72.とんでもない能力
セイルールとカスミが退出し、オランジュと気絶したレムリアも部屋に戻した。
私は妻と息子たち、ナタリアとを見回した。
「予想以上だったな」
「はい、あの食事にカスミが作った調味料が使われていたのですね。どれも大変美味でした」
「あぁ、久しぶりに来たら味が変わっていたから驚いたが、カスミだったのだな」
「魚の食べ方も工夫されていましてよ?食べたことがありませんが大変に美味しくて、驚きましたわ」
「聞いてはいたのだけど、やっぱり実際に食べると良く分かるわ」
「しかも、あの魔法操作」
「咄嗟に周りを気遣う余裕があるなんて」
「操作も完璧だ。火が蒸発する時に周りの熱を奪う…知っていたか?」
誰もが首を振る。
「思った以上だな。婚約者候補の彼は魔術師だ。高め合えるな」
「実際にカスミと知り合ってからセイルールも含めて魔法の腕がメキメキ上がったとか」
「守る為にもシュプラール侯爵家の双子と縁づくのは結果として素晴らしいな」
「セイルールによれば、他国の剣聖がギルドの雇われになったとか。双子の片割れは剣に関するジョブと聞いております」
「ならば、カスミを守る剣となり盾となるな」
「はい、任せるのにはうってつけです。ただ、釘を刺しておかないと」
「どういう意味だ?」
セシアナが
「どうやら引きこもっていた弊害か、カスミにとてもその…」
まさか?カスミはまだ12才だ。
「風呂の世話などもしてもらっているようで…」
「あー」
それはまぁ仕方ないのか。
「任せられる人が少なく人選が難しいと聞いておりましたので」
なるほど。傾倒する理由しかないか。そこでもってあの料理だ。
「ん…セイルールを後で呼んで注意してもらおう」
「セイルールと寝かせれば良いでしょう」
「そうであるな」
とそんな会話の後、セイルールを呼んだ。
「まだ正式な婚約者では無いからな、時期を待てと」
「父上、楽観は出来ません。カスミ自体は力の弱い子供です。暴力に慣れていないので、咄嗟に受け身が取れません。それに、そもそも人に害されるという警戒感が薄い」
ギルドでの一連の騒動について話をすると考え込んだ。極端な話、カスミを攫って既成事実を作られてしまえば、婚姻を断れなくなる。
カスミの価値はそれほどまでに高いのだ。
「正式な婚約は明日にでも、その後に婚前交渉も視野に入れるべきかと」
「ふむ、あちらはどうなのだ?」
「双子はすでにその気です」
「カスミのそばは心地よいのですよ。彼を自分たちのものにしたいのでしょう」
それも分かるか。
「今日はダメだぞ」
セイルールが頷いた。
こうしてカスミの知らない所で婚前交渉は承諾されたのだった。
俺は双子を風呂に入れた。出た後に着る服が用意されていて、双子とお揃いだ。でもこれっていわゆるバスローブか?前合わせで腰紐を結ぶ。下着はもちろん付けたが。浴衣なんかもだが、起きたら大抵乱れてるんだよな。
しかもこれ、結構薄い生地だ。肌が透けるぞ?
双子を見ると頬が赤い。あったまったからな。
フルーツ牛乳を出して飲む。美味いなぁ。飲み終わるとまた前後から挟まれた。どうした?見上げるとロキの目が潤んでいる。
髪に触れる手がほんの少し震えていた。
「どうした?」
「!!」
ドアがノックされた。双子は反応しない。
(セイルールだ)
「セイだ、開けるぞ!」
「「ダメ!」」
クリスがドアを開けた。セイは俺たちを見ると慌てて俺だけを抱き上げた。
「今日はダメだ」
「今日は?」
「正式に婚約してからだ」
少し考えた双子は聞いた。
「「明日?」」
「あぁ」
ルキとロキはセイに抱えられている俺のおでこにキスをすると
「「カスミ、おやすみ」」
何だったんだ?
そのままセイに抱えられて自分の部屋に戻った。
「後でまた来る」
そう言ってセイが出て行った。
クリスに
「どうしたんだろうな?」
ジト目で見られた。
着替えよう。なんか落ち着かない。いつもの服に着替えて落ち着いた。
トーカを呼んで公爵家のことを聞く。他に領地の事とか。後はルキたちの実家の話も聞いた。
コーヒーを飲んでいたら、セイが部屋に来た。気が付いたクリスがすかさずドアを開ける。
あぁ風呂か。サッパリとして軽装でやって来た。
フルーツ牛乳の後、コーヒーも飲んだセイに、明日のことを聞いてから寝ることになった。
「俺と寝るぞ」
よく分からないが、まぁいいか。温かいからか。
こうして公爵家での初日は終わった。
翌朝、目が覚めるとやっぱり抱き枕だった。寝る時は普通に隣り合ってたのにな、不思議だ。
セイも目を覚ましたので起きる。セイは朝食をこの部屋で食べるといって部屋に戻った。
俺はクローゼットから服を出して着た。立襟のシャツにスーツだ。セイが戻って来た。カッコイイな。美形は何を着ても似合う。
ヒルガさんが運んできた朝食は薄いパンにベーコン、卵とスープにサラダだった。
薄味なのがちょうどいい朝ごはんだった。飲み物は紅茶。香りのいい紅茶は美味しい。
リクのいる厩舎にセイと向かう。
リクはちゃんとご飯も水も貰っていた。当たり前か。
(飯寄越せ!)
