41.防水布
鳥のモモ焼きだ。美味いだろうな、これ。そう言えば鶏肉ってあんまりないな。どこかで唐揚げするか。
肉汁が垂れて良い匂いが充満する。と言っても結界で匂いはこの付近に留めている。魔獣とか獣を引き寄せるからな。
ルキとロキが正面からガン見だ。両手にナイフとフォークを準備済み。焼いてる横でコンソメスープを作る。具は玉ねぎだけだ。ほんの少しキザミニンニクを入れた。
作ってあった芋サラダも出して、焼けた肉から皿に盛る。
ルキが食べようとしたから
「依頼主からな」
ベルとリノが食べ始めると我先にと肉にかぶりつく面々。
俺は焼きながら摘み、リクたちのお世話もする。何と言ってもリクの成果だからな。
ドンドン焼いてリクに食わせた。
(まぁまぁだな!)
ふふっデレたな。
飲み物は麦茶だ。炭酸は封印した。ウルグ曰く、美味すぎるから。
「この飲み物はスッキリしていてとても美味しい」
「ゴクゴク飲める」
そうだろそうだろ。
食べ終わるとクリスがさっさと片付けた。焼きながら食べてたもんな。
食べ終わるとコーヒーだ。
青い稲妻はカップも差し出して来る。クリスが好みに合わせてコーヒーを作る。
「カスミ、それは?」
「コヒだぞ!広場でも子供が売ってる」
「酸っぱい奴か?」
「いや、これは苦味が強くて酸っぱくない」
「後で金を払うから飲ませてくれないか?」
「いいぞ」
クリスが2人分淹れた。
「そのまま飲んで貰って、苦手なら牛乳でまろやかになります」
クリスが説明する。
一口飲んで
「このままでも美味いが牛乳を入れてくれ」
ベルは牛乳を試した。リノはそのまま飲んでいる。
「これはまた程よい苦味でシャキッとするな」
「あぁ、眠気が飛ぶだろ」
飲み終わって各自ゆったりと過ごす。俺?俺はコハクと触れ合ったさ。もさもさしっぽはけしからんからな。
1時になって出発した。
午後からは雲行きが怪しくなり、14時ごろに雨が降り出した。俺はもちろん、リクたちに雨合羽を着せた。自分にもな。雨除けの結界は目立つからダメだとトーカに言われた。
実は青い稲妻用にも雨合羽を作ってあるんだけど、いるかな?
ルキと目があった。ススッと寄ってくると
「雨に濡れてない…それ?」
俺のポンチョ風雨合羽を指す。
「そうだぞ!濡れたくないからな」
じっと俺を見るルキ。
「お金、払うから…作って」
俺に付き合わせてるから本当はただでもいいんだが、トーカに
「ダメだ!防水布は貴重なんだぞ」
と言われた。
でもスイが簡単に作ったよ?と言えば
「カスミの存在がハイスライムにしたからだ。普通のスライムなら教えるのにも時間がかかるし、完璧な防水布は作れない」
俺の存在ってなんだ?
「最高位の隠れジョブを選んだハイパー賢者」
なんだよそれ!と思ったがもう考えないぞ、俺は。
ってかやっぱり腐れジョブじゃなかったんだな。惰民の可能性もあったんだし、ほんと怖いわ。これらの悪意ある罠を掻い潜ったからこそのハイパー賢者なのかもな。
で、ただはダメだと言われてな。広辞苑でその価値を調べたら絹と同等の価値って出た。絹の価値はと調べると綿とか麻の30倍だって。
買った布は麻と綿の混紡で、1mで1000リラ。結構お高い。布の品質としては中程度だ。それの30倍ってことは1mで3万リラ。超高級品じゃねーか。
ポンチョは約2mほど使う。6万リラ…高すぎるだろ。
「売るなら更に高くなる」
手間賃だな。
「知り合い価格としても、3万リラは譲れない」
トーカが言うならそうだよな。
「予備を作ってあってな。ただ、高いんだ」
ルキは淡々と
「この機能なら当たり前。10万までなら出す」
マジか?
