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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律


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70.団欒

 隣のセイに抱き付いた。

「あ、ありがとう…」

「お父様とお母様に言ってやってくれ」

 頷いた俺の髪の毛を撫でながら、セイが言った。


 ほんの少し、泣いたのは内緒だ。




 セイルールとカスミ、ルキとロキが出て行った部屋で。

「ふう、想像以上だな」

 ポツリとセナリックが呟く。

「本当に。とても凄い力があるのに、無自覚でとても純粋で」

「そうですね、このアクセサリーだって。材料の質も素晴らしいが、このデザイン。しかも、見たことがないアクセサリーだ」

 セシリアが続ける。


 セレーニアも

「オリハルコンを見つけたとか。この繊細な金具、そそして襟元のアクセサリー」

「水晶と言っていましたが、この透明度と美しい色も、またこの花もまるで生きてるみたいに繊細で」

「「素晴らしい」」


「クリスやトーカもな。しかも、野心が全く無い」

「安心でもありますが、危ういです」

「本当にセイルールが見つけて良かった」

「本当に。あの飲み物も甘味も大変美味しかった」

「魅惑の双子まで。落ちないと有名でしたから」

 みんなが頷いた。


「シュプラール侯爵家は歴史のある名家だ。こちら側についたなら安心だ」

「ですね、軍属には渡したくありませんし」

「ルーガイザが動いたというからな、本当に良かった」

 しばし、沈黙し頷き合った。




 ゆっくりもふもふに埋もれて休んだ。部屋にはリクとカラス、スズメ以外がすでに寛いでいたからな。

 部屋が広くて落ち着かないが、有難いよな。上着を脱いでソファに転んだ。

 もふもふ…気持ちいい。


「起きろ、セシリアが来る」

 セシア兄様が?トーカに起こされた。起き上がるとドラがノックされた。トーカが頷くのでドアを開ける。はたして、そこにはセシリア様がいた。


「カスミ、少しいいか」

「どうぞ」

 部屋に招き入れる。

「部屋はどうだい?」

「はい、広いので少し落ち着かないけど、とても居心地がいいです」

「普通に、セイルに話すみたいに話してくれるか?」

「えっといいの?」

「もちろん」

「分かった」


「セイルが興した商会なんだが、広告塔として私の妻とセレーニアの妻を参加させたい」

 向かい合ったソファに座ったセシア兄様が言った。

 それはセイと話をしたんだよな。

「セシア兄様、実は商会で扱う商品は積極的に宣伝しないとセイと決めたんだ」

 セシア兄様が少し驚いた。


「商会に参加して貰えるならそれは歓迎なんだけど、宣伝は要らなくて」

「理由を教えてくれるかい?」

「商品は一部を除いて俺のジョブによるから。主に材料や製法が。だからそもそも数が限られる。調味料も化粧品もいまでも手一杯で。それに海産物もあるから。魔国との貿易で取り扱う薬草も限定数で、セイと話をしてロキにポーションを作って貰うことにしたんだ。販売先は冒険者ギルド。そちらも販売先が決まってるから宣伝も不要。だから」


 セシア兄様はなるほどと頷くと

「数を出せないならステータスにする販売方法だな。私たちにくれたこのアクセサリーみたいに。注文で、例えば半年に5個までとか、そんな風に。商会として大きな儲けは要らなくても有名になればカスミを守ってくれる」

 なるほど、そういう考えもあるのか。


「俺は素人だし、セシア兄様がその方がいいというならば、セイと話をする。奥さんの参加についても」

「そうだな、女性が参加した方が問い合わせもしやすくなる。そうしないとセイルやカスミが追いかけ回されるからな」

 嫌そうな顔をしたら笑われた。

「大人びた所もあるが、そんな顔は年相応だな」

 中身おっさんだからな。

「夕食で家族を紹介するからな」

 そう言ってセシア兄様は帰って行った。


 そろそろ夕食かな。

 ドアがノックされた。

「カミス、私だ」

 セイの声だ。扉を開けると

「夕食の時間だ。行くぞ」

 流石にイナリたちは連れていけないので、セイの手に導かれて部屋を出た。


 廊下を通って階段を降りてまた歩く。

 大きな両開きの扉が開放されていて、ティア姉様が座っていた。

「カスミは私の隣だ」

 席についた。次にニア兄様が入って来て、セシア兄様が奥さんと子供2人と入って来た。

 子供はなんか俺を睨んでいる。なんだ?

