56.買い物からの…
屋敷の中に入る。海を臨む広いリビング、部屋の中は白で統一されていてとても気持ちがいい。
2階に上がると寝室があった。海に向かって広いバルコニーが付いている。
「凄え…」
セイが隣に並ぶ。
「気に入ってもらえたかな?」
「あぁ、ありがとな!最高だ」
その海をしばらく眺めていた。
ふといい匂いがした。そろそろ昼か?
セイを見ると笑う。
「腹が減ったな」
連れ立って食堂に向かう。早いな!みんな座っていた。俺もセイの隣に座る。
いや、マジで美味かった!
魚介スープに魚介のパスタ、魚のソテー。素材がいいからシンプルな味付けでも十分美味い。
でもやっぱりもう少し工夫したい。
「市場に行くか?」
セイの言葉に頷いた。アマランとウルグは屋敷でのんびりすると言う。双子は一緒に来る。
リクたちも連れて街中に向かった。
海沿いや丘の上は別荘地。で街は少し中に入る。
海から市場に向かう通りには屋台が出ていた。どれも美味しそうだが食べたばかりなので素通り。
市場の中は魚の匂いでいっぱいだった。俺は平気だが、生粋の貴族であるセイや双子は大丈夫だろうか?
「匂い、平気か?」
「大丈夫だ」
「平気」
「クリスが何かしてる」
クリスを見ると
「少し匂いを浄化しています」
ならいいか。
「安いぜ!お客さん。見てかないか?」
明らかに貴族然とした俺たち(俺以外)にはあまり声がかからなかったが、果敢に声をかけて来たのはまだ若いお兄さん。腕が逞しい。
木箱の中にはたくさんのエビやイカ、タコがいた。貝もある。美味しそうだ。でも、周りの店に比べて沢山残ってる。
「あんな気持ち悪いもん売ってもなぁ」
「本当に、客も迷惑だろ」
同情を込めた声が聞こえた。お兄さんはそれが聞こえたのか、僅かに顔を赤くした。
「う、美味いんだぞ!見た目はアレだけど…間違いないんだ」
「見た目はあれだが食える…」自信なさげだ。
もちろん食べられるのは知ってるよ!
ひそひそ声がまだ続く。
「親父さんが寝込んだからな…あんなもんしか取れなくって」
「でもなあ、あれじゃぁ…。海の怪獣とかな、食えんだろ」
お兄さんはこぶしを握り締めた。
「お兄さん、買う!全部買うから安くして」
俺の声にバッと顔を上げると苦しそうに
「坊主、嬉しいが正直美味くない」
この人は本当に真っ正直なんだな。
(どれも新鮮でいいものばかり)
トーカすら悪態付かない。きっと本当に真っ直ぐな人なんだ。
「大丈夫、でもそうだなぁ。ねぇ試しにその海の怪獣を買うよ」
それはタコだった。お兄さんは決心したみたいな顔で売ってくれた
お値段300リラ。安すぎる。
「見てて!」
その場で球体を作ってお湯で満たす。その横でクリスが塩で表面のぬめりを取る。頭の中身を取って捨ててスイに食べさせる。吸盤の硬いところも処理をして
水でさっと洗うとボイル球体に放り込んだ。半生くらいかな。
トーカがいいぞと言ったところで球体を解除。水はスイが蒸発させた。
手元にはホカホカのタコ。クリスがどこからか台とまな板と包丁を取り出して、太い脚をスライス。透ける身は美味しそうだ。塩味が付いているからそのままパクリ。
「美味い!」
クリスもパクリ。「美味しいです!」
横からリクがパクリ。バクバク食べ始めた。おいこら、無くなるだろ!リクの顔を押して遠ざける。
ぶつ切りにして皿に入れるとオリーブオイルと塩コショウを掛けた。薄切りの方はそのまま並べて皿に盛る。
「お兄さん、食べてみてってこら、ロキ、勝手に食べるな!あ、ルキまで。ちょっとセイ!」
カオスだ。お兄さんの為に盛った皿から双子とセイがタコを掻っ攫った。
「美味しい」「なんだ!美味いぞ」「弾力があって美味しい」
クリスが横でどんどん切る。今度こそお兄さんに
「食べて?本当に美味しいよ」
こわごわとお兄さんが口に運ぶ。かみしめてかかっと目を開いた。そして一言
「美味い…」
だから言ったよ。新鮮なタコは美味なんだ。
クリスは愛想よく周りの人たちにも
「ささっ、ぜひ試食を!本当に美味しいですよ」
ちびっこ執事のスマイル0円に負けて周りの人たちも手を出す。恐々口に入れてから驚いた。
「「美味い!」」「弾力があって後から旨味が」
お兄さんは涙目で俺を見ると
「坊主、本当に美味いな」
「だから言ったろ?300リラなんて安い値段で売っちゃダメだよ。最低でも500リラ、いい?」
クリスが追加で200リラを出してお兄さんに渡した。
お兄さんは涙目で俺を見ると
「ほかのも旨いのか?」
当たり前の前田さんだ!
