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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律


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59.海のもの

 よし、全快だ!



 3日目は何をしよう。遊ぶ気満々だった俺だが、セイに

「商会としての仕事をしないとな」

 となった。漁業ギルドに行くそうだ。俺としては海塩を作って欲しい。


 後はワカメと昆布、海藻に海苔。安定的に提供を欲する。サザエとアワビもだ。壷焼きやアワビステーキなら日持ちする。

 他はやはり加工品だろう。離れた街に海のものを運ぶためには必須だ。


 で、結局はみんなでゾロゾロと漁業ギルドに向かった。

 セイと俺は商会の中心らしい。セイが商会長。俺は副商会長だそうだ。マジか。ルキとロキは俺の護衛兼社員。アマランとウルグは商会の護衛だ。

 だからみんなで移動した。


 ギルドに着くと、マーレーさんが笑顔で迎えてくれた。

「お待ちしておりました!」

 奥の部屋に案内された。


 そこにはガッチリとした大きな男性が座っていた。

「待っておったぞ!俺は漁業ギルドのマスターでシリウスだ。座ってくれ」

 セイが

「私がカミール商会の商会長でセイルール・ド・パルシェンだ。隣は主な商品の開発をしている副商会長で私の弟兼息子のカスミ・デュ・パルシェン、他は護衛だ」

 と紹介した。


 ちなみに貴族が名乗る時の真ん中に入る言葉は成人男性が「ド」で未成年の男性が「デュ」。女性には無い。さらには侯爵家以上の人にしか入らない。

 ルキとロキもルシアーノ・ド・シュプラール、ロシアーノ・ド・シュプラールが本名だ。


「まだ新しい商会と聞いた。しかし、マーレーに聞けば、あの怪獣が美味になるという。じゃまで捨てるしか無かったからな、大いに助かる」

「さらにはあの海藻です。それから硬い貝も。どうやらそちらもカスミ殿が買い取って下さったと聞きました」

「なんと!それはまた素晴らしい」


 セイには凡そのアイディアを伝えてあって、試食も作った。クリスが大活躍だ。

 で、双子は…味見係だな。


 セイが説明し、クリスが補足。そして試食を出せば大いに沸いた。だろうな?捨ててたものが宝の山だ。

 そして、海塩。ルキとロキが実演したら目をまん丸にして驚いていた。


「この方法はやり方を分かりやすく解説するためなので、実際には大きな釜を使います」

 すかさずクリスが説明する。俺のジョブだよな?有能すぎる件。


 そして、商会はワカメ、昆布、海藻類と、海苔を漁業ギルドから安定的にかつ独占的に仕入れることが決まった。

 鮭とばやスルメ、タコとイカの燻製は見送った。盛り沢山すぎるからな。それに取っておけばまた次に来る理由が出来る。


 お昼にはあら汁の作り方を伝授。と言っても血抜きして内臓を取った魚を骨ごとぶち込んで、塩で味付けするだけだ。魚の骨から勝手に出汁が出る。美味いに決まってる。

 こうして商談は終わった。


 俺はそのまま市場で買い物の続きだ。今や我々のマジックバッグ(亜空間)は時間停止。ルキとロキは自分で作れるし、アマランとウルグはまだ停止は出来ないがそこはロキが手伝う。俺はセイのマジックバッグを時間停止にした。なので、買いたい放題。


 と言っても料理が出来そうな魚に限るが。フグとあんこうは廃棄箱に入っていたからもらった。あざます!

 ついでにハモも廃棄箱にあったから貰ったぞ!今夜はハモスキだぜ。

 ホタテも買った。自分で買いたかったんだよ!

 満足して屋敷に戻った。


「セイもルキもロキも、遊んできていいんだぞ!」

 俺は加工品作りをしたいだけだからな。

「そばにいる」「護衛…」

 味見の間違いだろと思ったが、まぁ問題ない。セイは出かけて行った。小指を立てたら頭を掻き回された。


 で、加工品だ。

 乾燥ホタテと鮭とば。乾燥イカソーメン。酒のつまみだな。タコの柔らか煮も半生で作ろう。

 ワカメと昆布、海藻も乾燥させる。スイが水分を抜いてくれた。簡単だ。

 ホタテとかは水分を抜くだけだと旨みも抜けそうだから、時間促進で乾かしたぞ。


 アサリとイカも火を通して乾燥させる。

 しらすもあったから、釜揚げにした。これで少しはもつ。サザエは壷焼きに、アワビはアワビステーキとアワビ煮。


 海苔は伸ばして四角く整形。板海苔だな。これも沢山作る。あおさは乾燥させて、海塩と混ぜた。藻塩だ。

 少しクセがあるが、天ぷらと相性がいい。

 キスやアジは開いて干物に。クリスがいると捗る。

 満足だ。

 そこで休憩。


 やっぱり海だしトロピカルだよなー。

 マンゴウジュースを炭酸で割って、果物を盛り付けた。もちろん、容器はクリス作だ!

