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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律
第1章 転移した

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76.事件の全貌

誤字報告ありがとうございます…

助かります




 ベルシティに帰って来た翌日の夕食で謝られた。

「カスミ、申し訳ない…」

 深々と頭を下げるのはセシア兄様だ。俺は複雑な顔をしていたと思う。ただ黙っていることしか出来なかった。セイにそっと近づく。


 セシア兄様は顔を上げると

「レムリアだ。唆されて、敵を公爵家に入れた」

 俺のことを友達に愚痴ったら、気に入らない平民は懲らしめなきゃと言われ、誘拐犯を屋敷に入れたようだ。

 懲らしめるの意味も聞いていたらしい。公爵家の人間では居られなくする。その為に既成事実を作ると。


 その内容を何処まで把握していたかは不明だが、俺を害する意図はもちろん分かった上で。しかも、公爵家にはいられない、で何をされるかもおよそ分かっていた筈だと言う。


 子供は本当に残酷だ。嫌いだから害する、そういう事だ。それほど俺の存在を許せなかったんだろう。

 その気持ちもわからなくはない。

 レムリアは公爵家から遠縁の田舎に住む貧乏男爵家に出されることになった。

 唆した子は伯爵家の子で、そちらは貴族籍を剥奪の上、終身刑だそうだ。鉱山でキツイ労働をさせられる。


 直接の加害者である兄弟は、侯爵家の跡取り息子で兄の方はルキたちの同級生らしい。

 何やら双子も変な薬を盛られていて、それもその兄弟だ。話によると、奴らは男が好きできれいな顔の双子に執着していたみたいだ。


 そこでレムリアやオランジュから平民をセイが養子にしたと聞く。彼らはセイにも憧れていて、だからレムリアとオランジュに密かに接触していたのだ。

 俺の婚約者が年若い侯爵家の双子だとも聞いた。

 直接会ってはいないが、当て嵌まるのはルキたちだけ。


 で、セイと双子に囲まれた平民の俺が許せずに攫った。元々は他の奴に俺を渡して傷物にしようと思っていたようだ。そしたら意外と顔が好みだったので、それなら自分たちがしてしまえばいいと思ったらしい。その上で、俺を取り戻したいなら体を差し出せと、双子に言うつもりだったと。


 アホすぎる!

 色々と無計画だろ。後で聞いたら、俺が害されるならリク、イナリ、コハク、あんこたち兄弟が黙っていなかったようだ。

 街ごと破壊するつもりだったと聞いて青ざめた。マジかよ…寝覚悪すぎだろ!


 ある意味、奴らは双子のお陰で命拾いしたな。

 しかし、禁制薬については証拠がない。だから追い詰めて2度とこんな事が出来ないようにする為、実家に帰ったのだ。兄弟は今、軍に捕縛され牢に別々に入れられている。


「カスミ…」

 セシア兄様の言葉に、俺はそのまま顔を上げられなかった。

「カスミ、私は公爵家から抜ける。伯爵家の爵位を持っているからな、カスミも伯爵家の人間として過ごせばいい」

「セイルール、それは…」

「兄さん、姉さんの商会への参加は無しで」


 公爵家を捨ててまで俺を守ろうとするセイの気持ちが嬉しくて、対比して俺を害した公爵家が怖くて。どうしていいのかも分からなかった。

「今すぐじゃないから、少し休んで整理しよう。兄さん、公爵家の商会の手伝いは不要です」


 セシア兄様に何か言うべきだと思ったけど、やっぱり少し無理で。中身はおっさんでもこの体はまだ12才。無理せず子供らしく今は黙っておこう。

 気持ちの整理もまだ出来ていないし。


 実は商業ギルドからも商会に手伝いを派遣できると言う打診があった。ただ、こちらは俺だけじゃなくルキとロキがいるから、人を選ぶ。俺の能力も秘密だから尚更だ。


 だとしても、セイは公爵家の手伝いを断った。何気に俺のケガは全てにセイが関わっている。

 なのにセイはいつだって悪くない。なんだろうな、これ。


 その夜、セイに

「私が怖いか?」

 と聞かれた。全く怖くないので

「怖くない」

 と答えると泣きそうな顔をした。

 気が付いたんだろう、セイがかいることでたまたま俺がケガをすると。

「たまたまだ!セイは悪くない」


 泣かれた。マジか…。俺はまだ人に触れられるのがダメで、だからセイとも距離を置いていた。

 その距離がセイを追い詰めてる気がして、そっと抱き付いた。ん…まだ変な感じ。でも大丈夫だ、セイなら安心出来るから。絶対に俺を傷付けないと分かるから。

 優しいセイの腕に抱きしめられて目を瞑った。



 カスミを守りたいのに、結果、私がそばにいる事で傷付けているのではと不安になった。

 だから私が怖いかと聞くと怖くないと即答してくれた。不覚にも泣きそうになる。まだ薬の影響というよりは、気持ちの問題で人と距離を積めるのに躊躇うカスミが自ら距離を詰めてくれた。


