58.海鮮バーベキュー
俺とセイの悲鳴が中庭に響き渡った。
アマランとウルグが腹を抱えて笑っている。笑いすぎだろ!笑いすぎて涙目だ。
「いや、ルキもロキも…ぐふっ、あははっ…貴重な魔石が…ぐほっ、無理」
「無いよな?ピンポイントでそれを魔石に、ぐほっ…くはっ、あぁ腹痛い」
憮然とするセイと俺。触っちまったぞ。
双子は不思議そうな顔をしている。
セイがルキに
「そ、そのな…やっぱりそれはどうかと」
それでも首を傾げるだけだ。
セイの股間を見て俺の股間を見て
「別にギルマスのでも、カスミのでも平気。濃そうだし…。ん、カスミのは薄い?」
余計なお世話だ!濃いも薄いも…そもそも作れないわ!
「カスミはまだ無理か」
ロキ、ボソッと言うのやめてくれ。傷付く。
アマランが
「コイツら少しそっち系はな、全く悪気は無いんだ」
分かってるけどな。分かっててやってたらセクハラだ。
そして何故か
「カスミに」「あげる」
…知らなければきれいな魔石なんだけどな、元がな。期待するような双子の目を見て要らないとは言えなかった。
「あ、ありがとう…」
何故か頭を撫でられた。
夕陽が海に沈む。そのオレンジ色がきれいだ。そろそろ用意するかな。
「クリス、手伝ってくれ」
アマランとウルグ、ヒルガさんも手伝ってくれる。
七輪を沢山テーブルに並べた。豆炭に火を付けて下拵えした貝や魚を網に載せる。もちろん、マグロのカマは俺の目の前だ。
リクたちには肉も焼く。
あら汁をよそって配り、俺は茶碗蒸しを食べた。トーカに確認してもらいながら作ったからすも入らずプルンプルンだ。銀杏もホクホクで美味い。
双子は当たり前みたいに手を出す。もうみんなに配ろう。
「ぷるぷふ」「美味しい」「ほっくり」「美味い」「凄い!」
出汁の味が出てるよな。
「こんなになめらかになるんだな。ちょうどいい柔らかさ」
「トーカで確認したからな!」
俺がドヤって言うと静かになった。ん?
その後アマランとウルグに爆笑された。双子も笑ってる。
「それがカスミ」
セイだけは意味が分からず首を傾げる。食べながらトーカにちょうどいい頃合いを視てもらったと話すと、セイは
「マジか…」
と言ってから笑った。
「カスミは、くくっ食べ物を作るために…ふふっ」
笑われた。平和だろ?
海鮮バーベキューも好評だった。
「いや、まさかな。魚や貝がこんなに美味いとは」
「肉至上主義だったが、魚もやるな!」
「魚がさらに好きになった」
「貝も絶品」
「カスミが作ればなんでも美味いな!」
良かったよ、それなら。
匂いだけで食べられないのは辛いが、仕方ない。明日には少しだけ食べられそうだ。
当然だが、そのままガーデンパーティーとなった。
パーティーと言えば酒だ。
ヒルガさんがどこかからお酒のボトルを出して来た。いかにも高そうな酒だ。
美味そう…眺めているとセイに
「カスミはダメだぞ!」
と言われた。
「リグがいるから…」
ついぽろっと言ってしまった。
「リグ?リクじゃなくて?」
家族だし、隠しても仕方ないか。
それから俺がダブルで回帰というジョブ持ちだと話をした。
「ジョブの発動条件である時間操作ってスキルも持ってる」
セイはしばらく黙ってから
「ダブル…か。しかもスキルは4つか。いやまたとんでもないな」
その顔は深刻だ。
「だからな、その…2日酔いはリグに戻して貰えば…」
セイが驚いて俺を見た。青い稲妻の面々を見回してからリグを見る。
「主はダメダメですが、私を、誰かを傷つけるために使うことなんて考えもしません。せいぜいがケガを治したり、2日酔いを戻したりです。ケガは人のしか治してませんね」
セイは俺を抱きしめて
「やっぱりカスミはカスミなんだな。良かった」
その後、アマランたちにも心配されたと話をした。
「それがよ、2日酔いだぜ?わざわざジョブを使って誰かを傷つけるとかは考えもしなかったって青ざめてな。それを見てあぁカスミなら大丈夫だって思ったんだ」
ウルグも頷く。
「馬にも使ってた」
流石にセイもそれを聞いて吹き出した。
「よし、飲むぞ!あ、カスミはそれでもダメだ」
ガックリだぜ。仕方ない。
俺は緑茶を炭酸で割って飲んだ。そしてフルーツミルクバーを食べる。熱が出たからか、喉が冷たくて美味い。
賑やかにルーガス2日目の夜は更けていった。
目が覚めると隣にセイが寝ていた。俺は腕にコハクを抱えている。相変わらずしっぽが顔の前にある。ふさふさ、豪華なしっぽを堪能した。
痛い、だから顎を蹴るなよ!
