、なんで突っ立ってんだよ!


 お世話をしながら自分も髪と体を洗ってお湯に浸かった。なぜか向かい合わせのお膝抱っこだ。

 セイのきれいな顔が目の前にある。へにょっと笑うと

「リクたちがいてもな…1人でダンジョンにはいって欲しくない」

 心配掛けたし頷いとくか。

「分かった。でもなんでリクたちは俺から離れたんだろう?」


「俺が説明する!」

 トーカが出て来た。久しぶりだな。

「あの黒いモヤは触れたものを腐らせて凶暴化させる。俺たちはカスミのいわば一部だから、俺たちがモヤに触れたらどんな影響がカスミにあるか分からない。だからクリスと俺、リグは具現化を解いた。リクたちはやはり凶暴化してカスミにケガをさせる事を恐れて逃げた。そしたらカスミとはぐれた」


 なるほどな。確かに俺の一部みたいなもんだからな。納得だ。

「なるほどな、分かったよ。リクたちは無事なんだな?」

「ああ」

 ならいいか。


 セイが

「青い稲妻は依頼が長引いて、戻るのは2日後だ。それまでは外出禁止だ!いいな?アイツらがいたら大変な事になるところだったぞ」

 確かに、ダンジョンが消滅する勢いだよな。うん、良かった。

 風呂から上がるとフルーツ牛乳を飲んで、ソファでセイにもたれた。


「もう少ししたら夕食を少なくてもいいから食べて寝るぞ!」

 頷いた。それからダンジョンでのアレコレを話する。松茸様に出会えたくだりではセイが大笑いした。失礼な!美味いんだぞ!


「明日にでもセイと食べような」

「いいのか?」

「心配させたし…」

 ぎゅうと抱きしめられた。


 その後、パングラタンに蒸した魚の胃に優しい夕食を少し食べてセイに包まれて寝た。

 そういやリクたちが部屋に来ないな、なんて思いながら。



 カスミがセイの部屋で寝た頃、カスミの部屋では…


 リクがベッドの上で項垂れていた。ぺちゃんと大きな体を潰して。その横にイナリとコハクもしっぽをぺちょんとしている。みんなベッドの上で固まって時々、カスミの匂いを嗅いでまたぺちょんと。


 大切な主人を置いて行ってしまった…。

 リクはあんな弱っちくて小さなカスミを置いて行った事を。自分が凶暴化したらカスミを殺してしまうかもしれない。だから逃げた。それはカスミを守るため。なのに、まさかはぐれるなんて。

 いや、そのまさかを起こすのがカスミだ。

 待ってれば良かった。後悔したが、見つからなかった。


 その時、カスミは金苔でやたらと高度な隠蔽をして休んでいたから、リクでも見つけられなかったのだが。


 結果として、あんな弱弱(そんなに弱くは無い)なカスミをダンジョンに置き去りにしてしまった、そう後悔していたのだ。

 カスミの小さな手に撫でられるのは嫌いじゃ無い。

 体を拭いてもらうのも悪く無い。ご飯だって美味しい。時々抱きつくのはウザいが、子供だから仕方ない。

 なのに…


 そう考えて落ち込んでいたのだ。もし、カスミに拒否されたら寂しいなと思っていた。

 ぺちょんと潰れている白玉、イナリ、こはく、あんこ、カラスとスズメ、スイも同じ気持ちだ。

 特にコハクは伴侶なのに、と思って落ち込んでいた。カスミに拒絶されたら…

 そう思うと耳までぺっちょり潰れていた。


 夜、コハクはカスミを思って鳴く。

 すると

(コハクの声か…?どうしたんだ)

 カスミの声が聞こえた。

(カスミ…)

(コハク、ケガしてないか?無事なんだよな?)

 その声を聞いて安心してそして切なくなって亜空間に呼んだ。カスミは私を見つけると走って来た。


「コハク、良かった!ケガしてないよな?」

 体を触って確認する。もう、カスミってば私のことばかり。

「その…」

 嫌われたくなくて俯いてしまう。


「どうした?元気ないな」

 頬に手を当てると上を向かされる。感情が上手く制御出来ない。

 軽く唇が触れた。

「良く分からんが…そばにいるからな」

 もうそんな言葉を聞いたら嬉しくて…だから…


 猫足のベッドに隣り合って寝た。大好きだよ、カスミ。




聖獣は黒いモヤ、瘴気に触れると汚染されてしまう



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