42.雨の野営
周りに人がいるところでは出したくないんだよな。
「よお、カスミ。反省会だ!俺たちのテントに来い」
アマランに呼ばれた。
テントに入るとあれ、広い。なんだか嬉しそうだ。
あ、空間魔法か。ロキを見る。
「僕がやった」
なるほどな。
「一昨日だろ?もう出来るんだな。流石だ」
「クリスのおかげ」
そっちかよ、苦笑いだ。
「カスミ、ルキから聞いた。あの防水のローブ、凄いな!全く濡れないし染みない。助かったぞ」
「本当にな、あんな大雨でも平気だったぞ」
「体冷たくならない、いい。やっぱりカミスは凄い」
俺ってかスイだけどな。
「スイのお陰だな」
肩のスイを撫でてみんなから金を貰う。
「安すぎて申し訳ない。これからも全力でフォローするからな」
「頼んだぞ」
ウルグが
「何やら美味いもんがあるとか。いや、その前に風呂だな」
「ルキとロキを入れてくれるなら出すけど?」
「いいぞ!慣れてる」
それは凄い。
ドンッと元シャワーボックスを出した。今はお風呂ボックスだ。いそいそと4人で入って行った。俺は留守番だ。時間潰しに広辞苑を読む。
しばらくして出て来た。
「いや、まさかの野営で美味い飯とか風呂とかな。なんのご褒美だ」
「いい湯だった」
アマランとウルグは初めてだもんな。ルキとロキは何故かドヤ顔だ。
クリスが凍らせた果物を取り出した。アマランとウルグには渡してなかったな。分散するためにも食料も渡しておくか。しかし彼らのバッグは時間停止がない。今後の課題だ。
みんなパクパクと果物を食べる。
「美味い」「いくらでも入る」
「いつも美味しい…」「もぐもぐ」
俺は食料を配布する。
「みんなに食料をある程度渡しておくから」
みんなマジックバッグだ。時間遅延とかはないから、日持ちしそうなものを。
トーカに確認してもらいながら随時渡すことを伝えた。
「また明日」
反省会という名のお風呂だったな。俺はテントに戻るとクリス、イナリ、コハクと風呂に入ってから寝た。
翌朝、目が覚める。首元がもふもふだ。白玉か…伸びをして毛布から出た。快適野外装備のアップグレードは本当にいい。
追加でさらにアップグレードしたらふかふかのマットレスが更にふかふかに。掛け布団も追加された。床だってふかふかしてて、空間魔法ももちろん付与。
低いソファも完備だ。
テントの中は暑くも寒くもなく快適。ポイント残してて良かった。
そうそう、ご飯は任されたが朝ごはんは任意だ。流石に3食はな?気が向いたら作るが、俺はテントの中でサンドイッチとスープを食べた。ホッとするな。
外に出るとリクが
(早く寄越せ)
はいはい。朝は野菜多めで、魚と肉だ。スープも好きだからな、大盛りにする。
リクの体を撫でながら浄化。カラスとスズメもだ。白玉、イナリ、コハクはテントの中できれいにした。
さて、椅子に座ってコーヒーだな。朝はブラックだ。
リクにもコーヒー、他のメンバーにはフルーツジュース。
ふぅ、美味いな。ガヤガヤとあちこちで起き出す気配。
コーヒーを飲み終わると少し周りを散策。リクが走りたそうだからな。
森に入る。まだ雨が降ってるからみんなには雨合羽を着せた。カエルが沢山いる。白玉が角から光線をだしてカエルを仕留める。食えるからいいのか?
イナリとコハクは薬草や花。俺はスズランらしき可憐な花を見つけて採取した。土ごとな。
トーカが山芋を発見した。焼いて食うか。雨だからしっとりしていて、たまにはそんな森の景色もいいな、と思った俺だった。
テントに戻ると青い稲妻のみんなも起きていた。
朝の挨拶をして、テントを畳む。タープはギリギリまで立てとくぞ!
貴族の馬車は用意も遅れがちだ。
予定の6時を大幅にすぎて出発した。雨が続くと今日も野営か?それは嫌だな。
リクたちが安らげる場所を作ってやらないと。
その日は遅れを取り戻すために、お昼の休憩は短くなった。ベルのせいではないが、謝られた。
短い休憩の後、出発。リクたちに食わせるともう時間だ。
ベルとリノ、青い稲妻には行動食のサンドイッチとホットドックを渡した。片手で食えるからな。
歩きながらでも大丈夫だ。スープもカップに入れて、風魔法でトレイを浮かせる。そこに載せれば歩きながらでも大丈夫だ。
アマランとウルグのトレイはルキとロキが浮かせていた。
「歩きながらでもこんな美味いものが食えるんだな」
「雨でも最高だよな」
そらな、天気が悪い時こそ美味いもんが食いたい。あったかいスープは気持ちも上がるからな。
ちなみに今日のスープはトマトベースだ。酸味がいい感じだぞ。
白竜の視線が痛いが知らん。これは俺たちのだ!