 辛いだろうに私を抱きしめてくれる。その小さな体をそっと抱きしめた。

 ぴくりとしたが、カスミは私を離さなかった。レムリアのことはまだ子供とは言え、許せない。


 貴族の中では1番高い爵位。それだけで周りがちやほやする。何の功績がなくとも、ただ貴族の家に生まれただけで。

 勘違いしないよう気を付けていても、どこかで自分たちは特別だと思ってしまう。私は貴族らしからないが、またそれが子供達にはカッコよく見えてしまったのも良くなかった。


 レムリアと私の年齢差は17。なくもない歳の差もあり、どこかで私と結婚するのだと思っていた節がある。

 まだ子供であるレムリアだが、触れれば欲まみれ。私が安心して触れられるのは少数の友人とカスミと青い稲妻だけだ。

 彼らは潔いほど裏がない。双子も心の中は分かりやすい。カスミは心までポケッとしてる。


 双子はカスミに恋愛的な感情は持っていない。いないが、ひたすら心地良いのだとか。そばにいたい、触れていたい。それこそが特別だと思うが、自覚はしていないようだ。


 カスミも双子に優しいが、全てを許してるわけでもなく、ダメな時はダメだと言う。それがまた堪らないのだろう。

 私は距離を詰めてくれるカスミの震える体を抱きしめて、かならず守ると心に誓った。




 ベルシティに戻ってからしばらくは、リクに甘えて過ごした。何でリクって感じだけどな。一緒に寝た事が無かったリクが俺を体に巻き付けて寝る。

 リクに完全に包まれてるのはなかなか心地よい。何と言っても安心感がな。


 ちなみに部屋にはクリスが全方位で、結界を張った。ガチの奴だぞ?

 アリ1匹すら通さない。ふははっ!


 部屋でダラダラするのもいい加減飽きた頃、アマランとウルグが依頼に誘ってくれた。

 それで、リクに乗ってポテポテ歩いている。歩いてると言うか、乗ってるだな。楽ちんだ。いや、歩こうとしたんだがな、リクに背中に放り投げられた。

 やっぱりツンデレだな、リクは。


 久しぶりの外は心地よい。風を感じながら進む。先頭にアマラン、俺で後はウルグ。守ってくれてるようだ。

 ポテポテ進んで1時間ほどで目的の森に着いた。そのまま進む。すると、開けた。

 うわ、凄いな。そこは湖だった。意外と広い。そして吹き抜ける風が気持ちいい。


「うわぁ…」

 凄いな、こんなところがあるんだ。俺はしばらく湖畔で風を感じていた。

「良いところだろ?」

「うん」

 アマランが頭を撫でる。嫌じゃない、大丈夫だ。


「えへへっ」

 笑うとアマランも笑ってくれた。ウルグが後ろから俺を抱き上げる。

 うわぁ、目線が高い。ごく自然にウルグに掴まる。

「高い!」

「格段だろ!おチビ」

「酷いなぁその言い方」


 はしゃいで応える。その日はそこでのんびりした。依頼?なんか湖で取れる魚の捕獲らしい。

 リクが雷でな、瞬殺だった。

 アマランもウルグも俺も大笑いだ。なんか楽しい。貴族とか面倒くさいなって思ってしまった。


「貴族とか平民とかじゃねーと思うぞ」

「そうだ、気持ちだ。気持ちの持ちようだ」

「笑えって」

「笑ってりゃ大抵のことはなんとかなる」

「金に困らない、住む場所がある、頼れる俺たちがいる、男だがきれいどころがそばにいる、守ろうと考える奴らがいる、恵まれてんぞ!カスミは」

「そうだぞ!だから笑えっ!今日食うものがあることに感謝して、楽しめ」

「あ、俺たちはカスミの飯しか食えなくなったからな、責任取れよ?」

「それな、一生ぶら下がるぞー」


「なんだよ、それ!あははっ。そうだな…まぁ恵まれてんだろうな!面倒ごとも引き連れてるけどな?」

「あははっ、有名税ってか?偉くなったもんだ」

「今から寄生しとこうぜ?食いっぱぐれない」

「そうだよー!せいぜい頑張って?くすっ」

「言ったな!ほれ」

「うわぁ…」

 湖に放り投げられた。もちろん、結界があるのを分かっててやってるんだ。酷いな、もう。


 リクがスイスイ泳いで俺の襟を咥えると背中に放り投げた。凄え、楽しい!

 手を振ったらアマランとウルグが腹を抱えて笑っていた。




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