46.旅は順調に
1人部屋はダメなのか、残念だ。
夕食で落ち合うことにして、部屋に戻った。まだルキとロキは戻っていなくて、イナリとコハクがいたのでソファに座ってもふった。
そのまま少し寝たらしい。
目を覚ますとまた何やら柔らかい。撫で撫で…腕にはイナリとコハクが詰まっている。顔を上げると今度はロキだ。
「重くないか?」
首を振る。
「弟みたい…予行練習」
何のだ?とは聞かなかった。弟が欲しいなら両親に頼めよ!さわりと髪の毛を撫でるロキの手が思いの外心地よかった。
ドカッ
痛いよコハク。
(浮気するな!)
してないだろ?ロキは男だぞ?全くコハクは本物のツンデレさんだ。俺への愛か。耳にキスをする。固まった、ふふっ俺の勝利だ。
ドヤってるとロキが上から俺を見下ろしていた。
「どうした?」
「新しい護衛…ルキの為?」
トルフの事か、ベルから聞いたんだな。
「それもある。俺も教えて欲しいしな」
「カスミは優しい」
そんな事ないぞ?自分の為だ。何故か頭をいーこいーこされた。予行練習だな。
起きあがろうとしたら止められた。
「今はダメ。カスミは小さくて柔らかい…」
コロンと上を向くと、あぁ…なるほど。
「動いちゃダメ」
はいはい、適当に発散すればいいのにな。
「アマランたちと店に行けば?」
ロキは変な顔をして
「子供はそんな事気にしない」
と言われた。まぁ確かに、体は全く無反応だからな。
落ち着いたロキに起こされた。
伸びをしてソファに座る。
「コーヒー飲むか?」
「「飲む」」
立ち上がってコーヒーを入れる。ふわっと漂う香りに癒されるな。
カップを渡して俺も飲む。寝起きはブラックが美味い。その後は買い物について話をして過ごした。
「夕食…」ロキの呟きでそろそろだなと気づき、連れ立って部屋を出る。食堂にはベルたちがすでに座っていた。トルフもいる。
「ルキ、ロキ、トルフだ。剣の達人だぞ」
と言えば
「「よろしく」」
と双子。
「双子で剣士と魔術師、ルキとロキだ」
「トルフと申す。2人とも剣は振れるな?明日から鍛えるかの」
「「お願いする」」
席に着いて夕食を食べる。
宿の食事は堅パンにシチューというシンプルないものだ。味はまぁこちらもシンプル。
店の人が見えなくなったタイミングでコンソメパウダーと塩胡椒を入れた。薄味だったからな。
当然のようにみんなが皿を押し出す。同じようにかけてから
「混ぜて食えよ」
と伝えた。ルキとロキは動かない。くっ仕方ない。スプーンで混ぜてやる。
嬉しそうに皿を引き寄せて食べ始めた。おかしいな、俺は弟の筈なのに、何故面倒を見てるんだ?6才も年上だぞ!
シチューを食べる。うん、しっかり味になった。ちゃっかり皿を押し出していたトルフも食べ始めてからガツガツと。量はしっかりだったからな、充分だ。俺は白玉にイナリとコハクに分けてちょうどいいくらいだ。
みんな良く食べる。
「見違えたな」
「あぁ、不味くはないのだがな。それをカスミは何とも極上の味にしてくれる」
「美味しい」
「アレンジいい」
そりゃあな、せっかくなら美味く食いたい。
食べ終わるとベルが
「部屋に来てくれ」
後からやって来て同じようにアレンジシチューを食べたアマランとウルグも一緒だ。
ベルの部屋に移動するとソファに座る。ベルたちの部屋は俺たちのと違って広い。
「カスミ、コヒが飲みたい」
挽いたのが無くなったので
「用意する」
その場で豆を焙煎(手の上に球を出してなんちゃって焙煎)して、ミルで挽く。香りが漂う。
コーヒー用のピッチャーにフィルターをセットしてお湯を注ぎ、淹れた。
カップに注ぐと牛乳と黒糖パウダーを取り出して置いた。マドラーも用意して配る。
「どうぞ、コヒだ。苦いから苦手なら牛乳や砂糖を足してくれ」
トルフに説明する。
ルキとロキは牛乳を、リノは両方、アマラン、ウルグとベルはブラックだ。
俺?夜は甘くするぞ。
トルフはそのまま口に入れほぉと言うと飲み干した。
「美味いな…」
「おかわりは各自で」
言ったそばから双子が俺にカップを押し出す。だからコイツらは…。仕方なく注いでやる。当然みたいに牛乳を入れて飲む。まぁいいけどな、俺もおかわりだ。
飲みながらベルが
「あちらが遅れている、街に着いていないんだ」
マジかよ、全く遅いな。
「2日後に街に着いたら、待機になるかもしれない」
待ち合わせの場所だな。それも仕方ない。ベルたちは貴族の荷物を運んでいるし、俺たちはそのベルの護衛だ。