もさもさのお腹を撫でる。寝込んでる時、ずっとそばにいたコハク。可愛いかったぞ。
そっとベッドを抜け出そうとしたらセイに腕を掴まれて仰向けにされた。
「カスミ…」
そのまま俺に乗っかって寝た。おい、寝言かよ!ってか重いな。太ももに当たるんでどいてくれ。朝だから仕方ないが、当たってんだよ!
そっと転移で抜け出した。全く、魔石にでも変換すればいいのに。でもまたあげるって言われても困るからな。
ふう、ソファで一息つく。すっかり体は元通りだ。
リクは部屋の中にいる。チラッと目線が。
立ち上がると
(走らせろ!)
だよな。みんなを連れて外に出る。広いバルコニーからは中庭に降りる階段が付いている。そして、中庭から海岸に降りられるのだ。
砂浜だ。天気は晴れ。気持ちがいい。リクは砂浜を爆走中。イナリとコハク、白玉も走っている。あんことカラス、スズメはリクの背中だ。
俺は砂浜に腰を下ろして海を眺める。
ザザンと波の音。寄せては返す波、そして白い砂浜。俺は砂浜で貝殻を拾う。ビーチコーミングなんていつ以来だろうか。
おっサンゴのカケラもある。流木か…懐かしいな。思い出に持ち帰ろう。浄化できれいにして亜空間に放り込む。これも懐かしい記憶だ。
手の中の貝殻を見てまた少し感傷に耽った。
「カスミ!」
セイが走ってくる。起きたらいないから探したのか?
「はぁ、良かった。探したぞ!」
「おはようセイ。リクたちを走らせにな…」
「もう大丈夫か?」
「あぁ、すっかりな。セイ、ありがとな」
俺の頭を撫でると
「もう家族だからな!」
俺の隣に座って手の中の貝殻を見た。
「それは?」
「拾った」
不思議そうだ。どうするんだって顔だ。
俺は貝殻に穴を開けて金具で留めた。カバンに留められるような金具は具現化したぞ。
それをセイに渡す。
「カバンとかに付ける」
まじまじと眺めて
「ありがとう、大切にする」
そう言って爽やかに笑った。
俺はもうあちらには帰れないんだろう。それでも、俺を守るために家族にしてくれたセイがいる。俺の秘密を知っで変わらずにいてくれる仲間がいる。
ならば、楽しまなきゃな!俺はとても恵まれてるんだから。
自分にも同じように飾りを作った。
「カスミは器用だな」
ジョブだけどな!ほんとチートなんだ。もっとも物理に使ってるうちは平和だ。
その後はセイと歩きながら貝殻やサンゴのかけらを拾った。砂と流木も持って帰る。後でボトルシップでも作るかな。
屋敷に戻って朝食を作る。
パンケーキの気分だ。材料は揃ってるから。あ、生クリームは無い。よし、クリスの出番だ。
クリームチーズやジャム、ハチミツを用意してもちろん生クリームもスタンバイだ。
焼くのはクリスに頼んだぞ。クリス作の魔道具ホットプレートnewで焼けば簡単だ。
しかしな、奴らはきっと沢山食う。もう100枚単位で焼いておこう。
焼いたそばから亜空間に放り込む。
トッピングはそれぞれ皿に盛って、ナイフとフォークも順番オッケーだ。
双子は相変わらず目の前で作るのを見てる。しかも試作用の小さいのを焼いたら、口を開けて待ってる。子供か!
仕方ないので一口サイズに切って放り込む。
「美味しい」「美味しい…」
トッピングしたらもっと美味いぞ!
テーブルに並べて食べ始める。
溶けたな。パンケーキは飲み物だった。フルーツジュースも美味い。俺もまぁまぁ食べた。
よし、全快だ!
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