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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律


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51.先人の話

 たこ焼きが完売した。俺たちが買いまくるから(俺も追加した)周りも気になって、食べたら美味かった的な感じだ。明らかに腹にはたまらない見た目だからな。


 で、俺は白玉、イナリ、コハクとあんこ(カーバンクルの名前)と共に玄一郎さんの家に向かった。

 カーバンクルはルキ、ロキと俺が1匹ずつ世話することにしたのに、名前は俺が付けてと言われた。

 あんこ、きなこ、あられと名付けた。俺があんこ、ロキがきなこ、ルキがあられだ。

 白玉があんこを抱きしめている。


 玄一郎さんの家の場所は聞いていたが、なんか豪華な一角だ。で、驚いた。でかい屋敷だった。本当に?

 門の前で見上げて固まっていると、門番が

「何かご用か?」

 俺は

「玄一郎さんに訪ねるよう言われた」

 と答えた。入り口で誰何されたらそう答えるよう言われていた。いや、ガチの門番いるだろ!

 俺を上から下まで見て門を開けてくれた。

 案内されて玄関に向かう。


 ドアを叩くと中から開いた。パリッとしたスーツの男性がいた。俺を見ると

「カスミ殿ですな、どうぞ」

 中に案内された。イナリもコハクもいいみたいだ。

 付いて歩いて行くと、大きな扉の前で止まった。ノックすると

「お連れしました」

「入って貰え」

 部屋の中には玄一郎さんと、多分、息子さんがいた。

 その姿に驚いた。だって屋台のオヤジとは見違えるような高価な服を着ていたから。


「カスミ、入りなさい」

 おずおずと入る。お偉いさん?

「ははっ、私は私じゃ!」

 勧められるままに向かいの席に座る。

「改めて、玄一郎・セナルフスだ。元男爵じゃな。隣は息子じゃ。代替わりをしておる」

 成程、だからあんなに売れない屋台を続けられたのか。


 それから息子さんの名前はゲイリーさん。で、玄一郎さんの事情を知っている唯一だと言う。奥様はすでに故人だ。

「カスミ、息子は異世界人についての研究をしている。もちろん、公にじゃなくな」

 それはきっと玄一郎さんの為。


 それから俺と同じように連れて来られ、やはり戦いは無理だと判断し生産職を選んだ。ジョブは「ものづくり」だとか。もしかして「もの」は物じゃないんだな。

 玄一郎さんは嬉しそうに

「その通りだ、ものは物質に限らない」

 やはりか。

「そなたのジョブもまた、とんでも無いぞ」

 鑑定で分かるのか。


 それからはジョブやスキルの話をした。クリスとトーカ、リグを呼ぶと驚いた。特にゲイリーさんが大興奮だった。

 見た目は可愛いからな。


 久しぶりに故郷の話をして、不覚にも涙が出た。心残りはないと思っていたが、やはり帰れないというのは堪える。特に玄一郎さんに逢えたから、余計かもしれない。

 俺がポテチや燻製チーズ、ビールを出したら今度は玄一郎さんが泣いた。美味しい美味しいと食べて飲んで。


 玄一郎さんはお金には困っていない。でも、たこ焼き屋をやっているのは同郷の人を見つける為。見つけて少しでも彼らの力になればと思っているそうだ。

 分かり合える人だけではないが、やはりみんなたこ焼きを食べると涙を流すとと言う。


 売れなくとも、やめないのはその為だそうだ。凄く有り難い事だ。

 その日の夜は俺が和食を振る舞った。そしてやはり玄一郎さんは泣きながら食べた。


 玄一郎さんも持ち込みチェックには気が付いたそうだ。ただ、補充には気が付かなかったと。だから全てを使いきれずにいた。

「もう、良いのだろうな…カスミに会えた事で、吹っ切れたわい」

 そう微笑んでいた。


 しっかりと握手をして、玄一郎さんからソースをたくさん貰って宿に帰った。

 ここで時間を潰せたのは遅れた貴族のお陰だ。少し感謝した。


 腹を空かせたリクに蹴られたりしたが、たこ焼きを進呈して収まった。危ない、腹に入った夕食がリバースするところだった。

 部屋に入ってルキとロキの風呂の世話をして眠った。なぜかまたぎゅうぎゅうで。


 翌朝、やはり完璧なホールドをされている。この状態で眠れる俺も凄いがな。転移で抜け出すとコーヒーを飲む。ふう、朝コーヒー美味いな。

 そうそう、コーヒーとコーヒーミルも進呈した。苗木もだ。玄一郎さんのジョブが生きるだろう。


 ふと物思いに耽りながら飲んでいると、視線を感じた。あんこだ。抱き上げると頭をすりすりしてくる。幻獣って不思議だ。その縦長の瞳孔はまんま猫。猫好きとしては堪らない。