その後はトルフの放浪の話を聞いて、解散した。
部屋に戻りながら
「俺はこの後はトルフと泊まった方がいいか?」
部屋はツインだからな、狭いだろう。そう思ってルキとロキに聞くと
「「大丈夫」」
即否定された。
何故かトーカに(鈍感が!)と悪態を吐かれた。
何がだ?弟との触れ合い予行練習がそんなにしたいのか?あ、そうなのか…産まれるんだな弟が…なるほどなるほど。
カスミは盛大な勘違いをしていた。単に面倒見がいいカスミのそばは、双子にとって心地良いだけなのだ。
カスミは中身のおっさんが勝って、つい年下の双子を構ってしまうからなのだが。
こうして部屋に戻ると、ルキとロキが何やら揉め出した。
「どうした?」
「「何でもない!」」
そうか、仲良しだな。首を傾げるとコハクが飛び付いてきた。抱きしめると珍しく甘えている。可愛い…もふったぞ。
双子が俺を見て
「「一緒に寝る」」
「そうか!」
俺は双子が一緒に寝るんだと思っていたから頷いた。
風呂の世話をして上がってフルーツ牛乳を飲むと寝る時間だ。朝が早いからな。
目を覚ます。なんかぎゅうぎゅうだ、それもそうか、ベッドはシングルだ。落ちないためにはこうなる。分かっているが謎だ。
俺たちは本日も快調に進む。のだが、少し寝不足だ。なんせな…ぎゅうぎゅうだったから。
そう、一緒に寝るは俺と双子が一緒に寝る、の意味だった。いや、何故そうなる?シングルベッドだぞ?
動けなくて首が痛い。両側から抱き付かれるとかな。体の上にはイナリとコハク。首元には白玉とスイ。
全方位ぎゅうぎゅうだ。固まるわな、そりゃあ。
自分に治癒魔法をかけるとスッキリした。狭かった筈なのに、双子は何やらご機嫌だ。
これも産まれてくる弟の予行演習か?待望の弟なんだな。
朝からリクとカラスたちと共にお世話をした馬たち。やる気満々だ。
ってか歩くじゃなくて走ってんだろ?荷馬車だよな…?普通に爆走中。荷物は無事か?
(誰のせいだよ!)
トーカ、まんまるな目で見るお馬さんはひたすら可愛いのだぞ。
お昼は行動食、と言ってもお盆を浮かせて食べるサンドイッチアンドスープ、そしてシリアルバーだ。お盆は全体を丸い結界で覆っている。雨でも大丈夫だ!
黙々と食べながら進む。ちなみに今日も雨だ。良く降るもんだ。トルフには昨日の布を貸し出している。濡れるのはみんな嫌だからな。
白竜?もちろん貸してないぞ!でもやっぱり商会の護衛に慣れてるのか、彼らも防水のローブを持ってるし良く歩く。
並足の馬に遅れない程度には。
ルキとロキは体を浮かせて走ってるフリ。俺はもちろんリクに乗ってる。楽ちんだ。
並足で走る馬についていける体力はないぞ!キリッ
本当は風魔法で体を浮かせたら余裕なんだが、あまりに不自然なので止めた。クリスと一緒にリクの背中だ。
リクはぽてぽて走ってるしまったく揺れないのに早い。快適だ、雨除けの結界はいい仕事をする。
そして予定通り、13時過ぎには街に着いた。いや、リクに乗ってた分快適だったぞ?
早々に宿に入る。
ふはーやっぱり疲れてはいるんだろうな、この体は体力が無い。もとの体は別の意味でなかったが、なんせ子供だ。
飽きるし疲れるし。子供は圧倒的に体力がな…薄い体を見れば分かる。
ちょっとベッドに転んだ。リクの大きくてあったかい体に寄りかかりたいな。
腕の中のコハクをもふりながら休んだ。
「リクが呼んでいるぞ」
トーカが言う。部屋の中では姿を現しているトーカ。むんずと掴むと頬ずりした。姿だけはかわいいからな!
ちいさな手で顔を押すがご褒美だ!
手を離すとすごい勢いで遠ざかった。両手で体を抱いて白玉の胸に飛び込んだ。
ほんの少し羨ましいと思った。もさもさの胸毛、いいなぁと。
さて、厩舎に行くか。
「リク何だ?」
(体が鈍る。走らせろ!)
やっぱりか、まぁつまらないよな確かに。
「分った、外にでよう。ルキたちに声を掛けてくる」
部屋に戻るとリクを走らせに外に出ると伝える。外は街の外だ。広辞苑によると近くに大きな森と湖があるみたいだ。
川じゃないから雨が降ってても危険はないだろう。
「行く」「一緒」
と言うことで、双子と共に散策だ。当然だが従魔たちは全員集合だ。
リクを引いて門を出て森に向かう。歩いて30分ほどだが、何か言う前にさっさと走っていったリクたち。
俺も力を見せても大丈夫だからとスイスイすべっていく。ルキとロキは手とつないで追ってくる。どうやら二人の方がまだ安定するようだ。