 ストローは紙で作って氷は魔法で作って。軽く回せばカランと涼しい音がする。


 ビーチチェアをクリスに作らせて、寝転がる。最高だ。

 真横にルキとロキが。俺の差したストローから飲みやがった。

「俺のだろう!」

「護衛としての毒味…」


 崩れ落ちそうになった。仕方なくストローを追加で2つ作ってさした。


 クソッ、何が悲しくてヤローとトロピカルなジュースを一緒に飲んでんだよ!しかも3人で。目を瞑ってちゅるちゅる飲んでいる双子は確かに美形だ。美形だが、ヤローだ。パインは無い。残念だ。


 いや、顔だけ見てれば女性に見える。白い頬は少し赤らんで紫の目を潤ませている淡い金髪の美形。

 よし、美女だ、双子の美女に挟まれてる。想像は大事だ。その気になってつい手を握ってしまった。その手は思いの外柔らかくて、妄想に浸れた俺だった。



 その光景を帰って来たセイが、ヒルガと眺めていたことを俺は知らなかった。



 飲み終わると双子は目を開けて、もっとと言った。上目遣いでそういう言い方するなよ。

「ねぇ、もっと」「もっと欲しい…」


 そこだけ切り取ったら甘い言葉だが、ジュース飲みたいだけの双子だ。またジュースを作る。しかし、次はスイカだ。ウォーターメロンと言うだけあって甘くて美味い。


 2人は目を開いて

「「美味しい!」」

 声を揃えた。だよな?マジで美味い。一つのカップからジュースを飲む3人。どうせ3つ作っても俺のカップから飲むんだからな。恋人同士みたいな距離感だが、残念ながらヤローだ。でもジュースは美味い。


「くくっ、仲良くなったな」

 振り返るとセイがいた。

「俺も混ぜてくれ」

「「ダメ!」」


 双子は即否定したぞ?セイは無視して俺の後ろからジュースを飲んだ。もちろん俺のストローから。くっ何が悲しくてヤローと間接キスなんだ。


「おっ、美味いな!」

「だろ?一推しなんだ」

 セイは軽くおでこにキスをすると俺を抱き上げた。

「少し休め…まだ疲れが取れてないだろ」

 そう言われてまた熱が出たら海を堪能できないと気が付いて、大人しく寝ることにした。


 コハクを抱きしめて少し昼寝した。幸せな昼下がりだった。




 私はキツネを抱きしめて眠るカスミを見ていた。あれだけのアイディアを出せる能力、それを実現する力。

 カスミの持つジョブはとても使い勝手がいい。しかし、それは武器すら簡単に作れるということでもある。

 カスミはその可能性に気が付いているのかいないのか、食べ物を加工したりちょっとした調理器具や魔道具などを作ることに特化している。

 しているが、あまりにも危うい。

 年齢からしてもまだまだこの先は有望で、どこの貴族家が欲しがっても仕方がないと思う。

 しかもあの色だ。淡いグレーの髪に薄い水色の目。

 でも好戦的な貴族や軍属には渡したくない。間違いなく、使いつぶされる。


 楽しそうに料理を作るカスミと人嫌いで有名な美貌の双子。なぜか双子はカスミにべったりで、うざそうにしながらも双子をかまうカスミ。

 こんな距離感にいるのに3人からは邪な気持ちは全く感じられない。


 私は体に触れると状態も分るが、気持ちもなんとなく分る。そっと触れたカスミからは双子に対して親愛以上の気持ちは感じられなかった。

 それは双子も同じ。

 今も眠るカスミのそばでその寝顔を眺めている。前髪を上げて顔を出し、じっとカスミを見つめて。

 ルキとロキは別名「魅惑の双子」「落ちない双子」と言われている。

 親しい学友すらいなかったみたいだ。実際に双子に言い寄って蹴られた男子生徒もたくさんいたらしい。


 この国ではごく一部の貴族、相続する爵位や領地を持たない貴族に限り同性婚が認められている。平民はもちろん自由に結婚できる。

 貴族は子供ができない同性婚の場合、相続問題に発展しやすいのが理由だ。

 そして、これも例外的に重婚が認められる。ルキやロキのような双子の場合だ。双子は離してはいけないと言われていて、だから求婚はすなわち双子に対してとなる訳だ。片方が認めても片方が嫌なら成立しない。

 もっともルキとロキの場合はどちらも人嫌いだったから、考える必要もなく駄目だった。




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