73.婚約のその後
貴族同士の婚約は貴族同士で契約を交わす。貴族院に届け出はするけど、婚約はそれぞれの家が認めれば成立するのだ。
契約書を交わしてここに正式に婚約が成立した。
ちょうど昼ご飯だ。今日はここにいるメンバーで食べるらしい。いつもならセイに手を引かれるのだが、婚約者がいるので俺はルキに手を握られている。相変わらず指先ちょこんだ。
そうして食堂に移動。両隣をルキとロキに挟まれた。
昼はスープにサラダ、パスタと魚料理だった。
見たことのある魚だ。チラッとセイを見ると頷いた。
そこで双子の父親にお礼を言われた。オリハルコンだ。
「貴重な鉱物の取引を我が商会に任せて貰えて光栄だ」
の話から、ルキたちのお兄さんがこちらの商会に入ることを聞いた。セイが了解したとか。
「実務に強い方でな、ポーションの販売にも手を貸してもらうんだ」
そこはセイにお任せだ。
昼ごはんを食べ終わるとまた、居間に移動した。そこで商会に加わるルキたちのお兄さんに合った。
「リベリアーノ・ド・シュプラールと申します」
丁寧に頭を下げたその人は銀髪に紫の目の美形さんだった。双子にそっくりだ。
そこで俺は双子に贈り物があったことに気がつく。
「あの、少し宜しいですか?」
みんなの注目を集める。お父様が
「なんだい?」
「ルキとロキに…」
そう言って亜空間から箱を取り出す。もちろん、オリハルコン製だ。
それを向いのソファに座る双子に手渡す。
「開けてくれるか?」
2人は頬を染めながら箱を開ける。中にはシーグラスと水晶で作ったネックレスとピアス、指輪が入っていた。
こぼれ落ちそうなくらい目を開いた双子は俺に箱を渡す。俺は指輪を取って左手の小指に嵌めた。指輪に軽くキスをする。祝福、だな。
ピアスはどうするかな。ルキの細い指が俺の髪の毛を耳にかける。
「お揃い」「嬉しい」
「これは、耳に穴を開けるんだ」
「構わない」「一緒がいい」
耳に触れると突き刺した。その後、耳にキスをする。簡単な治癒魔法だ。
「これも…」「して…」
留め具を外して首にかける。
おい、なぜそこでキスをする?やりにくいだろうが!
しかもみんなが見てる前で。自分でしておいて頬を染めるな!
「あっ…」
これもあったな。亜空間から紫のバラを出した。2人の目の色だ。それをスーツのポケットにさす。自分にも同じものをさした。
「「お揃い…」」「お揃いだ」
そっと抱き寄せられた。良かった、喜んでくれたみたいで。
俺は席に戻るとセイのポケットにも青いバラをさした。頭を撫でられた。
「あの、どこから?」「バラはどうやって?」
「箱はまさかオリハルコン…」
侯爵家のみんなが固まった。
「亜空間から」「取り出した」
「バラは状態保存」「色が変わらない」
「その通りだ。簡易鑑定は使えてるな」
双子の家族は双子を見る。
「カスミに教わった」「亜空間も使える」
「転移はまだ」「頑張る」
そこから俺が亜空間はもちろん、転移も使えると知って驚いた。というか、その目には恐怖が合った。
「大丈夫」「カスミの転移はベッドから抜け出す時に使う」
その説明を聞いてみんなが一瞬、ポカンとしてから爆笑された。
「天下の転移魔法を…」
「ベッドから抜けるのに…」
俺は憮然とした。便利なんだぞ!
