82.秋の訪れ
俺は今、唸っている。どうしたもんか…由々しき問題だ。
俺たちはベルシティにあるセイの屋敷で暮らし始めた。ここではリクも部屋に入れる。
俺はリクにもたれて唸っている。どうしようかな。
季節は9月で秋。昼間はまだ暖かいが、朝晩は過ごしやすくなった。
そう、この世界には四季がある。ここベルシティは日本で言うと神戸みたいな気候。雨が少なくて乾燥している。そして夏は暑いが、冬は東京ほど寒くなくて過ごしやすいらしい(広辞苑による)
で、何故唸っているのか。
それは松茸さんに出会う方法。秋だ、味覚の秋だ!食い物、この時期にしか出会えない食材が欲しい。
山か、山なのか…?しかし、広辞苑で調べたら松茸さんはいなかった。しょんぼりだ。
しかし、注釈を見つけてしまった。
ダンジョンなら出会えるかもと。
なんでも不思議なダンジョンで、自分が欲するものがドロップするんだって。
ならば欲しいのは松茸オンリーだ!ドヤッ!!
そんなカスミを呆れた目で見るクリスとトーカにリグだった。
でもなぁ欲望が反映されるダンジョンはなかなか人気がない。爽やか男子が入ったら際どい女性用下着がドロップするとか、清楚な女子が入ってムチとか縄がドロップするとかな。
別名、本能ダダ漏れダンジョン。
名前からして嫌だって人もいる。果敢に攻めて、解散したパーティーは数知れず。またの別名を亀裂のダンジョンと言う。
行きたい、めちゃくちゃ行きたい。でもダンジョンは危険だ。そう思ったが
(ハイパー賢者のくせに…)
とトーカに言われた。悩む、松茸に出会いたい。でも万が一、無意識の欲望で変なもんがドロップしたらと考えてしまう。パインに触りたいとか思ったら…おっぱいチョコみたいなのがドロップするかもだし。
それで朝から唸っている。
松茸、舞茸、銀杏はあるが果物。そうそう、ゴールデンアップルとゴールデンピーチは収穫ができるほど成長した。そうすればリグが活躍。
で、シロップ漬けやジャム、干し果物にした。もちろん、凍らせたりもした。
セイに貴重過ぎるから売っちゃダメと言われて自家消費中だ。
梨とぶどうが食べたい。
やはりここは本能ダダ漏れダンジョンしかないか。唸りまくっていたら、リクに咥えられて背中に放り投げられた。
(うだうだと…行くぞ!)
あ、はい…決定な。
ダンジョンにはBランク以上で入る。パーティーでもいいし、ソロでもいい。普通はソロで入らないが、俺はテイマーだからアリだろう。
今日、青い稲妻は泊まりでモスシティに行っている。俺はモスシティにはいい思い出が無いし、セイにも止められたので留守番だ。
だから唸っていた。彼らを本能ダダ漏れダンジョンに誘うのは気が引けたから。
連れて行っても酒とかしか出ないとは思うけどな。双子から縄とか出てきたら流石に引くからな。
で、リクに強制連行されてやってきたダンジョン。ベルシティからは馬で1時間半ほど。リクなら30分で着いた。
いや、本当に人がいないな。欲望が嵌ればこんなにいいダンジョンは無いのに。
入り口で手続きをする。俺を見て大丈夫か?と言う顔をした兵士さんはBランクのギルドカードを見て安心した。
「気を付けてな!」
手を振ってダンジョンに入る。
この国のダンジョンは国が管理している。委託して冒険者ギルドが管理をしているが、国の持ち物だ。
魔獣が溢れないように監視するのも彼らの仕事。だから不人気ダンジョンに入るのは喜ばれる。
ここの本能ダダ漏れダンジョン、本当はラウラリアダンジョン。カッコいい名前なんだけど、ダンジョンが空気を読みすぎて敬遠されるという珍しいダンジョンだ。
ドロップ品も多岐に渡るから、不人気なのも分かる。お宝に夢がない。
さて、ダンジョンとは?