お兄さんにある分全部買うと宣言をしてトーカの言うお金をクリスが払った。
俺はクリスとハマグリを焼いていた。ウニは開いて中身を取り出す。エビは頭を取ってそれは大切に保管。殻を剥いて皿に並べる。
醤油は出せないから基本は塩だ。
ここはゆず塩と青山椒かな。
カニはさっきのボイル玉をロキが操作して茹でる。そばでトーカが頃合いを教えているようだ。
エビの上にウニを載せる。贅沢だ。カニは塩ゆでしたからそのままで。
せっかくなのでまわりのみんなにもふるまう。
セイもルキもロキも迷わずに食べる。クリスやリクたちはもちろんまったく遠慮などしない。
俺はもちろん自分の金で買ったからな!遠慮はいらない。
お兄さんも周りの店の人も驚いていた。
「美味いな、今まで捨ててたんだがな」
もったいない!
「捨てるくらいなら買う!」
そんなこんなでわぁわぁしていたら、声を掛けられた。
「私は漁業ギルドのマーレーと申します」
その後は買い物をしたかったのにギルドに連行された。そして登録。
「料理方法はあなたの登録となったので、そのレシピをギルドとして買い上げます」
凄かった。登録だけで10万リラ。年間50万リラでレシピを買ってくれるって。さらに、販売金額の5%を還元してくれる。
俺はただで金が入ってくるからありがたいがいいのか?
「廃棄するのにも費用がかかっていました。それが捨てるどころか売れるんです!すごい利益です」
ギルドにとっても猟師にとってもいいことづくめなんだって。
しかもセイが商会として登録した。そうすることで、商会の利益になる。実績を積み上げることは必要だから。
俺は加工品についての提案をしようと思ったが、先に買い物がしたかったので夜にでもセイと相談して決めよう。
その後は普通に魚を大量買いした。マグロ、ブリ、鮭、ヒラメ、鰆、サバもあった。
さっきのお兄さんの店でイカもたくさんかったが調理はしなかった。
げそ焼き、げそ揚げ、姿焼き、以下ソーメン、スルメに加工もできる。もちろん寿司にだって出来る。
今日の夜は海鮮祭りだ。
そういやサザエとかないなって思ったらある人に声を掛けられた。
「なぁ坊主。これって食えるのか?」
見せられたのはまさにサザエそしてアワビ。来たな!
「癖はあるけど食えるぞ」
「たくさんあるんだが、買ってもらえないか?」
そのおじさんは足を引き摺っている。
トーカに価値を聞いて気持ち安めに購入した。だって、木箱10箱くらいあったから。
1箱でさざえとアワビが20個ほど入っている。こちらでは廃棄扱いらしいし、1箱2000リラで買い取った。
歩いているとまた違う猟師さんから声がかかる。
「なぁ、坊主。これなんとかならんか?」
手に持ってるのはわかめと昆布。それにいわゆる海藻。
なる、なんとでもなる!
「いらないの?」
「網に引っかかってな…」
「じゃまなら買うよ!」
「捨て値でいいから持ってってくれ!」
案内されたのは砂浜の一角。うず高く盛ってある。クリスがお金を払った。適正価格は分からないけど5000リラほど。だって、ダンプカー10台分くらいあるから。
セイも、ルキとロキもマジックバッグにガンガン詰めた。リクもイナリ、コハクにクリスも手伝って総出で引き取った。
おじさんは満面の笑みでありがとうと言って去っていった。
せっかく海に出たから海の水を水球に空間転移させて熱湯でぐつぐつする。水分を飛ばしたら海塩の出来上がり。
それをみたスイが触手で俺をつんつんする。水球を作ってって言ってるみたいだ。
海水を水球にする。ツンと触手で突くと塩が残った。はい?スイちゃん??
(水分を蒸発させたー)
抱きしめた、小さなスイをぎゅっと抱きしめた。うちの子天才!すりすりすりすり。
「スイ、もっと頼む」
(いいよー!分身の術ー!)
小さなスイよりさらに小さなチビスイがわらわら出てきた。
俺とクリス、ロキとルキで分担して海水を水球に閉じ込める。残った塩は麻袋の内側にクリス作の不織布を入れたものに詰めていく。
さらに少し先にある岩場にみんなで移動して海苔を取った。
これもスイが大活躍。岩に張り付いてべたっとすると海苔だけ吸収して吐き出す。
しかも乾燥させて、といえば乾燥海苔。生海苔と乾燥海苔が手に入る。完璧じゃないか!
俺は岩の表面の海苔だけを転移させて保存する。
ヤバい!俺のテンションが爆上がりだ。