商会の話になり、俺は髪と体用のそれぞれの専用石けんをお披露目した。
ローズ、ラベンダーとティーツリーだ。
お母様とアンナさんの目が怖い。なんかギラギラしてる。さらに髪の毛と体に使える保湿液もお披露目する。
「いい匂い」「髪の毛専用」「保湿液」「売れるわ!」
思わずセイに抱き付いた。セイは肩を抱きしめてくれる。
バッと顔を上げた女性たちは
「まずは試しましょう」「私が責任を持って」
「お母様」「もう試した」「サラサラ」「艶々」
「カスミの髪の毛も肌も」「つやつや」
えっ?転移したの??目の前にお母様とアンナさんが。俺の髪の毛を頬を撫で回す。恥ずかしい…セイに抱き付くと
「おほん、お二人ともカスミが怖がります」
「あら」「やだ」
席に戻った。怖かった。
「あの、お、お近づきの印にぜひ…」
「「いただくわ!」」
即手に持った。手を伸ばそうとしてお父様の手を叩いて。俺は亜空間から取り出すと、各人に手渡した。
ついでも女性陣には化粧水と保湿液を、男性陣には化粧水を渡した。クリスで作れたから問題ない。
「もしかして」「奇跡の水…」
頭をかくと
「私たちのカスミ殿を守りましょう」
「えぇ、私たちのカスミを守り抜くわ」
「カスミ殿は誰にも渡さない」
「私たちのカスミだ」
「「僕たちの!」」
いや、誰のもんでもねーよ。セイが俺を撫でて
「カスミを守りたいだけだ。攫われて既成事実とかいやだろ?飼い殺しだぞ」
勘弁してくれ。
こうしてコーヒーを出して感動され、携帯食のシリアルバーで泣かれた。保存が効くから孤児院への配布に最適だとか。あと、孤児院で作れば収入になるらしい。
作り方とか登録してないからな、明日にでも登録の運びとなった。石けんもだ。
その日は主に商会の打ち合わせをして、終わった後にバラを見ながら双子とお茶をして夕食だ。
驚いた。タコしゃぶが出たから。しかも、小さな鍋付きだ。魔道具だって。凄えな。
しゃぶしゃぶはもちろん、付き人がやる。しかし、俺は自分でやった。なぜか双子の分もだ。
タコは美味いよなぁ。たこ焼き食いたくなるな。
「たこ焼きが食べたい…」
ポツリとセイがこぼした。それを拾ったのはセシア兄様だ。
それからあれよあれよという間に道具がセッティングされ、クリスが材料を整えた。よし、いっちょやるか!
みんなの前でたこ焼きをくるくる回してつくる。
最後に皿に盛ってソースをかけたら出来上がり。俺の警戒音がマックスだ。彼らはきっとたくさん食う。
1人10個だぞ!タコも有限なんだ。ソース?それはクリスがいれば再現できるから無問題だ。
そして予感的中。食べ終わった面々が皿を呆然を見つめる。
「もっと」「食べる」
おい、ロキ。言い切ったな?
俺はまたせっせとたこ焼きを焼いた。なんと、公爵家からタコが差し入れされたから(泣き)逃げ場がなくなった。
俺もクリスも頑張った。どんな胃袋してんだよ!ったく。その後は疲れ切った俺を膝枕してご満悦な双子たちとお互いの家族でコーヒーを飲んだ。チョコチップクッキーも出したぞ!
団欒が終わる前に
「昨日は助けてくれてありがとう」
義父予定のジェノバさんに言われた。ん?セイを見る。
「昨日の魔獣に襲われていた馬車だよ」
びっくりした。双子は分かってたみたいだ。
「僕たちからもお礼を」
「家族を助けてくれてありがとう」
「まぁなんだ、近いうちに家族になるからな」
と言えば真っ赤になった。双子の恥じらいセンサーはなかなか難しいな。
その日の夜は婚約者となったので、双子と過ごすみたいだ。やっぱりお風呂で疲れて、昨日のバスローブを着た。お風呂上がりはフルーツ牛乳だ。
そして、双子に挟まれてソファに座ると
「しゅわしゅわと」「お酒…」
まぁなんだ、婚約記念か。俺には縁遠い世界だったからな、祝ってもいいか。あちらの世界では未経験だからな。
って事で飲んだ!美味いなぁ。今日は果樹酒じゃなくてウイスキーのソーダ割り。なんかジェノバさんの差し入れだって。あぁ、コクがあって喉をするりと通っていく。美味い…ヤバいなこれ。
婚約した日に酔っ払って記憶なくしていいのかな。
ん?双子がなんか言ってる。
「待ってた…」
「やっと…」
「…優しく…」
「もう…出来ない…」
なんかふわふわして柔らかくて温かくて気持ちいい…
そして翌朝、目が覚めて俺は叫んだ。
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