 最後にお母様とお父様が入って来て食事が始まった。


「カスミ、少し休めたか」

「はい、素敵な部屋をありがとうございます」

 と言えばお父様もお母様も嬉しそうに微笑んだ。

「カスミ、家族を紹介しよう。妻のナタリアと息子のオランジュ、娘のレムリアだ」

「よろしくね、カスミさん。あなたの商会に参加させて貰えるなんて、光栄よ」

「よろしくお願いします、ナタリア様。私こそ参加くださり嬉しく思います」

 満足そうに頷くナタリアさん。

「私のことはどうかリア姉様と…」

「はい、リア姉様。私のことはどうか呼び捨てで」

「あら、嬉しいわ。カスミ」


 和やかな挨拶の間に前菜とスープが配膳された。

「子供たちとはまた後で、始めよう」

 お父様の声で晩餐が始まった。まさに、晩餐。夕食と呼ぶには豪華だ。

 スープを飲む。あれ、これは。セイを見ると軽く微笑んだ。前菜も食べる。やっぱり。

 前菜に使われているのは炙ったサケとマグロ。そして、海藻のサラダ。サラダのドレッシングはオリーブオイルと海塩。タコはぶつ切りを半生にして、アオサを掛けてある。馴染みの味だ。


「おっ、これは美味いな。磯の香りがいい」

「えぇ、魚も香ばしくてとろけますわ」

「この弾力があるものも磯の香りがします」

「スープもなんだか味わい深い」

 スープには青山椒が振りかけてあった。セイは嬉しそうに笑っている。俺の調味料がフル稼働か?


 次に出て来たのはまさかのトルティーヤとトマト、青菜に肉だ。巻いてある。もちろん、とてもきれいに作ってあってカット済み。

 にしても上品だな。

 お父様はナイフで口に運んで驚いた。俺も口に入れる。柚子胡椒じゃねーかよ。セイは嬉しそうに食べている。


 口直しに出て来たのはヨーグルト。これはベルシティでレシピ登録した奴だ。いわゆるプレーンヨーグルト。今回はそこにほんの少しハチミツを混ぜている。ジャムでも美味しい。


「先ほどの巻いたのもとても味わい深くて、しっかりとした味が美味しかったが、口直しもなめらかでクリーミーだ。素晴らしいな」

「先ほどのパンは薄くて食べやすかったです」

「子供が野菜もお肉も食べてくれますね」

「忙しい時でも食べやすそうだ」

 元々は行動食として作ったからな。かぶりつけるなら片手で食べられる。


 次は魚。鯛は皮目をパリっと焼いてオーブンで中まで火を通してある。藻塩を掛けてるな、付け合わせはイカと大葉の重ね巻き。こちらも藻塩掛け。

 そりゃ鮮度がいい魚なんだから美味いな決まっている。


「まぁ、身がふっくらと」

「皮はパリっと芳ばしい」

「ふわふわです」

「こちらのも美味しい」

 お魚は美味いんだぞ!ルーガスに行った甲斐がある。


 最後は柔らかいパンとステーキだ。こちらは普通の塩胡椒。ミディアムに焼いてある。

 付け合わせは青山椒の実。俺は丸のままステーキに乗せて食った。ガリッとして風味が広がる。美味いな、やっぱりいい肉を使っている。俺みたいに魔獣の肉じゃなくて牛肉だ。そりゃ美味いよな。


 ちなみに俺は食べる量が少ない。だから予め食べ切れるぐらいしか皿にのっていない。俺以外は結構しっかりとした量だ。お母様も、リア姉様も。


「いや、ステーキもまた美味しかった」

「本当に、柔らかくて」

「筋も有りませんでしたね」

「いつも美味しいが、今日はまた格別だった」

 様々感想が出た。


 最後にデザートだ。

 シフォンケーキ。ふわふわで美味かった。紅茶を飲んでご馳走様。

 やっぱり使っている素材がいいよな。もっとも卵は間違いなくカラスのが美味いけどな。


「居間に」

 お父様の声掛けでみんなで居間に移動する。俺は相変わらずセイのエスコートだ。なんか恥ずかしい。

 先ほどの部屋に入るとソファにみんなで座った。




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