魔力溜まりから生まれるという不思議な場所。多分、いわゆる別空間、亜空間に存在する。
それ自体が生きてると言う人もいるし、ラノベあるあるのダンジョンマスターが運営してるという考えもある。
空気を読むダンジョンはどっちだろうな?もしダンジョンマスターが個人の欲望に合わせてるなら、それは心の中まで見透かされてるって事だ。なんだか嫌だ。
魔獣が出てきて、罠なんかもある。魔獣を討伐すればお宝もドロップするし、宝箱もある。
俺は無警戒で進む。だってガチの結界をしているし、トーカが罠を見破る。クリスも顕現しているし、そもそもリクの背中だ。
安全安心なのだ。
罠が発動して矢が放たれたり、足元に落とし穴が開いたりしているが、全て回避。
そしてようやく魔獣が出てきた。ゴフゴフ言ってる。ちなみにダンジョンの魔獣は討伐しても吸収されてしまうから、素材にならない。なので、何の魔獣でもある意味変わらない。
お宝を落とすのを待つだけだ。
リクの背中から剣を振る。よくキレるな…オリハルコンコーティング。
そうそう、アマランとウルグ、ルキ、ロキはオリハルコンの剣を打って貰った。素材持ち込みだから案外安かったらしい。夏いっぱいかかったとか。
で、元の剣へのオリハルコンコーティングはクリスがした。どちらの剣も最後にクリスがなんかしていた。エンチャント?魔法付与だって。
俺の剣にはって聞いたら自分で出来るでしょって。そりゃそうだ。てへっ。
で、オリハルコンコーティングの剣に風魔法とか火魔法とか水魔法とか雷魔法とか氷魔法を付与した。自動で最適な魔法を載せるようにな!俺?ただ振るだけだ。
トルフに師事した事で、かなり振れるようになった。まぁクリスによるズル込みでな。
スパスパ切るが、何もドロップしない。やっぱり低層はダメか。最短ルートをトーカで確認しながら(ダンジョンを視て)進む。そして魔獣はボチボチ狩りながら、階段を発見した。
ここは階層ごとにボスがいないダンジョンだ。代わりに3階層ごとにボスがいる。中途半端だ。
2階層もさして変わらず、なかなかドロップしないまま進むとトーカが
「隠蔽された部屋がある」
マジか?お宝の予感!
リクが脚で蹴ると確かに部屋があった。しかし、骸骨もいた。先客はかなり前なのか?ちょっとビビって部屋の前で引いてると、空気を読まずにリクが入った。待て待て、大丈夫か?
骸骨が立ち上がった。これってなんか浄化とかいるパターンでは?
「すれば?」
トーカが冷たい。
「えっと、じゃあ浄化ー静かにお眠り下さい…」
手を合わせて祈れば消えた。
何だったんだ?
「あ、宝箱!」
落ちてた。どうしよう、松茸入ってたら。
リクから降りて開けようとしたら、リクが開けた。
あ…誰の欲望が反映されるんだ?
宝箱の中は肉だった…。リクの欲望だな、分かりやすい。
「リク、俺が開けたかったぞ!」
(フン、乗ってるだけだろーが)
う、まぁそうだが浄化は俺がしたんだ!
で、リクから降りてみた。
やっぱりすぐ乗った。だって落とし穴とか矢とかさ…こわいじゃん?
(ケッ)
リクはビビった俺を咥えて背中に放り投げた。優しい、大好きだよ!リク。頭に抱きついたら顎でビンタされた。
で、2階層を終えて階段から3階層。
そこでリクから放り出された。頑張って歩こう。罠や攻撃は結界でなんとかなるみたいだ。俺はリクの横を歩いていた。魔獣はまだそんなに強く無いから、剣で一振り。
松茸さんやー松茸さん。早く出ておいでー!
おっ、なんか壁に歪みがある。よし、切るぞ。
「主、ダメです!」
スパンッ
えっ?クリスを振り向くと青ざめている。
(チッ)
ゾワッとして視線を戻すとわらわらとネズミが這い出してきた。うわぁ、なんだこれ。真っ黒なモヤに覆われて目は真っ赤だ。
「バーサーク(凶暴)化した毒ネズミ。あの瘴気に触れたら腐る」
えぇ…怖え。逃げなきゃ!
と思ったら誰もいない、あんな遠くに。待ってくれー!
しかしあえなくネズミに追いつかれた。腐るのは嫌だ…なんとか、して…瘴気を浄化だー!
ふうふう、怖い、マジで怖い。もうほんと嫌。
しばらくはうだうだした話しが続きます
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