67.挨拶
日常に戻ったな、と思った。
アマランとウルグはAランクに、ルキとロキはBランクに、そして俺はCのままだ。パーティーランクはBになった。後少しでAになるらしい。
俺は、全体的に依頼を受けた数が少なくて、まだBには上がらないが、近々上がるみたいだ。
相変わらずちまちまと急ぎの薬草採取や群れの討伐をソロで受けている。
金には困っていないし、問題ない。
調味料も化粧品も売っている。固定客も付いた。ベルナ商会にも化粧品を卸している。それとは別で、セイから商会の看板商品が欲しいと言われた。
ならばと作ったのは石けんだ。体用、髪用の2種類に保湿液。保湿液は髪の毛と体に使える。例のオールインワンは顔用だったから、あれの体用みたいなもんだ。
コハクやイナリ、白玉がせっせと採取していた花は香りがいい花だった。石けんを作って欲しかったらしい。
白玉はジャスミン、イナリはローズ、コハクはラベンダーだ。ちなみにリクはティツリーで、カラスはローズマリーであんこはベルガモット。
俺は快適野外装備に入っていたホワイトムスクとキンモクセイだ。
キンモクセイはクリスに具現化して貰って作った。
俺の香りは販売しない。
ローズ、ラベンダー、ティーツリーの香りはそのままの名前で販売する。
それを作ってセイにお披露目したら驚いていた。
「カスミ、これは売れる…」
元の花はみんなが採取したんだよな。そのまま俺の亜空間に入っていたからクリスに具現化させて栽培している。
採取したらリグに回帰させるから、枯れなければ採取出来る。
ついでにコーヒーも同じように安定供給出来た。セイがそれも売ると言う。
ゴールデンアップルとゴールデンピーチも後少しで収穫出来そうだ。亜空間は便利だ。
そして、日程の調整が出来たのでセイの実家があるラグナシティに出発した。ラグナシティでルキたちのシュプラール侯爵家とも挨拶をすると言うことで、ルキとロキも、さらに護衛としてアマランとウルグも同行した。
セイと俺、ルキとロキは馬車に乗りアマランとウルグ、ほか公爵家の護衛が4人。ヒルガさんもいる。
もちろん、リクたちも一緒だ。白玉は俺の肩、あんこは白玉がお世話中だ。
俺はセイとルキ、ロキに贈り物を用意してある。
セイの家族とルキたちの両親には鉱物でちょっとした飾りを作ってみた。セイには内緒。でもトーカによると貴族のステイタスになるみたいだ。
よく分からなかったからな、トーカの中の広辞苑に聞いたんだ。
実はあのオリハルコンが取れた場所でなんと、水晶が見つかったのだ。色とりどりの水晶だ。とくに紫と青、黄色と針入りのルチルクォーツは金と銀だ。それをオリハルコン枠で固定して作った。
コーヒー採取した後に寄ってトーカが見つけた。
クリスがいれば加工もお手のものだ。
ちなみにセイもルキとロキも貴族の服装だ。俺?俺は自前で用意した。スーツはあちらから着て来たもの。
シャツも。こちらの世界はネクタイじゃなくてボウタイみたいなもんだ。
悩んだけど俺はやっぱりネクタイ派なので、濃紺の縦線が入ったスーツに白いシャツ、青いチェックのネクタイに、シルバーカラーのネクタイピン。
そこに青い水晶を一粒付けた。
髪の毛は後は首に付くくらいだったから小さくリクたちとお揃いのリボンで結んだ。そして、前髪はそのまま下ろした。あげようとしたらルキとロキに反対された。双子も前髪を下ろしている。
朝早く出れば夕方に着く距離だ。
だから、朝食をみんなで食べて出発した。朝ごはんは焼き魚、だし巻き卵、牛丼の具、味噌汁。
沢山食べて出発した。
お昼ご飯は肉を焼いて食べて、コーヒーを飲んでから進む。
馬車を引く馬にも水と飼葉に茹で野菜。沢山食べた馬車は爆走した。アマランとウルグは体を浮かせてスイスイ。リクたちはもちろん走っている。
ラグナシティが遠くに見えたとき、リクが離脱した。
(誰か襲われてる)
助けに行く義理はないのだが、群れはビックバードだ。あ、食い物回収だな。分かったから放っておいた。
こちらの馬車も向かう。
俺は手伝わないぞ!
そう思ったけど、トーカが
(別の奴らが接近してるな…)
と言う。そちらを見るとあれは、人?