でも足りなかったのかな?
カバンから出した台にお肉とお魚を盛った皿を置く。
桶はスイにきれいにして貰って水を満たす。
お湯で絞った布で体を拭けば嬉しそうだ。口元も拭うとふかふかの頭を撫でる。可愛い。
カラスもスズメもきれいにすると嬉しそうに鳴いていた。
そのままセイと庭を散歩する。
気持ちが良い庭だった。あ、バラだ。大ぶりできれいなバラ。
「セイ、あのバラをもらってもいい?リグに回帰させるから」
「構わんぞ」
バラを4輪手折った。すぐに回帰させるリグ。俺はそれを状態保存する。プリザーブドフラワーのイメージだ。
それを亜空間にしまった。
部屋に戻ると少し作業をした。セイは部屋に一旦戻った。
10時頃にセイがまた部屋に来てエスコートされた。昨日と同じ大きな部屋に入る。
「父上と母上が来る」
挨拶だな。
しばらくすると騒がしくなった。この部屋にお父様とお母様が入って来た。
「セイルール、カスミ、おはよう」
「「おはようございます」」
同じ側に座る。セイ、俺、お父様にお母様だ。やがて部屋のドアがノックされる。
「シュプラール侯爵家御一行が到着されました」
「入って貰え」
ドアが開くとまずロキ、ルキそして男性と女性が入室した。
お父様とお母様はゆったりと座っている。これが爵位の違いなのか。
「まずはお座りください」
執事に促されて着席した。
ルキとロキは少し緊張しているみたいだ。今日は髪の毛を上げている。きれいな紫の目が良く見える。
双子の父親は銀髪に紫の目。顔は双子より凛々しいが美丈夫だ。母親が淡い金髪に緑の目。優しそうな美人さんだ。2人をいい感じで足したのが双子か。
2人をボーッと見ていると目が合った。優しく微笑まれる。
「お忙しい中、時間をとってくださり恐悦至極に存じます。私がシュプラール侯爵家当主のジェノバ・ド・シュプラールと申します」
「同じくシュプラール侯爵家のハンナと申します」
「挨拶いたみいる。良く知っている仲ではあるが、挨拶は大切故な。私がセナリック・ド・パルシェン。公爵家の当主だ」
「同じくパルシェン公爵家のカトレアですわ。ハンナ様、先週もお会いしましたわね、今日はどうぞよろしく」
「改めまして、息子をご紹介いたします。三男と四男になります」
「ルシアーノ・ド・シュプラールと申します」
「ロシアーノ・ド・シュプラールと申します」
「こちらも息子を紹介しよう」
「3男のセイルール・ド・パルシェンと申します」
「4男のカスミ・デュ・パルシェンと申します。セイルール兄上の養子でもあります」
「初めまして、セイルール殿、カスミ殿。お会いできて光栄です」
「私もお会いできて光栄ですわ」
「こちらこそ、お会い出来て光栄です」
「はい、ありがとうございます。私もお会い出来て光栄ですです」
どうやら高位貴族同士、知り合いのようだ。和やかに話は進む。
「私は」「私も」
「「カスミ殿を伴侶として迎えたく、婚約の了承をいただきたく存じます」」
双子が頭を下げる。
お父様が俺を見る。
「カスミはどうなのだ」
「はい、私もそれを望んでおります」
めんどくせー争いはごめんだ。お互いに利害は一致しているのだ。何より、俺に懐いてる双子は可愛い。それに顔を体もきれいだ。覚悟の問題だけなら大丈夫だろ、中身はおっさんだ。
それに流石に12才だからな。そちらはまだ猶予もあるだろうし。
そう、俺は楽観視していた。
お父様もお母様もセイも頷いた。内々には承諾していたんだしな。
「では、正式に婚約とするか…セバス、書類をこれへ」
「こちらに」
用意がいいな。貴族同士の婚約は貴族同士で契約を交わす。貴族院に届け出はするけど、婚約はそれぞれの家が認めれば成立するのだ。
契約書を交わしてここに正式に婚約が成立した。
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