47.散策
なんだか風魔法がスムーズに使える気がする。浮きながらそれなりの速度で走るリクに軽々ついて行けるから。
慣れかな。
双子が見えるくらいの距離を保ちながら進んだ。そうそう、ロキが雨除けの結界を作れるようになった。
それはもう、普通に結界も作れんだろと言ったら抱き付かれた。
「伸び悩んでたから…嬉しい」
だそうだ。俺は転移でロキの腕から抜けた。そしたらまた捕まった。
「今の何?」
で、実演とクリスが噛み砕いた説明をした。空間魔法だからな、使える筈なんだ。ロキなら。賢者だからな。
で、一緒に近い距離の転移をして、やがて出来るようになった。
「少し手助けを…」
クリスが何やら極意?を具現化したのかもな。ま、ロキならいいだろう。
そしたらいつの間にかルキも出来るようになっていた。双子凄え…。
で、今は転移で遊んでる。魔力の使い過ぎに気を付けろよって言ったぞ、俺は。
へたり込んだ双子を前に仁王立ちだ。だから言わんこっちゃ無い。
「そろそろヤバいぞ、アイツら」
トーカの言葉で振り向けば、崩れ落ちた。だから、全く。
広辞苑で魔力枯渇の解消法を調べると、魔力を渡すとあった。直接渡すには粘膜の接触…無理だな。
魔石を渡して取り込ませる。よし、こっちだ!
手のひらに魔力を集めて魔石にした。2人に持たせる。
「ほら、魔力を取り込め」
「…出来ない」
「やり方分からない」
仕方なく魔石ごと手を握ると、クリスも手を添えて魔石から魔力を流し込む。強制的に、だ。
なんか2人とも顔が赤い。熱が出るのか?トーカを見たら
「相性がいい魔力を取り込むのは気持ちいいらしいぞ!性的な行為をしている気分になるとか…な」
相性が悪いと
「激痛」
うっ、どっちも嫌だ。
「魔力を流すのをやめるぞ」
と言えば抵抗された。
「いい、凄く気持ちいいからこのまま…」
耳元でトーカが
「性欲も魔力に変換できるから大丈夫だ」
なるほど、そう言うことか。ならば、このまま続けよう。
魔石に俺自身の魔力を注ぎながらクリスがその魔石から魔力を渡す。
それを続けたところでトーカから
「満タンだ」
それを合図に中止した。
双子はそのまま俺とクリスに抱き付いて、しばらくしてやっと体を起こした。魔力が馴染むまで少し怠いらしい。
「もう平気」
「カスミが魔力をくれる、安心」
いや、安心せずに自重しろ!と思った。思ったのに、懲りなかった。
湖に着く頃にまた枯渇した。どんだけ使ってんだよ!!
「気にせず使えるのがいい」
「少しは気にしろ」
「カスミが補充してくれる」
また魔力を流す羽目になった。
その間、リクたちは楽しそうに走り回っている。雨なのにな!クリスがいい仕事をして、個別に雨除けを含んだ保護結界をした。だから俺が近くにいなくてもやりたい放題だ。
亜空間の中に色々貯まってるのが分かる。しかもちゃんと食料だぞ?ゴブリンとかは入っていない。
リクは湖の中に入った。浮きながら器用に泳ぐ。
「お前の結界があるから」
なるほど、それで沈まないしって事か。
バリバリッ
凄い音がしたと思ったらリクがドヤ顔で岸に戻って来た。どうやら雷魔法を使ったらしい。リクは結界があるから無事だ。
貝やら魚やらが浮き上がる。クリスが手を振ってそれらを岸に集めて収納した。いや、ちびっ子執事が優秀だ。
これが双子に魔力を渡している間の出来事だ。
「「ありがとう…」」
「そろそろ加減しろよ」
といい置いて、俺は湖に入る。やってみたかったんだ、水を一瞬だけ固めて滑るやつ。水上バイクみたいなやつを湖の上でやる。
おぉー気持ちいいぞ、これ。ヒャッハー!
楽しんでいたら何やらクリスから聞いて双子参戦。
「わぁ…」
「楽しい…」
「お前ら魔力の残りを…」
くたっと湖に沈んだ。おい、だから!