(野盗だな)
「セイ、貴族の馬車が…」
「リクがいるだろう?」
「野盗が潜んでる」
俺の言うことがわかったらしいセイはアマランたちに援護に向かわせた。
まさにその時、背後から野盗が襲い掛かる。ビックバードに気を取られた護衛の対応が一瞬遅れた。
アマランがそこに滑り込んで防ぐ。
「援護するぞ!Aランクのアマランだ」
「頼む」
共闘し始めた。全部仕込みなら凄いな。今度は俺たちの馬車を狙っている。こちらには白玉がいるからな、気配ですぐ分かるから問題ない。
ルキとロキが気がついて外に出ようとしたので、止めた。どうやらあんこきなこあられが結界を張った。さすが幻獣。だから安全だ。
軽く衝撃は来たものの、奴らは馬車に近寄れない。このままリクが戻るのを待とう。
リクはビックバードを回収して、こちらの馬車を襲う男たちの背後から体当たりをした。ぐるりと一蹴。ご愁傷様…思わず拝んだ。
後のことはあちらの護衛たちに任せて、俺たちはラグナシティに向かった。あちらの貴族からもラグナシティで話をしたいと申し入れがあったからだ。
そして、無事にラグナシティに入った。そこで、ヒルガさんがセイになにやら話をして、進んだ。
「大丈夫だ、どこの家かは判明している、改めて礼をすると言うことだからな、このまま家まで進むぞ」
本来ならルキとロキは実家の人たちとセイの実家を訪ねるのだが、ここはセイの実家がある街。なので、ルキとロキも賓客として滞在する。
街の門から入ってしばらく走ると、お屋敷に着いた。いや、ガチの屋敷だ。門から入ってまだまだ進む。マジかよ…遠くに見えるアレか。城じゃないよな。
ポカンと見上げているとセイがくつくつ笑った。
「カスミは大人びてるが、そんな顔は年相応だな」
大人びてるってか中身おっさんだからな。にしても凄えな。どれくらい走ったか、やっと馬車寄せに着いた。ってか屋敷の扉もでけえ。
ルキとロキは驚いていない。え双子の家もこんなにデカいのか?
その顔を見ると
「こんなに大きくない」
「公爵家は別格」
だそうだ。でもデカいんだよな?なんか緊張して来た。
馬車の扉がノックされ、扉が開かれた。ヒルガさんだ。セイが差し出された手に掴まって降りた。今度はセイが手を差し出す。ここで降りるのが俺。そして俺が手を差し出すと、優雅に手をのせてルキとロキが降りて来た。
ヒルガさんの先導で大きな扉が開いた。
すると
「「お帰りなさいませ!」」
使用人が一斉に頭を下げる。
びっくりして固まっていると、優しくセイに手を握られた。下から指先をちょんと待ついわゆるエスコートだ。ガチガチになって進む。顔が引き攣るのが分かる。
後ろから優しく双子が背中を押す。いや、マジで俺はここの家の家族になったのか?
ぎこちなく進んで行く。セイが俺を生暖かい顔で見てるのに気が付いても反応できないくらいの衝撃だった。
長い廊下を通ってたどり着いたのは、立派な扉の部屋。ヒルガさんがノックをし、
「セイルール様とカスミ様がお戻りになりました」
と声を掛ける。
「中へ…」
声が掛かり内側から扉が開いた。
セイは俺をエスコートしたまま部屋に入った。中ではソファに5人座っていた。俺たちを見ると頷く。
「さぁ、入りなさい」
みんなが入るとセイの隣に俺、俺の隣にルキとロキが並んだ。
「まずは座って自己紹介だな」
腰を落ち着けると、壮年というよりは若々しい男性が話し始めた。
「まず、私がパルシェン公爵家の当主で、セナリック・ド・パルシェンだ。隣は妻でカトレア、カトレアの隣が長男のセシリア、そして次男のセレーニア、そして長女のセレスティアだ」
それぞれが挨拶をする。
「カスミ、私の家族だ。いや、今はカスミの家族でもある。父上、母上、兄上、セレス、この子が我々の息子であり弟であるカスミだ」
セイが俺を見て頷く。
「初めまして、カスミです。私を家族に迎えてくださりありがとうございます。また商会もありがとうございました。貴族としては至らない点ばかりですが、どうぞよろしくお願いします」
胸に手を当てて頭を軽く下げた。
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