休憩を短くしたことと、昨日よりは馬車を早めたことでなんとか街に到着。予定より3時間遅れの20時だ。門限ギリギリで滑り込んだ。
街に入って宿の部屋にやっと落ち着いた。
俺はルキとロキと同室だ。リクやカラスたちは厩舎で。白玉とキツネコンビは部屋だ。
「コイツらと同室で大丈夫か?」
念のために聞いたが、早速膝に抱えているから大丈夫だろう。
「大丈夫」
「問題ない」
ま、問題はそっちじゃないがな。そう、ここはツイン。ベッドは2つで追加は無い。
やっぱり俺が床だろうな。
「カスミは僕と寝る」
ロキだ。何が悲しくてヤロウと寝るんだよ。
「クリスは僕と」
これはルキだ。クリスは具現化を解けば消える。別に人の姿は無くてもいいのだ。
「ルキ殿、喜んで」
ちびっ子執事スマイル炸裂。なんか俺だけ嫌とか言えない雰囲気。仕方ない。どうせ寝るだけだ。
「分かった」
ロキが何故か嬉しそうだ。まぁ俺となると白玉にイナリとコハクがもれなく付いてくるからな。
今夜は宿の飯だ。食堂に向かうとアマランとウルグが食べていた。俺たちも座って食べる。
「雨はしばらく続きそうだな」
「そうなんだ」
別に問題ないがな。
「俺たちは快適そのものだが、あちらがな…」
あちらとは貴族だ。そう、遅いのだ。騎士たちは雨具も付けずに歩く。そりゃ濡れるし不快だ。自然行軍も遅くなる。
ベルとリノがやって来た。
「お疲れ。参った」
やはりペースが遅いからか。
「ノロノロだからな、勘弁してほしい。馬も休めない」
それもあるか。
「流石に彼らに合わせてはキツイと言って来た。それでな、3日後までは街から街への街道だから別行動になった」
良かった。格段にスピードが上がるだろう。
「だから、今日は遅くまで申し訳なかったがゆっくり休んで少し遅めに出発する」
青い稲妻は喜んだ。
食べ終わるとアマランたちの部屋に集合。
「やったな!正直、快適とは言え辟易していたんだ」
「それな、遅すぎると疲れる」
「良かった」
「うんうん」
「出発も少し遅いしな」
気持ち的にもゆとりが出来る。
「カスミ、しゅわしゅわが飲みたい」
ルキだ。
「おう」
流石に酒は飲めないからな。果肉を炭酸で割った飲み物を用意する。クリスは部屋で待機してるから、自分でな。
マドラーも添えて
「混ぜながら飲んでくれ」
みんなに渡す。
テーブルに果肉と炭酸水を置いて
「お替わりは自分でよろしく!」
一口飲んだルキが幸せそうに笑った。
「美味しい…」
「おっ、なんだこれ!美味いな」
「わっ予想と違うが凄えぞ」
「美味しい」
ふふっだよな。炭酸フルーツポンチみたいな飲み物だ。甘さは果物のだから自然でくどくない。
美味いんだよな、これ。
みんなもゴクゴク飲んだ。
ホッとしたところで部屋に戻る。
「カスミ、お風呂…」
ぐっ上目遣いのロキ。なんで年上にねだられるんだよ…はぁ、仕方ない。
お風呂ボックスを出すとみんなで入る。当たり前に白玉とイナリ、コハクが入って来た。
ルキとロキは相変わらず突っ立ってる。座らせてお世話をしてお湯に入れた。2人とも膝にイナリとコハクを載せている。
俺は自分用に作ったジャスミンのシャンプーと石けんで髪と体を洗う。この匂いも甘すぎず、好きだ。
お湯につかるとルキとロキが
「違う匂い…」
「いい香り」
「俺専用だ!」
おい、そんな悲しそうな顔で見るな。にじり寄る双子。いや、勘弁してくれ。
腕を掴まれた。
「いい匂い」
「好きな香り」
ぐっ。きれいな顔が間近だ。
「あ、明日な?」
にっこり笑った。コイツらは、全く。うわ、離せ!抱きつかれた。やめてくれー!
はぁ、疲れた。風呂上がりはコーヒー牛乳だ。ゴクゴク飲む。ぷはぁ。なんで風呂入って疲れるんだよ。
コハクのしっぽにダイブして盛大に蹴られた。痛いから…。
そして同じベッドにロキと入った。人肌か、クリスを除けばいつぶりだろうか…ふとそんな事を考えてスッと眠りに落ちていった。
*****
僕は隣で寝るカスミの体温を感じていた。本当に不思議な子だ。
美味しい食事、快適な魔道具。あの防水布だって凄い品物だ。なのに、それがたったの3万。あり得ない。
お風呂だってそう。それにいい匂いの石けん。いつもの匂いも好きだけど、今日のカスミの匂いはもっと好きだ。その髪の毛に触れるとふわり香りが漂う。
好きな、匂い…。目を閉じるとカスミの体温ともふもふと優しい香りにすぐ眠りに落ちた。




