52.再び出発
馬車はスムーズに進んだ。理由は貴族の馬車だ。なぜだか力強く進む。あの虚な目をしていた馬とは思えない。
(カスミが水とエサを与えたからな!体もきれいになったし、リグが少し回帰した)
成程。馬たちも雨に濡れないから頑張れると。
俺はお盆を風魔法で浮かせて、皿に乗ったカリフォルニアロールと味噌汁を食べている。
もちろん、リクの横を歩きながら。時々、リクの口にも放り込み、イナリやコハクにも食べさせる。
白玉とあんこも普通に食べる。美味いもんな、お寿司。
ルキとロキは魔法をかなり使えるようになって、空気の塊を固定化して皿に空間を自分と固定してその上にお盆を載せている。両手が開くので護衛としても問題ない。
護衛と言えばこの間、離れてる間に魔獣に襲われていた時。なんとベルの馬たちが交戦したらしい。
土魔法を使ったって。トーカによるとスキルが生えていた。俺をジト目で見るトーカ。
なんで?と思ったらどうやら神様由来の水とエサによる効果だとか。ま、いいんじゃね?減らないしと思ったら呆れられた。
貴族の馬に与えた水は俺の魔法だし、飼葉はそこら辺の草を乾かしたものだ。問題ない。
御者のベルとリノにはより食べやすい手毬寿司を渡した。見た目も可愛いからな。
可愛らしい見た目に驚いていたが、パクパク食べていた。意外と腹に溜まるんだ。
その日は予定していた野営場に予定通りに辿り着いた。近くに森があるので雨除けの為に森の入り口で野営となった。
俺は早々にタープを張ってリクたちを休ませる。その後はテントを張り、夕食の準備だ。と言ってもしっかり休めた俺たちは手抜きのステーキとパン、サラダにスープだ。簡単でいい。
食べ終わるとアマランのテントに集合した。もちろん食後のコーヒーだ。
そこにまた当たり前みたいにベルとリノが来た。コーヒーだな。
「カスミ、あの防水布は助かった」
「貸しただけだ」
「分かっているが、それが無ければ進まない可能性もあったんだ」
ここまで遅れた理由は騎士たちの体力と馬が嫌がって進まないことが原因だったらしい。
そらな、エサも水も貰ってただろうが。体はおざなりに拭かれただけ。足元は泥だらけ。さらにしっぽにはフンがこびり付いていた。きれい好きな馬としては屈辱だろう。そもそもが貴族の馬車を引く馬だ。ここまで長距離の余裕がない行程は大変だ。
そこにきてこの雨だ。走りたくないと言う気持ちも分かる。俺たちは全く平気だが、白竜のメンバーですらうんざりしているからな。騎士たちも普段は馬だろうに何故徒歩なんだ?無計画すぎる。
「可哀想だろ?」
その一言に尽きる。何が?もちろん馬が、だ。
騎士たちが徒歩なので、さほど速度は出ないからと考えたのかもしれないが。
当然だが、天候が変わることはある訳でその準備が足りなさ過ぎだ。
しかも、馬たちは買われてからまだ2カ月ほど。ようするに実際に馬車を引き始めてまだ時間が立っていない。
まだ若い馬たちだとか。
だから貴族は正直どうでもいいが、馬がかわいそうだ。
ジョブはテイマーじゃないんだが、なんとなく動物の考えていることは分かる。魔獣みたいに交戦的で、意思疎通できないやつは別だ(白玉は契約したから問題ない)
だから濡れるの嫌、疲れた、走りたくないという気持ちが伝わってきて可哀そうになる。
俺がリクたちの体を拭いているのを見て羨ましそうにしていた馬を放っておけなかった。
人に余裕がなくとも、馬は最優先で世話してやらないと駄目だからな。
ベルは休憩のたびに甲斐甲斐しく世話をしている。荷馬車なのだから余計に馬の負担は大きい。
そしてそれだけ大切な存在だ。分かっているから自分たちが水を飲むより先に馬に与える。
大切にされていると分かっているから馬も期待に応える。そういうことだ。
ベルは俺の言いたいことが分かったようだ。
「こちらから進言して休憩時の世話は俺たちがすることになった。で、悪いんだが白竜と青い稲妻にこちらの馬の世話を頼みたい」
もちろん、拒否する理由はない。行程の遅れは自分たちにも影響するからな。
ベルとリノはごちそうさんと声をかけて帰って行った。
今日は7日目。1日半遅れではあるが、まぁあれだけ雨に降られた割に1日半遅れで済んだのは僥倖か。
フルーツ牛乳バーを取り出してみんなで食べる。
「時間停止…欲しい」
ロキが言う。
「これも空間魔法と時空魔法の合わせ技だから、ロキなら出来んじゃね?」
「むう、難しい」
俺はトーカに声を掛ける。
「トーカ、時空魔法について教えてくれ」
「時を司る魔法は空間と同じで闇魔法の範疇。原理は空間と同じ。繋げるのが空間ではなく時になるだけ」
ロキを見る。
クリスが
「主は私がいることで原理とかすっ飛ばして使えてしまう。原理は置いてけぼりなんです」
それな。トーカが
「カスミがクリスを通して使っている亜空間に行けば体感できる」
「「はぁ?!」
全員でそういう反応になった。俺もだ。
クリスが
「主の亜空間は収納とは別に固有の空間として存在します。正確には亜空間の中に収納しているのですが」
あ、前に亜空間収納に生き物は入れないけどって言ってたあれか!
