71.嫌われた?
先ほどの部屋に入るとソファにみんなで座った。
「カスミ、コーヒー飲みたい」
頷き
「クリス!」「はい、主」
ヒルガさんとクリスがワゴンを押して入って来た。
ワゴンにはカップが用意されている。
俺はクリスが焙煎機で炒った豆をミルでゴリゴリ挽く。それをフィルターに乗せてお湯を注ぐ。ゆっくりとコーヒーが落ちていく。
独特の香りが部屋に満ちた。
カップにコーヒーを注ぐとクリスとヒルガさんがみんなに配った。
「苦いからな、こちらの牛乳と砂糖もあるぞ」
お父様が説明してくれた。
そしてブラックで飲んだ。
「あぁ、やはり美味い」
「父上、これはカスミが美味しくなるように豆を焙煎しているからです。どうもそのやり方で味がかなり変わるとか」
セイがそう言うと俺を見る。
「豆を均等に炒るんです。私は中煎り、程よい程度にしています。煎りが浅いと酸味が強く、濃いと苦味が増します。なので、中煎りはもっともバランスが良いのです」
「誰もが同じように出来るのか?」
「いえ、中煎りと言っても幅がありますし、均一に焙煎するのはやはり簡単では有りません。私は機械がやってくれますが頃合いは自分で見定めています」
「やはり、カスミだからなのだな」
「すくなくとも、この味は私の味です」
満足そうにシア兄様が頷く。
リア姉様が一口飲んで苦かったようで牛乳を入れて飲んでいた。
「まぁ、とてもまろやかになるのね。これは飲み方も選べていいわ」
「好みが色々とあるからな」
セシア兄様が改めて
「カスミ、息子と娘だ。よろしくな」
と言ったので、俺は2人を見て
「よろしく。歳は近いけど私は君たちの叔父になる。セイの養子になったから叔父でもあり、従兄弟でもあるな」
と挨拶をした。
オランジュとレムリアはむすっとした顔で俺を見ている。オランジュが10才、レムリアは8才だ。
「ほら、挨拶は?」
リア姉様が促すも口をつぐむ2人。俺はセイを見ると困った顔をした。
「オリー、レミどうした?」
セシア兄様が声を掛けても黙っていたが、レムリアが立ち上がると俺を指差して
「こんな平民、認めない!セイルール叔父様の息子なんて…おかしいもん!!」
まぁそうだろうな。普通の感覚だとそうなんだろう。むしろ、セイとかお父様たちが相当寛容なんだと思うぞ。
俺だってなんでって思うからな。
「レムリア、なんて事を言うんだ!我がパルシェン公爵家が認めた事なんだぞ」
「僕もおかしいと思います!そんな品性の卑しい平民を!有りえません」
品性云々は別としてそれも理解できる。困ったな、俺だって望んだわけじゃないし。
だからつい
「俺は望んでない」
と言ってしまった。だって貴族とか面倒なだけだし。
セイは俺の頭を抱きしめた。なんか申し訳ない。俺みたいな異物がいることで、迷惑をかけた。
「カスミ、ごめんな。こんな守り方しか出来なかったんだ。望んでいないことは分かっていたんだ」
俺はセイを見上げると首を振って
「分かってる。セイが俺のことを考えてくれたこともちゃんと分かってるさ、でもな…」
立ち上がったお母様にセイごと抱きしめられた。
「カスミは私の末の子よ。例え私が産んでなくても、私の大切な末の子です」
嬉しくてまた泣きそうになった。まぶたにキスをされる。
「オランジュ、レムリア、退席しなさい」
お父様が厳かに告げた。それはこの場に相応しくないと追い出されるということ。
「お、お祖父様、私は」
「僕は正しいことを」
「聞こえなかったか?退席しろ」
強く言われて退席する時、お母様とセイから解放されていた俺に火魔法が飛んで来た。
「レムリア!」
リア姉様が叫ぶ。大丈夫だ、こんな練度の低い火魔法、俺でも相殺できる。体に霧状の水を纏わせ風で回す。
火は蒸発し気加熱は風で散らした。なんて浅はかな。
「他の人を巻き込むつもりか?火は小さくとも髪の毛や服を燃やす。最悪、死ぬかもしれない。しかも、関係ない人を巻き込んで。分かっているのか?そんな下手くそな魔法で周りを傷付けることは許さない」
俺はいい。しかし、隣のセイを傷付けるのは絶対に許さない。
それだけ言うと風魔法を腹に叩き込んだ。
「ぐはっ…」