慌てて湖に結界ごと沈んで双子を引き上げる。そのまま岸に上がった。
「スイ、乾かしてくれ」
(はーい)
ぴょんとルキの肩に乗り、瞬時に乾いた。俺はまた魔力の受け渡しだ。コイツら懲りないな。
帰りはリクに乗せよう。
遊び疲れたリクは横座りで俺にもたれる。
双子に魔力を渡し終えるとリクの背中を撫でた。相変わらずふかふかだ。
「おやつ食べるか?」
リクが口を開ける。燻製チーズとサラミを開いた口に放り込む。俺も食べながらビールを飲んだ。
おっ、美味いな。魔力渡すのも体力がいるんだ。
「リグ、戻してくれ」
(はい、主)
体力ごと戻した。魔力は回復するが、体力はな。
「コイツらにはリグのことを話してもいいぞ」
トーカが言うなら夜にでも話そう。
双子が起きて、照れ隠しに抱きついて来た。軽く頭を叩くと
「お仕置きだ!帰りはリクに乗れ」
…おかしい、お仕置きの筈なのに、凄く喜んでる。リクも楽しそうだ。あ、もしかして俺に乗って欲しかったのか?最近は歩いてたからな。
(ケッ違うわ!)
ツンツンされた。お尻を撫でる。ぺしっとしっぽで叩かれた…解せぬ。
街に戻ると夕食には少し早い時間だ。
部屋に入るなり、双子はベッドで寝始めた。だろうな、全く。魔力体力の使いすぎだ。
「リグ、回帰しとけ」
「はい」
寝てるから大丈夫だろ。
夕食は宿の個室にみんなで集まった。相変わらずこちらも薄味だ。柚子塩をかけて食べる。美味いな。
みんなの目線がささる。いや、お前ら持ってんだろ。
「柚子塩だ、持ってるだろ?一振りで変わるぞ」
と言えばいそいそと取り出して掛けた。白竜以外な。
そして猛然と食い始めた。
トム(呼び捨てても言われた)が何をかけたのかとベルに聞き、ベルが見せていた。予備は無いぞ!ベルから買え。納品した際に、旅のお供にとたくさん買ってたからな。トムたちはその場で即買って、掛けてから猛然と食べ始めた。
ベルに声を掛けられてまたベルたちの部屋に集合。白竜はいないぞ!
でコーヒーを飲んだ。
「カスミ、食事の分の費用とかこの飲み物も後でちゃんと渡すからな」
「あぁ、この飲み物を作る実が足りなくなりそうだ」
「そうなのか、それは…申し訳ない」
「どこかで採取出来ないか探すさ」
それで解散。明日も6時に出発して待機だ。待ち合わせの街だが、多分相手は着かないだろうから。
翌朝、朝食を食べて6時に出発した。
ベルには途中で抜ける旨を伝えてある。
2時間ほど進んだところでリクに乗って隊列から外れた。しばらく走ると草原に着いた。あるな、いっぱい。よし、コヒ実は全部収穫だ!
「クリス、挿し木もたくさん植えよう!」
「はい、主。だいぶ育ってきました」
亜空間の中に植林したみたいだ。何でも有だな。
1時間ほどで広大な草原に生えるコヒの実を採った。リグに一部回帰させる。乱獲はダメだからな。
よし、帰るぞ。
リクの背中に乗って戻り始めてから、何かに気が付いたリクはスピードを上げた。
俺は風魔法で自分を固定しているから落ちることはない、結界も今は完璧だ。
街道まで戻るとリクが突っ込んでいった。そう、商会の荷馬車が魔獣の群れに襲われていたのだ。
苦戦しているってことはないが、数が多くて迎え撃っていたようだ。
「ケガ人はいない」
だろうな、各人の前に魔獣が山を作っていたから。特にトルフ。やはり元剣聖は伊達じゃない。
治癒師であるエルさんの前以外にはこんもりと。
ルキもロキも頑張ったのが伺える。なんか息子を見るような気分だ、その成長は喜ばしい。
ちなみに背後からリクが最後尾を崩したので、完全に終わった。走り抜けただけなのにリクの後ろには倒れ伏した魔獣が死屍累々だ。
イナリとコハクは範囲魔法でバリバリッとな、凄かったぞ。最後の最後でいいところそ掻っ攫った感じだ。
リクたちだけで30は軽いな。大きなオークの群れだ。ふふっ食料ゲットだぜ。俺はかなりリクに毒されたようだ。
嬉々として亜空間に収納する従魔たち。ベルや白竜のみんなも荷馬車に積んでいる。
一方、青い稲妻は自分のマジックバッグにガンガン放り込んだ。ルキとロキは自分の亜空間(使えるようになった)にも収納する。
俺は目立つからマジックバッグに入る程度に留めた。なんせリクが張り切って収納したからな。