 地域猫のハナを思い出した。時々、エサをあげていた。しなやかな三毛の猫。懐かしさが込み上げる。

 そっとあんこを抱きしめた。なんだろうな、玄一郎さんに会って少しあちらに引きずられてるみたいだ。耐えるようにあんこを抱きしめていたら、背後から抱きしめられた。これは、ロキだな。頭を撫でながら抱きしめられた。今日は抵抗する気力が無い。部屋のドアがノックされるまでそうしていた。


 ロキが俺を離し、ルキが部屋の扉を開ける。アマランだ。

「出発は今日の午後だ」

 それから貴族の馬車がもうすぐここに着くと聞いた。少し休んで出発だ。すでに1日遅れてるからな。

 雨は昨日は止んでいた。捗ったんだろう。今朝は残念ながらまた雨だ。しとしと降っている。


 アマランに了解の旨を伝えて朝食に向かった。出発は午後からだが、昼は食べてる時間が無い。動きながら食べることになる。

 午前は少し作り置きを足そう。


 片手で食べられるということで、カリフォルニアロールだ。単に海苔がないからだ。中身は焼いた鱒と野菜となんちゃってマヨネーズ風、卵と野菜とハムの醤油風味を作った。作ってる間、真横で待機するのはやめてほしい。少し鬱陶しい双子だ。


 仕方ないので、都度味見をさせて遠ざける。逆に疲れた。思い立って違うものも作った。色とりどりだから、これはベルたちにも差し入れだ。



 そして、昼前になったので厩舎に向かう。

 リクとカラス、スズメにカリフォルニアロールを食べさせて、その体を拭く。

 隣のお馬さんたちはブラッシングして体を拭く。水と飼葉も入れてスイに排泄物の処理を頼む。しっぽもきれいに拭いてブラッシング。ふかふかになった。口元を拭って首を叩くと甘えるように。頭を擦り付けて来た。


 少し離れたところに疲れ切った馬がいた。きれいな白馬だ。貴族のか?にしてはなんかボロボロだな。

 白い体が弱っている。

 なんとなく可哀想になった。目が虚なんだ。歩いて行くと静かに佇んだまま反応しない。


 足元の水をスイに蒸発させるとついでに桶をスイにきれいにさせる。そこに魔法で水を注いで、足元に飼葉を敷き、汚れた飼葉はスイが処理した。

 お湯に浸けた布で鼻から頭、背中からお尻までしっかりと拭いていく。汚れすぎだ。足元は浄化した。

 ブラッシングをしっかりしてお腹側までさらさら、しっぽもふかふかにした。

 最後に水分をスイに乾かしてもらい、その首を撫でる。


 俺が出した水と飼葉はガンガン減って行く。また足してやる。その目は虚じゃなくなった。

「がんばれよ!」

 その背中を叩くとリクのそばに向かった。


 首元を掻けとか頭の撫でろとか尻を掻けとか何やらかにやら命令された。厩舎はリクにとって窮屈なんだろう。構ってやっていると俺の頭を包み込んで止まった。ふふふっ可愛い奴だ。もふもふな体にもたれていると

「あっ…」

 と声がした。顔を上げると騎士団の隊長がいた。なんか顔色が悪い。


「もう出発か?」

 俺を見て固まっているので聞けば頷く。ベルとリノもやって来て馬を厩舎から出す。

 馬車に繋げると俺を見て小声で

「貴族の馬に何かしたか?」

 と聞いた。だから疲れてたので水とエサを与えて体を拭いたと言えば笑った。良かったと言って。


 雨だからまたあの防水布を馬たちに掛けてやる。ふと見ると貴族の馬車は雨に濡れていた。

「ベル、防水布は無いか?」

 首を振る。どうしたもんか、濡れるのが嫌だという気配が伝わってくる。


(質を落としてスイに防水布を作らせればいい)

 質を落として、成程。トーカナイスアドバイス!

「スイ、ベルたちと同じような性能の防水布を作って欲しい」

 スイはベルのそばにぴょんと飛ぶと少し飛び跳ねて

(いいよー)


 馬車の陰で布を取り込ませるともごもごして吐き出した。うん、大丈夫だな。これで少しは楽になる。俺は馬用のポンチョに仕立てて、隊長の元に向かう。

「どうした?」

「差し出がましいかもしれないが、濡れるのを嫌がってるからな、これを掛けてもいいか?」

 俺の手にある布を見て理解したのか、頷いた。


 御者が降りて来て俺にしきりに礼を言いながら手早く体にかけた。こっそり水分はスイに飛ばしてもらった。

「完璧じゃ無いが、だいぶ楽になる。休憩のたびにスイに水分を飛ばしてもらうから」

 と言えば御者は拝まんばかりだった。

 こうして1日半遅れで街を出発した。





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