気絶する程度の魔法だ。俺はレムリアに背を向けてソファに座った。
みんなが唖然として俺を見ている。あ、やっちまったか…つい頭に来て。
「カスミ、今のは何だ?火が消えて…」
「霧散した?いや、しかし火は迫っていて」
「どこも怪我してないわよね?」
飛んで来たリア姉様が俺の全身を確認する。
戸惑っていると
「カスミ、説明を」
えっとどう言えば。
「火魔法を咄嗟に消そうと思って、霧状の水を体に周りに展開して。そのままだと熱が発生するから、風魔法で散らした」
あれ、みんな困惑した顔だ。
「おほん、主人は説明が壊滅的に下手でして。火を消すために水。これはお分かりですね?」
みんなが頷く。
「人が多いこの場で水を出せば、周りの方が濡れてしまいます。ですので、火を消すために、そして周りへの影響を最小限にするために水を細かくしました。水を遠くに飛ばすと最後は小さく分かれて落ちます。あんな感じで。そうすれば湿りはしますが濡れません。そして火を消したのです。細かい水は火に触れて蒸発します。その時、周りの熱を奪います。この熱が部屋に篭らないように風魔法で散らしたんです。より正確には霧状の水を風魔法で体の周りに回していたんです。そうすれば気加熱は自然と散らせますから」
おぉ、クリスが有能だ。
頭を撫でたら嬉しそうに笑った。ほっこりした。
「カスミ、君はその…水を細かくしたり、それを体の周りに回したり出来るのか?」
ニア兄様が聞く。もちろん出来る。
分かりやすいように指を軽く回す。転回した。
「セイ、俺の手に」
そっとセイが手を伸ばして途中で止めた。
「冷たい」
そのまま俺の手を握る。
「凄いな」
お父様やお母様までやって来た。お母様は俺の頬に、お父様は髪の毛に触れる。驚いている。
セシア兄様とニア兄様にリア姉様もやって来た。そっと髪の触れて手を離した。
「湿ってる」
「今、回すのを止めました。で、火魔法を近付けると」
体から離した指先に小さな火を灯して自分に近付ける。火は消えてもわっとした。それを軽く風で散らす。
しばし沈黙が落ちた。
「凄いな」
「こんな簡単に」
「3属性を易々と」
あれ、まずかったか。セイを見ると笑っていた。
「カスミは全属性の上に他にも魔法が使えるんです」
空間も結界も治癒も使える。光魔法も闇魔法たな。雷も氷か。トーカによるとハイパー賢者とかな。
「また凄い能力だな」
「カスミ、まず魔法の属性をそれだけ使えるのが珍しい上に、使いこなしている。息をするように使うのは凄いことなんだ」
俺の周りはリクにしろイナリ、コハク、白玉、あんこと魔法使う奴が多いから感覚がわからない。
「カスミの従魔は魔法を使えるんです」
カラスは知らん。烏骨鶏だからな。
「そうらしいな」
「オランジュ、これで分かったか?平民だろうと、お前より遥かに能力が高い。しかも見ていただろ?テーブルマナーだって教わっていなくてもそれなりだ。そして、あの食事。今日のメニューのすべてにカスミが作った調味料が使われている」
それを知っていたのは俺とセイ、そしてお父様だけだ。みんな驚いていた。
色々あったので、今日はそれで解散した。
ちなみに、ルキとロキは客間で夕食を食べている。顔合わせは明日の朝だそうだ。
きっと寂しがっているだろうからと俺とセイが2人の部屋を訪ねた。
ノックする前にドアが開くとロキが飛びついて来た。
「中に入るぞ!」
セイが俺とロキを押して部屋に入った。するとルキも俺の背後から抱きしめた。挟まれたな。
「カスミを補充」
「成分足りない」
俺はエキスか!
2人は離れると
「食事美味しかった」
「カスミが感じられた」
セイが笑う。
「カスミづくしだったな」
「「うん!」」
ぎゅうぎゅう抱きしめられた。
「風呂は?」と聞けば
「入る」「一緒」
だよな。セイは部屋に戻ったので、双子を風呂に入れる。
相変わらず突っ立ってるんだが、多少進歩した。足を開いたり尻を押し出したり。進歩なのか不明なんだが、洗いやすいように考えてるらしい。
ありがた迷惑という言葉が頭をよぎった。
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