「亜空間収納はマジックバッグ。カスミの亜空間はそれとは別で入れる」
「正確に言うと主の亜空間はマジッグバッグともつながっていますし、従魔であるリクたちの空間ともつながっています。というか繋げました」
ロキが考える。
「亜空間を収納と考えていませんか?そもそも亜空間とはこちらの空間とは独立した別次元にある空間です。それ自体が固有の空間です」
それからトーカによる亜空間講義が始まった。
曰く、マジッグバッグは作り手が自分の亜空間をバッグに付与したもので、それも固有空間となる。
曰く、空間魔法は別次元に空間を作り出したり、離れた空間同士を繋げるものである。
曰く、亜空間を作るのには魔力が必要で作った亜空間を収納に使うだけであれば維持する魔力は不要である
曰く、亜空間を収納以外に使うために維持したり、人が入るためには相当の魔力が必要である
要するに俺みたいに魔力超回復のような特殊スキルを持っていないと亜空間を作れても維持できない。
「ちなみに主の亜空間にはコヒの木が植わっております。さらに魔鳥を飼育しています」
「「…」」
そうなるよな?
「さらにお宅訪問も可能です」
「だからな、双子がその空間に入ると感覚として使い方が分かるって話だな。ちなみに魔力超回復は魔力を使いまくれば生えるスキルだ」とトーカ。
これにはアマランとウルグも驚いた。
「お、俺たちにも生えるのか?」
「カスミの亜空間に入るとカスミが使う魔力を感じる。それ自体が魔力の器を成長させるから、結構すぐだな」
またトーカが答える。
クリスが俺を見る。
「スキルが生えるまで一旦魔力を使って、リグに回帰して貰えば2倍の速さで使える。やり過ぎは良くないから、俺の亜空間で一定時間過ごして寝るまでに一旦魔力を使い切って一度リグに回帰で満タンにしてもらってから再度使い切って寝ればいい。魔力玉を作ればすぐだろ」
ロキとルキはすでに魔力玉を作れる。しかし、俺と違って小さい。親指の先くらいだ。
俺が作ると5㎝位だからな、小さい。
それでも人工で魔石が作れるのが凄いことらしい。
で、これにアマランとウルグが挑戦している。
「主の亜空間に入ると魔法が使いやすくなります。体感として感じるんですね、諸々」
「早速行くぞ!」
「早く」
アマランとウルグがやる気になってしまった。
「今日はお試しだから短時間な!」
そう言ってクリスに連れて行ってもらう。
そこは緑あふれる森だった。そう、森。その中に木造家屋がある。あ、じいちゃん家だ。
「主の心象風景です。暮らすならこういうところって思ったんでしょうね」
そうかもな、自然豊かで長閑で。近くには川もある。森というか里山だな。
庭では魔長のヒナが寄り添って日向ぼっこだ。
そう、昼間だ。
「ここは主の空間なので、無意識に明るい陽射しを想像したんでしょうね」
とはクリスだ。
アマランとウルグもだが、双子も固まっている。
俺は魔鳥のヒナのそばに座った。その辺りは芝生になっている。
横に俺が座ると見上げてからぴょんぴょん飛んで足の上に載った。軽くて小さい。背中を指で撫でると溶けた。
可愛い。ここには白玉もイナリもコハクも、そしてなぜかリクやカラス、スズメもいる。白玉がお世話するあんこはもちろんだ。
みんな思い思いに遊んでいる。俺の膝に乗ったヒナを見てカラスがくちばしで突く。お世話だ。
目を閉じて恍惚とした顔をするヒナ。見様見真似でスズメもお手伝い。可愛いぞ!
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