耳元で
「付き合わせたからな、特別に3万でどうだ?」
ルキはその紫の目を開くと
「みんな買う。それは間違いなく10万の価値がある。もっと高くてもいい」
「大丈夫だ。またさっきみたいなことがあったらよろしくだからな!」
「任せて」
金は後でいいと話して4人分渡す。
ルキはサッと羽織ると感動していた。羽織る前にスイが服の水分を飛ばしたからな。
「スイも連れてけ」
頷くとルキはメンバーに配布した。ウルグがサッと羽織って感動している。
「凄え…」
前の馬車まで走ってアマランとロキにも渡した。サッと戻って来ると
「カスミ、これは雨が好きになりそう」
恵みの雨だが、旅ではキツイからな。これがあると楽だぞ!コッソリとリクたちには雨除けの結界もしてるからな。俺?もちろん俺もだ。
雨のせいかより遅くなった貴族こ馬車。途中で土砂降りになり、一時足止めを喰らった。
ベルたちはに馬車の中に避難。白竜は外で警戒。もちろん俺たちもだ。
でもな、全然濡れないから全く問題ない。
なんならみんなで椅子を出して座っていた。椅子は濡れるが体は濡れないからな。
他の護衛や騎士たちはずぶ濡れだ。ご愁傷様。
やっと小降りになったので再開。俺たちは座っていたし、さほど疲れてもいなかった。手は濡れるがスイがすぐに乾かしてくれる。
青い稲妻のブーツはスイが移動しながら撥水加工をしていた。器用だな。
疲れが見える他の人と違い、俺たちはごく普通だ。中断した分、予定の街に着くのが遅れる。
しかし、また激しく降り出した雨に街を諦めて森の入り口で止まった。
初っ端から野営だよ。まぁ俺は大丈夫だけどな。
テントを立てる前にタープを張る。リクたちの雨合羽を脱がせて水を出してからテントを組み立てた。
テントの中にバッグを入れて雨合羽とローブを脱ぐ。
もう真っ暗だ。19時だからな、料理は諦めて作り置きだ。
机と椅子を出し、調理台に七輪とコンロを乗せる。
クリスと手分けして料理を温める。俺は具沢山スープを作った。野菜はカットしてあったから鍋に放り込んで時間操作で促進、鶏ガラと塩胡椒を入れて出来上がり。
クリスはウインナーを焼いている。
いい匂いだ。水も準備して果物をコップに入れる。そこに水を入れて用意。
ウインナーとチョレギ風サラダに具沢山スープ、作り置きのピザを出した。
「出来たぞ!」
って早いな。みんな行儀良く椅子に座って待っていた。コップを配って各自食べ始める。
ウインナーはパリッとして中はジューシー。おぉ、美味いな。肉肉しいのが堪らない。
サラダはシャキッとピザはパリッと。果肉ジュースはマジで美味かった。
みんな無言で食べ進める。
…結構あったぞ?7人だから念の為、本当に念の為20人前くらい用意した。なんで残らない?
「はぁ、やっぱり最高だ」
「なんてもん食わせんだよ!」
「いつも美味しい」
「今日もおいしかった」
これは青い稲妻。食べ慣れてるからな。
「素晴らしい!カスミ、これは最高じゃないか。調味料だけじゃなくて料理も出来るんだな!道中が楽しみだ」
とベル。
「素晴らしい、カスミ。なんて美味しい。パリッした皮の中から柔らかな味わい深い肉。シャキシャキのサラダはいくらでも食べられそうだった。そしてあの薄いパン!いくつもの味が混ざり合って…私は今日という日を忘れない」
…クールな印象のリノが大絶賛だった。
その熱量に少し引いたぞ。
片付けはスイが大活躍。分裂してお皿をペロンとしたらまっさらなお皿がある。
こうして食べ終わるとまったりだ。
「カスミ、コーヒー飲みたい」
ロキはすっかりコーヒー好きだ。
面倒だからとクリスがピッチャーに紅茶とコーヒーを淹れた。
好きに飲んでもらう。俺はもちろんコーヒーだ。夜は甘くして飲む。
リノが牛乳と黒糖を入れて飲んで感動していた。美味いよな、甘いのもたまには。
こうして食べ終わると、ベルが
「カスミ、もしかしなくても…これは防水布か?」
タープを指して聞く。
「そうだぞ!」
「これだけ雨が降ってるのに全く染みてない。凄いな」
「これは村から待たされた奴だな」
そう言えとトーカに言われたから。
うんうんお頷いている。
ベルたちも雨合羽は持っていたが、性能がこれよりは劣るのだろう。しかしな、これはおいそれと売れない。
その日はそれで解散。今夜は白竜が警備をする。テントに入ろうとしたらロキに
「あれ食べたい」
と言われたら。アレってなんだ?
「あれはあれ」
ルキを見る。
「凍らせた果物かな」
そう言ってくれ。熟年夫婦じゃないんだから、アレじゃわからん。




